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電車に乗らなくては笹山露子に近づけない。一度二人は通太の家に戻り、母親から交通費を強引にもらいうけ家を出た。持ち出した物は他に携帯電話だけ。ほとんど着の身着のまま地元の駅に辿り着いた二人は電車を待った。
「おまえの母親、お、おまえが、いき、なり、帰宅して、びっくりしていたようだが、いいのか?」
つくえがしどろもどろに尋ねた。
通太は、口角を上げ答えた。
「大丈夫だと思います。まさか捜索願なんて出さないだろうし」
時刻表を見ると、次の電車がくるまであと四、五分だ。
朝のラッシュの時間が終わり、電車の来る間隔は長いが、タイミングがよかったようだ。
この駅は終点で、電車は少しの時間停車し、車両点検を終えたあと、出発する。
電車がやってきた。ちらほらと乗客が降りて、続いて二人が乗り込む。
つくえは、ドサっと腰を下ろした。
天井に取り付けられた扇風機が、辺りに風を配る。
車掌が忘れ物、ゴミなどを見つけながら車両を点検していく。でもそんな物ない。
外に出た車掌は、伸びしている。
時間はのどかに過ぎている。
「早く出発……早く」
通太はあまりの周囲の悠長さに少し苛立っていた。
つくえはというとそうでもないらしい。
「せいても仕方ないぞ、稀川通太」
彼は車窓から見える景色を堪能していた。
ちょうどそこから海原が見渡せ、扇風機の風と一緒に海風も窓から入ってくる。
「人間はいいな」
つくえがぽつりと言った。
それをかき消すように発車ベルがなった。
「なんです?」
「なんでもない」




