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ひきこもりの天才プログラマーは異世界で魔術言語をハックする  作者: 光命
Class.002 { lostWord = adventure.Explore(kai,cyril); }

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function.037(“試行錯誤”);

あれからカイたちは数回ズーラの遺跡に潜っていた。

スカーレットはお店が忙しいこともあり、来たり来なかったりだったが、広大なズーラの遺跡を日ごとに目的地を変えながらあちこち探索していた。

今日までロストワードの古書は見つけられていない。

だが、新しく手に入れた無属性魔術のテストやロストワードの改良は順調に進んでいた。


「こいつは、今回初めてだったね。

 まずは弱点を見てもらえるかな」


スカーレットは奥から現れたドロドロした液体に覆われた魔物を指さし、カイに指示する。


「はい。

 ――『サーチ』!」


カイが手を前に差し出し魔法陣を向けると、カイの目の前に魔物の情報が表示される。


「ヘドロスライムです。

 ランクはD。

 弱点は……火属性。

 物理攻撃が効くのは魔物の中心……核のようなもののみです。

 他への攻撃はあまりききません」


改良を重ねた『サーチ』は、魔物の種類やランクだけでなく、弱点などの文字情報まで読み取れるようになっていた。


「へぇ……

 ランクなんかはギルドからもらう情報と同じだね」


スカーレットがその正確さに驚いていると、ライコスがここぞとばかりに横から口を挟む。


「感心している場合かよ。

 物理があまり効かないんじゃ、俺たちには出番はなさそうだぜ。

 さっさと次の指示、出しやがれ、このばばぁ!」


「おっと、そうだね。

 嬢ちゃん、火の魔術使えるかい?

 それと……ライコス、あとで覚えておけよ」


スカーレットはライコスを凄まじい眼力で睨みつつ、シリルに指示を出した。


「はい!

 大丈夫です!」


元気に返事をしたシリルが手を掲げ、魔法陣を展開する。


「――『クアッド・フレア』」


上空に赤い4つの魔法陣から、拳ほどの火の弾が現れると、ヘドロスライムへ向かって急降下する。

着弾した炎は一気に燃え上がり、あっという間に魔物を焼き尽くして燃えカスに変えてしまった。


「カイ、どう?

 魔力の加減、バッチリ?」


シリルはだいぶ魔力の調整が出来るようになっていたが、たまにうまくいかずに、カイから気をつけるように言われていた。

そのこともあってか、最近は魔術を使うたびに確認している。


「うん、大丈夫だよ。

 周りにも大きな被害がなさそうだし。

 それに、だいぶ上手くなってきたんだから、毎回僕に確認しなくても……」


カイが微笑みながら伝えると、シリルは少し照れくさそうに笑った。


「いいの!

 私が確認したいんだから!

