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【神のクレカで無限通販】三ツ星シェフの異世界無双~極めし武術と現代食材で飯テロしつつ、ポンコツ女神を養います~  作者: 月神世一


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EP 4

原価の悪魔 vs 守銭奴猫ニャングル

「……というわけで、俺はこの村で定食屋を開く。お前らの胃袋を満たすためにも、まずは拠点と情報収集の場が必要だからな」

「定食屋! 賛成ですぅぅ! まかない食べ放題ですね!」

「ダーリンの作るご飯が毎日食べられるなんて……! 私、歌って踊れる看板娘になりますぅ!」

両手に地球の特売ポテトチップスとジュースを持ったリリスとリーザが、アホみたいに飛び跳ねて喜んでいる。

俺は短く息を吐き、ポポロ村の中心部にある『財務・不動産管理所』の扉を押し開けた。

「へえ、いらっしゃい。見かけへん顔やな。ポポロ村で物件探してはるんでっか?」

カウンターの奥で、紫煙を燻らせながら猫耳の男がニヤリと笑った。

派手な着物を着崩し、手には長い煙管きせる。傍らには使い込まれた算盤が置かれている。

ポポロ村の財務担当、ニャングル。噂に聞く、金にがめつい凄腕の商人だ。

「ああ。飲食ができそうな手頃な空き店舗を探してる。場所はメインストリートの端でいい」

俺の言葉を聞いた瞬間、ニャングルの猫耳がピクリと動いた。

彼の瞳孔がスッと細くなる。猫耳族特有の『神眼の動体視力』。相手の微細な筋肉の強張りや発汗から、予算の底と嘘を見抜くスキルだ。

「……なるほどなあ。兄さん、運がええわ! ちょうどメインストリートの入り口に、最高の居抜き物件がありまっせ! 各国の兵士が必ず通る超一等地や! お値段は破格の、金貨500枚(約500万円)!」

ニャングルは、大げさな身振り手振りで一枚の羊皮紙(見取り図)をバンッとカウンターに叩きつけた。

「アカン、これは安すぎる! ワイの血の涙が出る大赤字や! でも兄さんの心意気に免じて――」

「……」

俺は羊皮紙を一瞥し、ポケットから金のオイルライターを取り出してカチンと鳴らした。

Larkに火を点け、もう片方の手でコーヒーキャンディを口に放り込む。

――ガリッ。

奥歯でキャンディを噛み砕く。

それと同時に、俺の脳内で『日商簿記1級』の原価計算回路と、ルチアナのスマホアプリ【神の裏帳簿(原価視認)】がリンクし、完全に起動した。

「……おい、猫。ボッタクリも大概にしろよ」

「なっ……なんやて?」

「『超一等地』? 確かに人通りは多いが、風向きを計算してない。隣の鍛冶屋からの排煙が直撃する立地だ。しかも図面を見る限り、柱の素材はロックバイソンの角じゃない。ただの圧縮した『米麦草マイバクソウ』の偽造建材だな」

「!!」

ニャングルが持っていた煙管を落としそうになる。

俺はタバコの煙を細く吐き出しながら、さらに畳み掛けた。

「築年数は推定30年。異世界の木造建築の法定耐用年数から見ても、減価償却はとうに終わってて資産価値(帳簿価額)は実質ゼロだ。さらに、ここは三大国の緩衝地帯。いつ戦火に巻き込まれるか分からない地政学的な『リスクプレミアム』を考慮すれば――」

俺はカウンターに身を乗り出し、ニャングルの目を真っ直ぐに見据えた。

「この物件の適正な公正価値フェアバリューは、高く見積もっても『金貨10枚』。お前が提示した500枚ってのは、利益率を実に5000%も上乗せした悪徳詐欺だ」

「な……ア、アホな……!?」

ニャングルは額から滝のような冷汗を流し、後ずさった。

彼の『神眼』は、俺の瞳孔の動きや発汗を完璧に読み取っていたはずだ。そして、そこに「1ミリのハッタリもない」ことを悟り、絶望したのだろう。

「ど、どないなっとるんや……ワイの交渉術が、全く通じへん……! こいつ、ただの料理人やない。金の亡者プロや……原価の悪魔や!!」

「で、どうする。金貨10枚で手を打つか? 嫌なら、ゴルド商会のオロチ会長に直接『不正な建材の横流し』についてタレ込んでもいいが」

「わ、わかった! わかったから堪忍してえな! 金貨10枚でええ! 持ってけドロボー!」

ニャングルは半泣きになりながら、猛スピードで契約書にサインをした。

***

数十分後。俺たちはニャングルの案内で、その「物件」の前に立っていた。

「……優也さん。これ、お店っていうか……ただのボロ小屋ですぅ」

「隙間風がすごいですぅ……」

リリスとリーザの言う通りだった。

屋根は半分抜け落ち、厨房設備など何もない。ただの廃屋だ。

ニャングルが背後で「へへっ、安く買いたたかれた腹いせや。いくら天才的な商人でも、ここをまともな店に改装するだけで金貨1000枚は飛ぶで!」と小声でほくそ笑んでいるのが聞こえる。

「……まあ、箱さえあれば十分だ」

俺は気にも留めず、『エンジェルすまーとふぉん』を取り出した。

ルチアナのブラックカード通販アプリを起動し、『業務用厨房機器』のカテゴリをタップする。

「えーと……六口の業務用ガスコンロ、特大コールドテーブル(台下冷蔵庫)、最新式のスチームコンベクションオーブン、ステンレス製の作業台に、強力なシロッコファン(換気扇)と……」

ポンッ、ポンッ、ポンッ!

俺が【購入(一括払い)】をタップするたびに、空間が歪み、神々しい光と共に地球の最新鋭・厨房設備が廃屋の中に次々と具現化していく。

さらに『内装工事・DIYキット(瞬間接着魔法付き)』をポチり、天極流の体捌きで一瞬にして壁や床に清潔なステンレスとタイルを張り巡らせた。

ものの10分。

隙間風の吹く廃屋は、銀座の三ツ星レストランもかくやという、完璧に磨き上げられた『近代的な超・厨房』へと変貌を遂げたのだ。

「ぽとっ」

背後で、ニャングルの口から煙管が落ちる音がした。

「な……なんや、これ……錬金術……いや、魔法……!? 資産価値ゼロのゴミ物件が、一瞬で国宝級の城になっとる……!!」

ニャングルが腰を抜かして震える中、俺は通販で買った真っ白なコックコートとエプロンに袖を通した。

前掛けの紐をキュッと結び、愛刀『白雪』を厨房の定位置に立てかける。

「よし。準備は整った」

俺は厨房の中央に立ち、リリスとリーザを振り返った。

「今日からここが、俺たちの拠点……『三ツ星食堂・白雪』だ。さあ、仕込みを始めるぞ」

「「はいっ! マスター(ダーリン)!!」」

ポポロ村のメインストリートの片隅。

この日、マンルシア大陸の胃袋と経済、そして神々の財布を根底から揺るがす、伝説の定食屋がひっそりと産声を上げた。

(一方その頃、天界セレスティアでは――)

「……ん? なぁにコレ。すまーとふぉんに通知? 『業務用スチコン購入:150万円』『コールドテーブル購入:80万円』……?」

コタツで芋ジャージ姿のルチアナが、缶ビールを片手に画面を二度見し。

「あああああアタシのクレカが不正利用されてるぅぅぅぅぅぅッッ!? 月人君のライブのVIP席のチケット代がぁぁぁ! ヴァ、ヴァルキュリアーッ!!」

平和な天界に、最高神の悲痛な絶叫が響き渡っていた。

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