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【神のクレカで無限通販】三ツ星シェフの異世界無双~極めし武術と現代食材で飯テロしつつ、ポンコツ女神を養います~  作者: 月神世一


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EP 8

トリプル・ザマァ(完全解体)

「ほ、裏帳簿だと……!? なぜ貴様らがそれを持っている!!」

ザック男爵の顔面から、一瞬にして血の気が引いた。

先ほどまで盾にしていた『法』と『権力』の根幹を揺るがす絶対的な証拠。それが、ただの田舎の執事の手の中にある。

「キャルル様が金庫室から美しく回収してくださいました。……いやはや、驚きましたよ。部下の食費を削り、ゴルド商会のペーパーカンパニーを通した架空の魔石投資。そして、ポポロ村から巻き上げた物資の横流し。どれもこれも、帝国軍人として万死に値する『背任横領』の証拠が、ご丁寧に全て記録されているではありませんか」

リバロンは、氷のように冷たい笑顔を浮かべた。

「き、貴様! それをどうする気だ! 貴様らのような平民が告発したところで、もみ消して――」

「もみ消す? お言葉ですが、すでに『提出済み』ですよ」

リバロンの言葉に、ザックが息を呑む。

「私の独自のパイプを使いましてね。この裏帳簿のデータは先ほど、帝都のオルウェル内務卿の直属監査部へと暗号通信でリークいたしました。帝国の法を司るあの御方が、これほど見事な『軍の腐敗の証拠』を見逃すとお思いですか?」

オルウェル。

その名を聞いた瞬間、ザックの全身の脂肪が恐怖で波打った。

徹底した監視社会を築き上げ、不正を働く者を容赦なく粛清する、帝国の『影の支配者』。彼に証拠が渡ったということは、すなわち【社会的な死】を意味する。

「お、おのれ……ッ! ならば金だ! 私の個人資産は莫大だ! 帝都の裁判官を買収し、優秀な弁護士を雇えば、極刑だけは免れるはず……!」

「ゲハハハハッ! アカン、アカンて! 男爵はん、あんさんホンマにオモロイ豚やで!」

ザックの浅ましい命乞いを遮るように、ニャングルが腹を抱えて大爆笑した。

彼は片手に魔導通信石を持ち、もう片手で算盤をチャキチャキと弾きながら、ザックの目の前へと進み出た。

「買収する金? 弁護士を雇う金? ……そんなモン、もうどこにも残ってへんよ?」

「な……何を言っている……!」

「ワイの『神眼』とゴルド商会のネットワーク舐めたらアカン。あんさんの口座情報と暗証魔力、この帳簿からバッチリ割らせてもろたわ」

ニャングルは、魔導通信石の画面をザックに突きつけた。

「あんさんが架空の商会に隠してた裏金、ワイがさっき『空売り』の証拠金として全額突っ込ませてもろた。そんで、ポポロ村の特産品の相場を裏からちょいと操作してな……あんさんの投資ファンド、たった今【完全ショート(大暴落)】したわ」

「は……?」

ザックの口が、間の抜けた形に開いたまま硬直する。

「隠し財産がゼロになっただけやないで? 追加の証拠金が払えんから、あんさん、ゴルド商会に対して天文学的な『借金』を背負った状態や。……ワイらポポロ暗躍部隊からの、ささやかなプレゼントやで」

「あ、あ、あああ……っ!! 嘘だ! 私の金が! 私の富が!!」

財産を失い、莫大な負債を背負い、そして内務省からは極刑(あるいは蟹工船行きの強制労働)の宣告が下る。

法とカネを振りかざして他人の胃袋と命を踏みにじった男爵は、その両方を完全に剥奪されたのだ。

「お見事です、ニャングル殿。これでこの豚は、名誉も、地位も、財産も……命以外の全てを失った【完璧なゴミ】となりました」

リバロンが一礼し、ネクタイを締め直す。

物理の『峰打ち』による無力化。

法の『監査部へのリーク』による社会的抹殺。

経済の『空売りショート』による全財産の喪失。

トリプル・ザマァ。

ここに、悪徳男爵の『三枚おろし』は完全な形でフィレ(切り身)となった。

「い、いやだ……! 助けてくれ! 誰か! 誰か私を助け――」

「往生際が悪いですね、豚さん。その口、縫い付けちゃいましょうか?」

キャルルが冷酷な笑顔でダブルトンファーを構え、ザックの太鼓腹を小突く。

そこへ、庭で暴れていたイグニスとダイヤが、息を弾ませながら大広間へと合流してきた。

「おらァ! 庭の雑魚どもは全員縛り上げてきたぜ!」

「優也! キャルル! 無事だった……って、ええっ!?」

ダイヤは、スクラップになった巨大な魔導ゴーレムと、失禁しながら絶望のどん底で白目を剥いているザック男爵を見て、ポカンと口を開けた。

「……ちょうど下処理が終わったところだ。ダイヤ、お前たちが村から巻き上げられた『メンテ代』と『食材』。……しっかり奪い返しておいたぞ」

俺はLarkに火を点け、部屋の隅に積まれていたポポロ村の物資(野菜や肉、酒樽など)をアゴでしゃくった。

「優也……! みんな……っ!」

ダイヤの目から、大粒の涙が溢れ出した。

法に守られた絶対的な悪。賞金稼ぎである彼女がどれだけ剣を振るっても届かなかった理不尽の壁が、定食屋の親父と村の仲間たちの暗躍によって、たった一夜で木端微塵に粉砕されたのだ。

「……さて。俺たちの仕事はここまでだ。あとは『本職』の連中に引き渡してやろうぜ」

俺が紫煙を吐き出しながらそう言った直後。

「――そこまでだ!! 帝国軍第十二大隊、突入!! 抵抗する者は容赦なく斬り捨てる!!」

大広間の扉を蹴破り、完全武装の帝国兵たちを引き連れて飛び込んできたのは。

数時間前、俺の店でオムライスを食って号泣していた白銀の騎士――クラウス・クラインその人だった。

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