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ひきこもりの天才プログラマーは異世界で魔術言語をハックする  作者: 光命
Class.002 { lostWord = adventure.Explore(kai,cyril); }

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33/38

function.033(“ズーラの遺跡”);

翌朝――


眠い目をこすりながら歩くカイはぼんやりしている。


「もう、しっかり歩きなよ」


そんなカイを、シリルは手を掴み引いて歩いている。


「……だってあれだけ探したのに……

 ロストワードの本が見つからなかった……

 あれだけあれば絶対にありそうなんだけど……」


――昨日、あれからカイはずっと黒鉄の鉄鍋亭の古書がある部屋にいた。

膨大な古書の山を丁寧に1つ1つ確認をしていた。

最初のうちはシリルも手伝っていたが、あまりにも多い本に疲れてしまい、その後はカイ一人で黙々とロストワードの古書探しをしていた。

それは、お店の夕時の慌ただしさも、夜の活況も過ぎ、閉店間際まで続いていた。


「カイの執念は凄いな」


酒を片手につまみを食べながら見守るライコス。


「凄いとは思うけど、もう少し自重してほしいな。

 ここまで飲まず食わずだよ。

 身体のことも考えて欲しいよ」


シリルは心配そうに見つめていた。

すると、カイの元へスカーレットがやってきた。


「はい、そろそろ終わりにしてくれ。

 本を読むのはいいことだが、加減っていうものがあるんだよ。

 次はまた今度な」


カイの持っている本を取り上げて、窘めるように話をする。


「……わかりました……

 今度っていつですか?」


カイはまた直ぐ来たいと思ったのか、次に来られる日を確認している。


「そうだな……

 今度は今度だ。

 明日は遺跡探索だから、きちんと起きなよ」


スカーレットは具体的な日は言わずに、カイの背中を押して、シリルの元へと行かせた。

後ろ髪を引かれる思いで古書の山を後にするカイだった。



そんなこともあり、カイは古書を探し続けた疲れと、見つけられなかった悔しさを引きずったまま朝を迎えていた。


「ほら、しっかりしないと。

 またスカーレットさんにお願いして、本を見させて貰うんでしょ。

 このままだと、いつまでたっても見せてもらえないよ。

 それに時間にも遅れそうなんだし」


シリルが足早になると、カイの腕もピンと伸びて、引っ張られていく。


「……うーん……

 わかっているよ」


もう片方の手で目を擦りながら、カイも懸命についていき、冒険者ギルドに向かった。


冒険者ギルドに到着した二人が受付にいくと、そこにスカーレットが現れた。


「おっ、しっかりと起きれたようだな。

 えらい、えらい」


カイの頭をポンポンと叩く。


「……おはよう……ございます」


少し小さめの声だったが、先にカイが挨拶をする。

そんな様子にシリルは驚きつつも


「おはようございます、スカーレットさん!

