function.036(“相手を知る魔術”);
翌日――
今日もカイたちはズーラの遺跡へと向かっていた。
そこにはスカーレットの姿がない。
その理由は、昨晩のことだった。
「ライコス、明日は自分がいけないから、きちんとこの二人の面倒見なよ」
スカーレットは明日の探索についていけないことを切り出した。
「へいへい」
気だるそうに応えるライコス。
「えっ……
スカーレットさん、明日いけないんですか?
またいろいろ話を聞きたかったのに……」
残念そうにするシリルに、スカーレットが
「わるいな、嬢ちゃん。
明日は店のヘルプも少ないからな。
またそのあたり調整したら、一緒に行くから」
頭をポンと叩き、また同行することを約束する。
「残念です」
シュンとするシリル。
「ふんっ。
俺はせいせいするね。
もう来なくてもいいよ。
俺一人で出来るから」
ライコスは酒を煽りながら清々しい笑顔になっている。
「お前、この二人に何かあったら承知しないからね!」
スカーレットは眉間にしわを寄せて、ライコスの背中をバシッと叩く。
「いたっ……
俺がそんなヘマする訳ないだろ」
怪訝そうな顔をしたライコスはスカーレットを見て文句を言った。
「スカーレットさん、そんな心配しなくても大丈夫ですよ」
シリルはスカーレットの心配を気にしてか、ライコスのフォローをしていた。
「まぁ、なんにしても気をつけて行っといで」
そんなこともあり、今日はカイ、シリル、ライコスの三人で探索に出かけていた。
遺跡へ到着した三人は早速探索を開始した。
「カイ、昨日見つけた本はなんだったんだ?」
ライコスがどんな魔術なのか興味津々に確認する。
「えーっと……
なんて言ったらいいのか……
相手の情報を見れる魔術かな……」
どう説明したらいいかわからず慎重に言葉を選びながら話すカイ。
「そりゃすげぇなー!
相手が何を考えているかとかそういうのが分かるのか?
まさか……俺で試してないだろうな」
思考を読まれそうで気になったライコスは、さっと身構える。
「……思っていることは見えませんよ。
体力だったり、弱点だったり、属性だったり……
そういうステータスが見れる魔術のようです」
カイは前世の記憶で『ステータス』というのがちょうどいい単語だったこともあり、ポロっとその言葉を使って話してしまった。
「すてぇたす?
まぁ、よくわからんが、初めて遭遇する魔物でも弱点がわかるのか?」
案の定、ライコスはその言葉の意味が分からず、再度聞き直す。
「……そのような感じです。
まだ試してないから分からないです。
それに、気になることがあって……」
カイは分からない言葉を使って、『しまった』と思いつつ、ライコスの質問も的外れではなかったので、その内容を肯定した。
ただうまくいかないことがあるのか、思い悩んだ表情をしている。
「気になる?
何がだ?」
ライコスはカイの顔が気になり、気になると言った内容の確認をする。
「昨日試作の魔術を創ったのですが……」
カイは表情を大きく変えずに事情を説明しようとしたのだが、
「私には全く使えなくて。
カイだけが使えるの。
不思議でしょ?」
二人の会話にシリルが割り込んできた。
「そりゃ、不思議だな」
たいていの魔術が使えるシリルが全く使えない魔術に、ライコスも考え込む。
「そうなの。
しかもカイが使っても、何も見えなく……」
どうやら魔法陣までは見えているようだが、術の発動したものが見えないらしい。
「僕には見えているのですが……」
ますます眉間にしわが寄るカイに
「まぁ、今考えても仕方ないから。
まずはお前が試してみて、その後戻ってから考えたらどうだ。
遺跡で気を抜くと、スカーレットに怒られるしな」
ライコスは探索に集中するように促した。
「……そう……ですね」
カイはそういうと、頭を横にブルブルと振るわせて気持ちを切り替えた。
それから三人は、遺跡の中を歩き回り、本がありそうな部屋を探し始めた。
ある開けた遺跡の一角に入ると
「そこの壁、蜘蛛みたいなのがいるぞ」
通路の方から大きな蜘蛛の魔物が数匹現れたのをライコスが見つける。
「サーチ!」
カイは試作の魔術の魔法陣を展開する。
すると魔物の全体が黄色く光り、首元の関節が白く光った。
『魔物の身体が黄色く染まっている……
