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【神のクレカで無限通販】三ツ星シェフの異世界無双~極めし武術と現代食材で飯テロしつつ、ポンコツ女神を養います~  作者: 月神世一


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EP 10

騒がしい日常の幕開け(と、天界の悲鳴)

「へい、角煮丼定食と豚汁、お待ち」

「うおおおっ! 待ってました親父ィ!」

「この一杯のために、国境警備のキツイ任務を耐え抜いてきたんだ……! いただきます!」

ポポロ村のメインストリート。

『三ツ星食堂・白雪』がオープンして数日。かつてボロ小屋だったこの場所は、今や三大国の駐留兵や傭兵たちにとって、絶対に失ってはならない『聖地』と化していた。

連日連夜の大盛況。

客たちは美味いメシに涙を流し、その対価として、国境の軍備の配置から村の些細な揉め事まで、ありとあらゆる情報を置いていく。

市井に潜伏し、民の生の声を集める。俺の目論見は、完璧に機能し始めていた。

「マスター! 3番テーブルさん、角煮丼おかわり入りました!」

「ダーリン! こっちのお客さんにお冷やお願いしまーす!」

清楚な制服に身を包んだリリスとリーザが、額に汗を浮かべてホールを駆け回る。

まかない(と安全な寝床)のために働く彼女たちの愛想の良さも相まって、店の売上はうなぎ登りだ。

俺は厨房で豚汁を温め直しながら、脳内の『簿記1級』の回路で今日の利益をざっと弾き出した。

(……売上高に対して、売上原価が実質ゼロ。水道光熱費も魔石で代用。粗利率ほぼ100%という、狂気のキャッシュフローだ。ニャングルの野郎が帳簿を見たら、泡を吹いて卒倒するだろうな)

ふと、カウンターの特等席(一番奥の静かな席)に視線を向ける。

「…………(ジィィィィィ)」

そこには、村長であるキャルルが特大の人参ジュースを両手で持ちながら、ウサギの耳を立てて俺の一挙手一投足をガン見していた。

あの日以来、彼女は毎日店に入り浸り、この『カウンター奥の席』を自らの絶対領域テリトリーとして占拠している。

他の客(特に女性の冒険者)が俺に親しげに話しかけようものなら、即座に音のない『月影流の殺気』を放ち、相手を物理的に震え上がらせて追い払うのだ。

「……おい、村長。仕事はいいのか」

俺が呆れて声をかけると、キャルルはパッと花が咲いたような笑顔になった。

「優也さんの顔を見るのが、私の村長としての最大の責務ですから♡ あ、優也さん。おでこに汗かいてますよ。拭いてあげます」

キャルルは立ち上がり、身を乗り出して俺の額を人参柄のハンカチで優しく拭う。

その際、背後にいるリリスとリーザに向けて『チラッ』と冷酷な視線を投げ、「この人は私のものだから」というマウントを取るのも忘れない。

「ヒッ……! ダーリン、私、裏で皿洗いしてきますぅ!」

「わ、私もゴミ捨て行ってきます~!」

蜘蛛の子を散らすように逃げていく二人。

俺は短く息を吐き、ポケットからLarkを取り出して金のライターで火を点けた。

美味いメシと、最強の武術。そして神のブラックカード。

俺の異世界での『定食屋(将軍)ライフ』は、かくも騒がしく、そして極めて順調に滑り出したのだった。

***

――一方その頃。

マンルシア大陸のはるか上空、神気を纏う浮遊大陸『天界セレスティア』。

その最奥にある神聖なる創造神の間……ではなく、薄暗い四畳半のコタツ部屋。

「あー、マジだりぃ。なんでアタシが神なんてやってんのかしら。早く月人君の配信始まんないかなー」

桃色の芋ジャージに身を包んだ創造神・ルチアナ(永遠の17歳)は、コタツに下半身を突っ込み、左手に冷えた缶ビール、右手にピアニッシモ・メンソール(タバコ)を持っていた。

プシュッ。

ゴクゴク、ぷはぁーっ。

「やっぱ風呂上がりのルービーは最高ね。あ、そういやリリスの奴、ちゃんと下界で就職できたかしら? まぁ、あの子に予備の『すまーとふぉん』渡しておいたし、死にはしないっしょ」

ルチアナが鼻歌交じりにビールの二缶目を開けようとした、その時だった。

『ピロリン♪』

コタツの上に置いてあった彼女のメインスマホ(神造器)が、軽快な通知音を鳴らした。

「ん? なぁにコレ。クレジットカードの利用明細……?」

ルチアナは面倒くさそうにスマホを手に取り、画面をスクロールさせた。

その直後。

彼女の美しい顔から、スーッと血の気が引いていく。

【ご利用明細(Earth Net Store)】

・業務用シロッコファン内蔵・レンジフード…… ¥450,000

・六口・業務用ガスコンロ…… ¥380,000

・最新式スチームコンベクションオーブン…… ¥1,500,000

・業務用コールドテーブル(台下冷蔵庫)…… ¥800,000

・A5ランク黒毛和牛ブロック30kg…… ¥600,000

・最高級イタリア産・白トリュフオイル…… ¥150,000

――――――――――――――――――――――――

【今回のご請求予定額】 ¥3,880,000

「…………は?」

ルチアナは、缶ビールを取り落とした。

床にこぼれるビールの泡。震える手で、さらに画面を下にスクロールする。

明細はまだ続いていた。『最高級調味料セット』『DIY内装キット』『防刃エプロン』……。

「え……? まさか……リリスに退職金代わりに持たせた『予備のすまーとふぉん』……!?」

ルチアナは思い出した。

見習いのリリスに押し付けたあの予備端末。自分と同じ権限(管理者モード)にしたままで、あろうことか『クレジットカードの利用限度額の設定』を解除したままだったことに。

「ああああアタシのクレカが不正利用されてるぅぅぅぅぅぅッッ!?」

天界に、創造神の悲痛な絶叫が響き渡った。

「月人君のライブのVIP席代が! 遠征組のホテル代が! 秋の新作コスメ代がぁぁぁ!! 誰よ!? どこのどいつがアタシの金で業務用オーブンなんて買ってるのよぉぉぉ!!」

神の権限でキャンセルしようにも、すでに『納品済み(消費済み)』のステータスになっている。

借金、という概念が、創造神の脳裏をよぎった。

「ヴァルキュリア!! ヴァルキュリアーッ!! 助けてぇぇ、破産するぅぅぅ!!」

「ルチアナ様! またソシャゲのガチャで天井まで回したんですか!? 今日という今日は五時間の正座説教ですよ!!」

「違うのよォォォ! アタシじゃないのよォォォ!!」

コタツ部屋に、天界の実質ナンバーツーであるヴァルキュリアが怒り狂いながら突入してくる。

最高神の威厳など微塵もない、大パニックの怒号と泣き声。

……神々の財布ブラックカードを握った三ツ星シェフが、天界の経済を物理的に崩壊させるまで、あとわずか。

しがない定食屋の親父による、美味しい異世界無双(と神様への請求書)の伝説は、今ここに幕を開けたのだった。

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