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【神のクレカで無限通販】三ツ星シェフの異世界無双~極めし武術と現代食材で飯テロしつつ、ポンコツ女神を養います~  作者: 月神世一


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EP 7

【成敗】キャンディの音と、愛刀・白雪

「な……貴様、何者だ! なぜ私の屋敷に料理人コックがいる!!」

大広間のバルコニーから夜風と共に現れた優也を見て、ザック男爵が豚のような悲鳴を上げた。

「ただの定食屋の親父だ。ツケの回収に来た」

優也は焦ることもなく、ゆっくりと広間の中央へ歩みを進める。

周囲にいた数人の私兵が魔導ライフルを構えるが、優也から放たれる底知れぬ威圧感に気圧され、誰一人として引き金を引くことができない。

「ヒィッ! お、おのれ……舐めおって! たかが民間人の分際で、この私に逆らえるとでも思っているのか!!」

ザック男爵は震える手で、懐から一つの『魔導スイッチ』を取り出し、狂ったように力任せに押し込んだ。

『警告。防衛用・特級魔導ゴーレム、起動』

無機質な電子音声と共に、大広間の床が観音開きに割れた。

地下からせり上がってきたのは、ミスリルの重装甲で全身を覆い、両腕に巨大な『魔導カノン砲』を搭載した、全高四メートルに及ぶ殺戮兵器だった。

「ゲハハハハッ!! 見ろ! ゴルド商会の裏ルートから、兵士の食費を削ったカネで買い付けた戦略級の兵器だ! これ一機で小国が滅ぼせるんだぞ!」

ザックが狂喜の叫びを上げる。

魔導ゴーレムの両腕の砲口が、まばゆい光を放ち始めた。大広間のみならず、眼下の庭で戦っているイグニスやダイヤごと、全てを消し炭にする気だ。

「さあ! 庭のネズミどもごと、この愚かな料理人をチリ一つ残さず吹き飛ばせェェェ!!」

圧倒的な魔力マナの奔流が、砲口に収束していく。

庭で戦っていたダイヤが上空の異常な魔力溜まりに気づき、顔面を蒼白にさせた。

「嘘でしょ……!? あのクラスの魔砲を撃たれたら、屋敷もろともこの辺り一帯がクレーターになるわ!!」

「クソッ!! 逃げろダイヤ!!」

誰もが絶望を覚えた、その時。

大広間の中央に立つ優也は、逃げるどころか、静かにポケットへ手を伸ばした。

取り出したのは、一粒のコーヒーキャンディ。

それを無造作に口へ放り込む。

――ガリッ。

奥歯で、硬いキャンディを噛み砕く。

カフェインの苦味が脳髄を駆け巡り、三ツ星シェフのスイッチが『処刑人』へと切り替わった。

「客にゴミを食わせ、美味い食材を独占した挙句に腐らせる……。料理人に対する最大の冒涜だ」

優也は背中に帯びていた愛刀『白雪』の鯉口を、親指で静かに切った。

チャキッ、と澄んだ金属音が広間に響く。

エッジを立てる価値もねえ。お前みたいな豚は、峰打ち(下処理)で十分だ」

刀身を反転させ、刃のついていない『みね』を正面に構える。

魔導ゴーレムの砲口から、極大の閃光が放たれようとした、まさにその刹那。

「【天極流・抜刀術】――」

優也の姿が、ブレた。

いや、消えたように見えた。

「――【絶・峰打ち】」

ドッゴォォォォォォォォォォォォォォォォォンッ!!!!

斬撃ではない。

極限まで圧縮された闘気と、神速の踏み込みから生み出された『純粋な衝撃波』。

白雪の峰から放たれた目に見えない質量の壁が、発射寸前だった魔導ゴーレムの砲塔を、装甲ごと文字通り『ひしゃげ』させた。

「……は?」

ザックの口から、間抜けな声が漏れる。

衝撃波は止まらない。

魔導ゴーレムを紙クズのようにスクラップに変えた後、暴風となって大広間を吹き荒れ、ザックを取り囲んでいた私兵たち全員を、一滴の血も流させずに壁の果てまで吹き飛ばして気絶させた。

さらに、その余波は分厚い壁を透過し、廊下の奥でキャルルと対峙していた『鬼人族オーガ・キメラ』の背中を強かに打ち据え、巨体をそのままドサリと昏倒させた。

「……あら?」

キャルルが不思議そうに目をパチクリとさせる。

「優也さんの『愛の衝撃』が、ここまで届きました♡ さすが私のダーリンです♡」

大広間は、完全な静寂に包まれていた。

先ほどまで威容を誇っていた魔導ゴーレムは、原型を留めない金属の塊へと成り果て、火花を散らして沈黙している。

「あ……あぁ……?」

ザック男爵は、その場にへたり込み、股間を温かい液体で濡らしながらガタガタと震えていた。

彼を守る者は、もう誰もいない。

「お、おのれ……貴様、帝国軍人に、しかも男爵であるこの私に手を上げて、ただで済むと……!」

「……ああ、そうだな」

優也は『白雪』をカチンと鞘に納め、怯える豚を見下ろした。

「俺はただの定食屋の親父だ。お前の身柄や財産をどうこうする『法的な権限』は持っちゃいねえ」

「ひ、ヒハハハッ! そうだ! 貴様はただの平民! 私を殺せば極刑だぞ! 私は貴族だ! 法は私を守る!!」

命の危機が去ったと勘違いし、ザックが醜悪な笑い声を上げる。

だが。

「――ええ、その通りです男爵閣下。ですが、その『法』があなたを見放したとしたら、どうでしょう?」

「……なっ!?」

広間の扉から、優雅な足音と共に現れたのは、ポポロ村の宰相兼執事、リバロンだった。

彼の背後には、金庫室から悠々と歩いてきたキャルルと、魔導通信石を片手にニヤニヤと笑うニャングルの姿があった。

「物・理・的・な下処理は終わったようですね、優也様。お見事です」

リバロンは一礼すると、震えるザックの前に、一枚の書類――金庫室から回収した『裏帳簿』の写し――を突きつけた。

「さあ、豚肉メインディッシュの調理はここからです。……社会と経済の【完全解体】を始めましょうか」

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