 それに……カイに褒められたいし……」


その言葉にカイが少し照れていると、スカーレットが燃えカスを見つめながら呟く。


「それにしても、そのさぁちとかいう魔術、正確で詳細な情報……

 大昔は坊ちゃんが使うような鑑定の魔術もあったのかな。

 それをまとめたのがギルドにあって、冒険者に提供しているのかもな」


「この俺たちには記号や図形にしか見えない本も遺跡から出ているし、

 そうなんじゃないか?」


魔物が燃えて灰になった場所をマジマジと見ながらライコスはそう答えた。


「それをカイだけが読めるのも、変ですよねぇ」


シリルが首を傾げると、カイは苦笑いを浮かべた。


「僕も不思議ではありますけど……

 こうやってロストワードに触れられるだけで嬉しいですから。

 それに、古書を探していけばいつか真相も分かってくると思います」


前世のプログラミング知識を活用して新たな魔術を創造する楽しさに夢中なカイにとって、歴史の真実はそこまで重要ではなかった。


「まぁ、そんなことは直ぐにわかることじゃないし、やれることをやるだけだね」


スカーレットがそう言って奥へと歩き出すと、カイとシリル、そして後方を固めるライコスも後に続いた。


またしばらく探索していると、天井を這いつくばっている大ムカデのような魔物が数体現れた。


「こいつは物理攻撃が効くよ。

 節と節の間が弱点だ、そこを狙いな」


ドスンドスンと走りながら斧を構えて突進するスカーレット。

それにライコスが続いてく。


「――『サーチ』!」


カイはスカーレットが話した以外の弱点が無いか探りを入れた。


「……

 シリル、この魔物は風属性が弱点」


サーチの情報を確認してシリルに伝える。

シリルはその声を聞くと


「うん、わかった」


そう返事をすると手のひらを前に差し出した。


「――『デュアル・ハリケーン』!」


手の前に緑色に染まった魔法陣が現れると、荒れ狂う風が噴出してくる。

渦を巻いた暴風は大きなムカデを取り囲むと、節と節の間を切り裂いていく。

その突風は魔物を倒した後も勢いを失わず、凄まじい勢いで通路の奥へと吹き抜けていった。


「すげぇ風だなぁ……

 こんな威力の風魔術、見たことないぞ。

 エスメですらここまでじゃなかったはずだぞ」


ライコスは吹き飛ばされないよう必死に壁にしがみつく。

スカーレットやカイも姿勢を低くして、その突風を凌いでいた。


そこからしばらく歩くと、今日の目的の場所の近くの小部屋に差し掛かった。

そこには蟻のような魔物がうじゃうじゃいた。


「きゃーっ、む……虫ーっ!」


シリルが悲鳴をあげている。


「さっきのムカデは平気だったのにか?

 あっちの方が気持ち悪いんじゃないのか?」


ライコスはこっちにだけ反応するシリルを不思議に思っている。


「だって……

 量が違いますよ、量が。

 こういっぱい虫がいると……」


シリルは体を震わせて気持ち悪がっている。


「ここでシリルに任せると、魔術が暴走しそうだね。

 カイ、やれるかい?」


スカーレットはシリルの様子を見て任せられないと感じたのか、笑いながらカイに倒せそうか確認した。


「そうですね……

 ちょうど試したい魔術もあるので、やってみます」


カイはそう言うとその部屋の入口に立ち、魔術を使い始めた。


「――『ダストエクスプロージョン』!」


そう唱えたカイの目の前に奇妙な模様の魔法陣が現れる。

魔法陣の右から黄土色、左から緑色の光が模様に沿って走り始める。

それと同時に細かい粒子が風に舞い始めた。


「なんだこりゃ?」


様子を覗いているライコスは奇妙な状況に思わず言葉が漏れる。

カイは気にせずにそのまま魔力を魔法陣に流している。

すると赤色の光が魔法陣の下から現れ、黄土色と緑の光を包み込んでいく。


――ボンッ!


小いさな爆発が起きると、部屋の中に煙が充満する。


「ゴホッ、ゴホッ……」


煙が部屋の外まで流れ込んできてしまい、カイが咳き込む。

他の三人もゴホゴホしながら、口を抑える。


「なんなんだい、これは……」


煙を払いながらスカーレットは周りの様子を見る。

部屋から出てきた煤が通路にまで広がっていた。


「あれ?

 もっと綺麗に爆発するはずだったのに……

 何が足りなかったのかな……」


カイは煙で充満する部屋を見ながら、何が原因なのか考えていた。


「これであの虫が出てこないってことは、全部倒せたんじゃないの?」


シリルは煙を飛ばすために風魔術で部屋一面に風を送っていた。

煙が晴れると、そこには微妙に燃え残りがあるものの、無数の魔物の死骸が所狭しと転がっていた。


「きゃっ!」


魔物の死骸を見たシリルは悲鳴をあげて、カイの後ろに隠れた。


「予定だと、すべて灰になるぐらいの火力が出るはずだったのに……

 死骸が残っているということは……」


ブツブツと独り言を言っているカイに


「また、後で考えな。

 ここは片付いたんだし、先行くよ」


スカーレットはカイの背中を叩くと、魔物の死骸を踏みつぶしながら部屋を突っ切っていった。

シリルは恐る恐る部屋に入ると、スカーレットの足跡の上をそろりそろりとついていったのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


改良した『サーチ』で敵の弱点を見抜き、着々と探索を進めるカイたち。

「カイに褒められたいし……」と照れるシリルがとにかく可愛らしかったですね!


一方で、ラストにカイが試した新魔術『ダストエクスプロージョン』!

部屋一面を真っ黒な煤(すす)で覆い尽くしてしまいましたが……この痕跡が後々どんな波紋を呼ぶことになるのか(笑)。


シリルの可愛さにほっこりした方や、カイの「やらかし」の予感にワクワクした方は、ぜひ評価やブックマーク登録で応援していただけると大変励みになります!


次回の更新もどうぞお楽しみに!

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