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通太にビンタの痛みなどない。その場にすぐ立つとへたり込む一波綾乃に近づいた。
「一波さん? 本当に一波さん?」
「あ、当たり前でしょ」
「――つくえさん! つくえさん! つくえさんいないのですか?」
通太は空やら辺りかまわず叫ぶ。横で綾乃は目を丸くしてその様子を見る。
「つくえさん、この辺にいるんでしょ? 僕に声かけて下さい!」
通太は、叫び続ける。
「つくえさぁん!」
通太は最後の絶叫を振り絞ると、その場にひれ伏した。通太は肩をヒクヒクさせている。
綾乃は通太に目を凝らす。
「稀川、泣いてんの?」
「え?」
「泣いてんの?」
「泣いてませんよ」
「完璧泣いてるじゃん」
「泣いてません」
しばらく通太の様子を見守っていた綾乃だったが、
「――――教室に確認しに行く? つくおがいるか?」と口を開いた。
通太は、顔についた汗や涙を拭きとる手を止めた。
「今なんて?」
「つくえかつくおのこと確認しに戻る?」
「なんでつくえさんのことを……」
綾乃は意味深な笑みを浮かべ、バスのベンチに座った。