たしか仕様だと、黄色は雷系統に弱いはず。
白く光っている部分が――』
「……ライコスさん、首元を狙ってください……
シリル、ライトニングで」
サーチで見つけた弱点を二人に伝える。
「おうよ」
ライコスは走り出すと、右からきた魔物の首元へと短剣を振り下ろす。
ズサッーー
一瞬で首が切り落とされ、魔物が床に落ちた。
「うん、わかった。
デュアル・ライトニング!」
シリルも言われたとおりに魔法陣を展開する。
緑と赤の光が交差し、魔法陣を埋め尽くすと、轟音と共に交差した稲光が魔物に向かっていく。
ドドォーン――
その稲光が魔物に当たるや否や、炭と化した物体が転がっていく。
「あっという間だな」
ライコスはすんなり倒せたことに驚きを隠せない。
「あの虫みたいなの、雷が弱点なの?」
もともと魔力が強いシリルは弱点云々関係ないことも多い。
しかし、今回は抑え気味に放った魔術でも、抜群の効果だったことにビックリした。
「うん……
そうみたい。
物理での攻撃も首元が弱いから……」
カイは見えていた情報を二人に共有する。
「これだと探索も楽になりそうだね」
シリルは瞬殺できた状況に大喜びだ。
「……でも弱点が分かっても、魔物が強ければ、こんな簡単ではないかな……」
しかし、カイは慎重な姿勢を崩していない。
「そうだな。
それでも、まったく歯が立たないってこともなくなるだろうし……
そういう意味でも助かる魔術だってことだ」
ライコスも浮かれないようにと釘を刺しつつ、改めてカイの魔術を褒めた。
「ありがとうございます」
褒められて嬉しいカイの口からはすんなりとお礼の言葉が出ていた。
その後も次から次へと出てくる魔物にサーチの魔術を使うカイ。
そのおかげもあり、昨日ほど苦労せずに目的の古書のある部屋に到着した。
それと時を同じくした遺跡内――
とある冒険者パーティーが探索をしていた。
「なかなか宝物見つからないね~」
腕を頭の上で組んだ女剣士が呟く。
「何、呑気にしているんだよ。
そんな簡単に見つかるなら、宝じゃないって」
大きな盾を持つ男がその前を警戒しながら歩く。
「苦労して見つけてこそ、高く売れるんじゃん」
その後ろにいる斥候の男が正論を言う。
「そんなの分かってるよ。
でも楽したいじゃん、ね」
女剣士は不貞腐れながら応える。
「まぁ、そりゃ楽はしたいけど……」
一攫千金を夢見ているのは誰もが同じだ。
女剣士の言うことも分かってはいる。
それでもなかなか楽はできない。
「あっちに何かありそう。
あっちの方へ行こうか」
勘で指を差す女剣士。
ドドォーン――
大きな音と共に、閃光が遺跡の奥で瞬く。
「えっ?
何?
雷?」
しかし、外を見ても綺麗な青空が広がる。
急いでその音がした場所に向かった一行。
そこには黒こげと真っ二つになった魔物の死体が転がっていた。
「なんだこれは……」
気を取り直して、先に進む一行だったが、次の部屋に入ると
「……めっちゃ寒い」
大きな盾を持つ男の身体がブルブルと震えだす。
そこは真冬のように寒い部屋だった。
「まだ冬じゃないよね……」
女剣士も身体をさすりながらその部屋に入った。
「さっきの音といい、この部屋といい、なんか変じゃね?」
斥候の男は周りを見渡すも寒いだけで、変わった様子は伺えない。
「うゎーっ、寒いし、何も見つからないし、今日はもう帰ろうよ」
女剣士は寒さのあまりその部屋を飛び出していった。
男たちも我慢できなかったのか、女剣士の後を追って部屋を離れていった。
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
ついに『深淵の真眼書』から新魔術『サーチ』を発動させたカイ!
カイにしか見えない「ステータス画面」のような視界から指示を出し、敵の弱点を的確に撃破していく連携は爽快でしたね!ライコスに「俺で試してないだろうな」と身構えられるシーンも微笑ましいです(笑)。
そして後半、カイたちが暴れまわったせいで極寒&黒焦げの現場に遭遇し、ソッコーで引き返していった冒険者パーティーにもクスッと来てしまいます。
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次回の更新もどうぞお楽しみに!




