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ひきこもりの天才プログラマーは異世界で魔術言語をハックする  作者: 光命
Class.002 { lostWord = adventure.Explore(kai,cyril); }

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24/26

function.024(“古書の価値”);

一方その頃、三人はメタキリタスの遺跡の奥へと進んでいった。


「ここからもう一段魔物が強くなるぞ!

 油断するなよ、カイ、シリル!」


「はい!」


「……はい……」


同時に返事をするも、カイの声はシリルの声にかき消されている。


「あのなぁ、カイ、声の大きさが女の子に負けてるぞ。

 もうそろそろ俺に慣れてくれてもいいんじゃね?」


「そろそろって、まだ会って3日目ですよ。

 カイと仲良くなるには時間がかかるんです」


シリルはライコスにツッコミを入れ、カイのことを庇っている。

その様子を見ていたカイは


『何げに酷いこと言われた気が……

 まぁ、事実なんで、否定はしないけど……』


自分のことは分かってはいるものの、苦笑いをする。


「時間より質だと思うけどなぁ。

 こんなに濃密な時間を共に過ごしているのになぁ」


へらへらしながらカイに抱きついたライコスに、シリルは頭をペシッと叩いて怒っている。


「油断するなー、でしょ!

 真面目にしてください」


「へいへい。

 俺はこれでもちゃんとやってるんだがな」


カイから離れたライコスは急に前に走ったかと思うと、突然わき道から出てきた魔物に一撃を喰らわす。

カイも慌てて追撃態勢を整えてから、魔術を放つ。


「デュアルアイスランス」


2本の槍が現れると、その魔物へと向かい、頭と足に突き刺さる。

さらにわき道から、2体の魔物が追撃してきた。


「それも想定済みだよ」


ライコスは慌てずに2体をいなしていく。


「デュアルアイスランス!」


今度はシリルが構えて追撃する。

先ほどより小さめのアイスランスが2体をぶち抜くと魔物だけを凍らせて砕け散る。

どうやら、魔力を抑えて撃ち込んだようだ。


「シリル……

 うまく調整したね」


カイは小声でシリルに話しかける。


「でしょ、でしょ!」


シリルはカイに褒められたことで、どうだと言わんばかりの顔をする。


「分かったって。

 そんなことで一喜一憂するな。

 まだ先はあるんだから」


ライコスは先ほどのお返しとばかりにシリルに注意する。

シリルはぷくーっとした顔をしながらも


「はーい」


と素直に従っていた。


その後も迷路のような遺跡をライコスが誘導して進んでいく。

しばらくすると、ライコスが立ち止まり奥に見える部屋を指さす。


「ここが本が多く散らばっている部屋だな

 他にもいくつか知っているが、まずはここから調べていこう」


3人はその部屋へ入ると、一つ一つ丁寧に本を確認していった。


この部屋も散々荒らされた形跡があった。

何か置物がおかれていたであろうところもあちこちにある。

棚の引き出しも多くは開けっぱなしになっていた。

引っ張り出されてひっくり返されていたものもある。

これだけ荒らされているのにもかかわらず、多くの本が床に散らばっていたり、棚にそのまま置いてあったりした。


『ロストワードの本以外もいっぱいあるだろうに……

 この世界の人たちは過去の知識には興味ないのだろうか……』


カイはこの光景を見ると、ふとそんなことを思ってしまう。

どの本も貴重なものなのかもしれないのにと感じていた。


「ねぇ、ライコスさん。

 なんで本だけこんなにいっぱい残っているの?」


シリルも同じようなことを考えていたのだろうか。

ライコスに疑問をぶつけていた。


「あぁ、それはなぁ、難しいことじゃないよ。

 単に金にならんだけだ」


頭を掻きながら本を眺めているライコスはぶっきらぼうに答える。


「貴重そうなものもありそうなのに?」