 今日もよろしくお願いします」


と元気な声でカイに続いた。


「嬢ちゃんはいつも元気だね。

 いいことだ」


スカーレットはシリルの元気のよさを褒めて、頭を撫でていた。


「そういや、ライコスの奴はどうしたんだい?」


周りを見渡したスカーレットが、ライコスがいないのに気づく。


「あの、それが、昨日……

 『ちょっと野暮用がある』って言って出ていったきり、帰ってきてなくて」


シリルが事情を伝えると、スカーレットは


「あの野郎……

 遅刻とはいい度胸しているね」


さっきまでの笑顔から一転、顔を引きつらせている。

そこへ


「わりいわりい、少しだけ遅れちまった」


勢いよくギルドの入口が開いたかと思うと、笑顔でライコスが入ってきた。


「ライコスーーーーーー!!」


スカーレットの大声がギルド内に響き渡る。

周りにいた冒険者たちもその声に驚き、こちらに注目する。


「お前、何遅刻しているんだい。

 坊ちゃんたちはしっかり時間に合わせて来ているのに。

 護衛で大人のあんたがしっかりしないといけないんじゃないのかい」


周りの目も気にせずライコスに説教を始めた。


「遅れたの、少しだけじゃん。

 といういか、これぐらいじゃ遅刻に……」


笑顔のまま取り繕うライコス。

しかしスカーレットは


「あんたは昔からそういうところがあるんだよ。

 散々言ってきたけど、まだ直ってないのかい」


そのまま説教モードを続けている。


「スカーレットさん、ライコスさんに何もなくて良かったじゃないですか。

 なんかあったらと思って、心配でしたし……

 それに、私たち、早く遺跡へ行きたいので、準備したら行きましょう」


長くなりそうな雰囲気を察したのか、シリルが間に入り話題を変えていく。


「まぁ、嬢ちゃんたちがいいって言うなら、とやかくは言わないけど……

 ライコスはもう少ししっかりしないといけないよ」


スカーレットは最後に一言だけ苦言を呈しながらも、ギルドの受付に向かい、遺跡探索の申請を書き始めた。


「うぃっす」


ライコスはその苦言を受け入れたように返答していたが、スカーレットが受付に向き直すと同時に、軽く舌を出していた。


「申請ありがとうございます。

 はい、ランクも問題ないですね。

 気をつけて行ってらっしゃいませ」


受付嬢は書類を確認すると、受理の印鑑を押し、笑顔でお辞儀をして見送ってくれた。


「さてと、じゃ、ズーラの遺跡に行くかい」


4人は馬車に乗り込み、遺跡へと向かっていった。

馬車は森の中へ入っていくと、一本道をひたすらまっすぐ進む。

ズーラの街は森を切り開いて出来たような場所にあった。

そのため、周りはほぼ深い森に囲まれている。

その周りには山々がそびえている。


「ここは資源が豊富でね。

 銅や鉄といった鉱物も多くてね。

 鍛冶屋や武具屋もいい店が多いよ。

 今度余裕があったら、武器や防具を新調するといい」


道中はスカーレットがズーラの街のことを詳しく教えてくれた。

その話を聞いているうちに、あっという間に遺跡へ到着した。


ズーラの遺跡は、メタキリタスの遺跡とはまったく違っていた。

鉱物を加工して作られたような古い建物や祠が建ち並んでいる。

巨大な金属製の構造物。鉱石を加工したような壁。機械を思わせる遺構。


『なんだこれ……

 まるで工場か、研究施設みたいだ……』


カイには、近未来的な構造物にしか見えなかった。


「前の遺跡と雰囲気が違うね」


シリルは周りを見ながら独特な気配に驚いている。


「そうだね……

 なんか、マシンとかもありそうな感じ」


カイは前世で見たアニメや漫画のSF作品を思い出していた。


「ま……しん?」


聞き馴染みのない単語にシリルが首を傾げると、カイはハッとして慌てて首を振った。


「あ、ううん、なんでもない!

 古代文明って、どんな感じだったのかなと思って……」


「今よりだいぶ発達していたというのが学者たちの見解だな」


入口手前で中の様子を確認しているライコスがカイの疑問に答える。


「そうさねぇ、ここは鉱物も昔から多く採れたみたいだから。

 余計にそういった技術は凄かったという話らしいよ。

 ただなんでこの高度な文明が滅びたかはわかってないんだよ」


スカーレットがライコスの話を補足するように話をする。


「……そうなんですね……」


カイはスカーレットたちの話を聞きながら


『古代文明が滅びる理由は前世ではだいたい戦争……

 ここでもそういったのが起きたのかな』


そんな前世の知識を思い出していた。


「じゃ、入っていくけど、前衛は自分とライコス。

 間にシリル、後ろはカイでいいか?」


スカーレットが陣の指示を出すが、ライコスが異論を挟む。


「ここの構造はお前が頭に入ってるんだ、わざわざ斥候の俺が前に出る必要もねぇ。

 先頭はお前、一番後ろは俺が固めて、この二人を挟む形が一番安全だろ」


「……

 そうだね、あんたの言い通りかもね。

 それでいこう」


ライコスの提案をすんなり飲むスカーレットに


『やっぱりなんだかんだ言って、二人は信頼しているんだな』


カイはそう感じながら二人を見ていた。


「ここからは気を引きしめてなよ。

 二人にもガンガン動いてもらうからね」


スカーレットはニヤリとしながら、遺跡へ一歩を踏み出していった。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


飲まず食わずで古書を探し続け、見つからずにショックで目が開かないカイ……!

シリルの苦労が偲ばれます(笑)。


そしていよいよ足を踏み入れた「ズーラ遺跡」は、まるで工場や研究施設のような近未来的なロマン溢れる場所でした。

スカーレットとライコスの口喧嘩の中にある確かな信頼感も頼もしく、ここからどんな探索が始まるのか……!


徹夜のカイや新しい遺跡の雰囲気に「ワクワクした!」「シリルのお姉さんっぷりが可愛い」と思っていただけましたら、ぜひ評価やブックマーク登録で応援していただけると励みになります!


次回の更新もどうぞお楽しみに!

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