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【神のクレカで無限通販】三ツ星シェフの異世界無双~極めし武術と現代食材で飯テロしつつ、ポンコツ女神を養います~  作者: 月神世一


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第三章 『飽食の悪徳男爵と、白銀の刃(ミネウチ)』

神の財布の終焉と、飢える白銀の騎士

『三ツ星食堂・白雪』の仕込み前の静かな厨房。

俺はコーヒーを飲みながら、『エンジェルすまーとふぉん』の画面を操作していた。

「そろそろ、地球のスパイスとコーヒー豆のストックを補充しておくか……」

ルチアナの口座直結の通販アプリを開き、カートにいつもの最高級品を放り込む。

そして【購入(一括払い)】のボタンをタップした。

――ピロッ。

『ERROR:このクレジットカードは、管理者ヴァルキュリアの権限により完全凍結されています。ご利用残高を確認の上、労働にて返済を行ってください』

画面いっぱいに表示された、無機質な赤文字の警告文。

俺は静かにスマホをポケットにしまった。

「……まあ、そうなるわな」

5000万円分の純金インゴットを買い叩いた時点で、いつかこの日が来ることは予想していた。

天界のポンコツ女神ルチアナも、ついに年貢の納め時というわけだ。今頃はヘルメットを被ってツルハシでも振るっていることだろう。

「あわわ……! マ、マスター! もしかして、私たち倒産ですかぁ!?」

ホールを掃除していたリリスが、俺の呟きを聞きつけて涙目で飛んできた。

「倒産はしねえよ。ただ、今日から『神のチート』に頼った原価無視の仕入れができなくなっただけだ。だが案ずるな。ニャングルから引き出した『競馬の上がり(金貨5000枚)』と、日々の売上で、店のキャッシュフローは完全に黒字化してる」

俺はLarkに火を点け、紫煙を吐き出した。

これまでは地球の物資でチートをしてきたが、ここから先は本当の意味での『飲食店経営』だ。

ポポロ村の極上食材と、俺の腕。そしてこの店が稼ぎ出した利益リアルマネーだけで、この狂った異世界の胃袋を回し切る。……三ツ星シェフとしては、むしろここからが腕の鳴る本番というやつだ。

その時。

カラン、と。店の引き戸が開く音がした。

「いらっしゃいませー……って、わぁっ!?」

出迎えたリリスが、素っ頓狂な声を上げる。

俺が厨房から視線を向けると、そこには、この泥臭い国境の村には全く似つかわしくない、一人の青年が立っていた。

眩いほどに磨き上げられた白銀の甲冑ホーリー・メイル

腰には装飾の施された美しいミスリルの剣。

銀糸のような髪に、高潔さを宿した蒼い瞳。まさに一枚の絵画から抜け出してきたような、完璧な『白銀の騎士』だ。

だが。

「……すまない。まだ、営業しているだろうか……?」

その美青年は、まるで死にかけの亡者のように顔面を蒼白にさせ、腹を抱えながらカウンター席へと倒れ込むように座った。

息も絶え絶えで、目の下には濃い隈ができている。

「おい、大丈夫か。怪我でもしてるのか?」

俺が歩み寄り、TCCC(戦術的戦闘救護)の知識で外傷の有無を確認する。

出血はない。甲冑にも目立った損傷はない。だが、冷や汗が酷く、胃のあたりを強く押さえている。

「い、いや……怪我ではないのだ……。ただ……その……」

青年――ルナミス帝国・クライン公爵家当主にして、辺境軍の指揮官であるクラウス・クラインは、ギリッと歯を食いしばり、苦痛に顔を歪めた。

「……兵士たちが、あの『MRE型ゲロオムレツ』という産業廃棄物を食わされているのだ。指揮官たる私だけが、安全な本陣で温かい飯を食うわけにはいかない……。故に、ここ一ヶ月……兵たちと共に、あれを食い続けた、結果……」

(……ゲロオムレツの連食、だと?)

俺は思わず眉をひそめた。

以前、イグニスやダイヤから聞いたことがある。ルチアナの靴の裏の味がするとか、野良犬が土をかけて埋めるとか言われている、ゴルド商会謹製のあの最悪のレーションだ。

あんな劇物を一ヶ月も食い続ければ、鉄の胃袋を持つ魔獣でも胃潰瘍になる。

「ノブリス・オブリージュ(貴族の義務)……それは私の誇りだ。だが……さすがに、限界でな……。視界が、黄色いオムレツの色に点滅して……」

クラウスはカウンターに突っ伏した。

真面目すぎる。あまりにも愚直で、高潔で、不器用な男だ。

帝国の腐った兵站システムを恨むでもなく、ただ己の義務として毒を飲み込み続けたその生き様。

「……バカ野郎が。上に立つ者が倒れたら、下の兵士はもっと絶望するだろうが」

俺は短く息を吐き、クラウスの前に、常温の水を一杯置いた。

冷たい水は、荒れ果てた胃をさらに刺激するからだ。

「え……?」

クラウスが、不思議そうに顔を上げる。

「アンタみたいな『本物のバカ(騎士)』は、嫌いじゃねえよ。……待ってろ。今すぐ、アンタのそのボロボロの胃の腑に、真っ当な『本物のメシ』を叩き込んでやる」

俺は厨房に戻り、エプロンの紐を力強く結び直した。

一ヶ月間、粗悪なレーションで傷つき、栄養失調状態にある胃腸。

そこにステーキや角煮のような重い油は厳禁だ。

必要なのは、極めて消化が良く、温かく、そして身体の細胞一つ一つに染み渡るような『優しい旨味』の結晶。

(……ゲロオムレツで受けたトラウマは、同じ【卵料理】で上書きして、完全に浄化してやる)

俺は冷蔵庫から、ポポロ村で平飼いされている極上の卵を三個取り出した。

そして、米麦草の冷や飯、特選のフォンドボー、甘みの強い『太陽芋』。

「……三ツ星の【オムライス】だ。アンタのその高潔な魂ごと、優しく包み込んでやるよ」

コンロの火を点ける。

俺の手から、絶望した騎士を救うための、最高の一皿の調理が始まろうとしていた。

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