シリルはお金になりそうな本もあるのではないかと考えていた。

さらにライコスへと疑問を投げかけた。


「中にはそういうのもあるかもしれないな。

 ただこういう遺跡は世界中にいっぱいある。

 同じようなものがどこかで見つかっていれば……

 持って帰ってもほとんど買い取ってもらえない。

 労力に対して金が釣り合わねぇってことだ」


ライコスは事情を話しながら、今持っている本をポイっと投げると、手前の本を手に取っていた。

カイはライコスとシリルの話に聞き耳を立てつつも、ロストワードの本を探すのに集中していた。


「そうなんですね。

 でも、置物とかもいっぱい同じもありますよね?」


シリルもライコスと会話しつつも、次の本を手に取り確認をしていた。


「置物なんかは多少買い取ってくれる。

 そういうものを欲しがる奴は多いし、金持ちは特にな。

 ただ本だけはなぁ……

 欲しがるのは学者さんや一部の物好きだけだ。

 需要も少ないし、金持ちの道楽じゃないから、報酬も少ない。

 だから冒険者たちはあまり手を出さないってことだ」


需要が多い置物や宝石類は高く売れるし、買う人たちも金持ちが多い。

対して本はというと、もともと需要も少ないのかもしれない。

それに客層が違うこともあり、懐も寒いのだろう。

冒険者としてみれば、どちらをとるかということになる。


「なんだか世知辛いですね」


欲に目が眩んでいるように聞こえたシリルはため息をつき、次の本へと手を伸ばしていった。


「探索は危険と隣り合わせだしな。

 それに見合う対価がないと、俺たちもやってられないって」


ライコスはそれが冒険者として当たり前だと言わんばかりだった。

その言葉を聞いたシリルは複雑そうな顔をしていた。


二人が話している間も黙々と本を次から次へと確認していたカイは棚の一番上に目がいった。


 ……光素……を用いた生体……ジェクトの例外制御

  および動的パッチ適用………… リファレンス……


浮かび上がる文字に置かれていた本を手に取り、表紙をめくった。


 【目次】

 第1編:生体情報のスキャンと構造体定義

 第2編:動的パッチ適用による局所再生


目次の上を指でなぞりながら確認していく。


『第2編は局所再生と書いてあるが、これは回復魔術かな』


さらに指を下へとずらしていく。


 第3編:外部因子インジェクションへの例外処理


『外部因子インジェクション?

 外から何かが入ってきたってことかな。

 その例外処理ということは、検知した場合に取り除くってことか?』


今まで以上にゆっくり本を眺めているカイに


「カイ、もしかして見つけた?」


シリルは走って近づくと後ろから肩に手を置いて覗き込んだ。


「……うん。

 ……光の回復っぽい内容みたい……」


カイは後ろを振り返りシリルの顔を見る。


「光?

 なら、今度は私が最初だね!

 カイの創った魔術、私が最初に試せる!」


嬉しそうにピョンピョンと跳ね上がるシリルにカイは


「……そうだね。

 僕は光属性は適応してないし……」


落ち着いた顔、そして少しだけ笑みをこぼしながらシリルを見つめていた。


「はいはい、ごちそうさん。

 二人の世界に入っているところ、悪いけど、そろそろ時間だ。

 戻らないと日没までには遺跡を出れなくなるぞ」


ライコスは二人を冷やかしつつも、落ち着いて次の行動を指示していた。

その言葉に二人は顔を赤らめて、微妙な距離感まで離れた。


「今更だろ、お前ら。

 もっと堂々としていりゃいいのに」


二人の態度にしびれを切らして文句を言うライコス。


「……そ……そんなことないですよ!

 大事な幼馴染、それだけです!」


シリルはますます耳を赤くして顔を覆うと、ライコスを追い越して部屋の外へと飛び出していった。


「おい、待て、一人で先に行くな」


ライコスはシリルを追っていくと


「きゃーっ」


シリルの悲鳴が部屋まで聞こえてきた。

カイも慌てて追いかけると、そこには切り裂かれた紫色の植物のような魔物が転がっていた。

その先には顔面蒼白で立ち尽くすシリルと、その足元で、うめき声を上げながら崩れ落ちるライコスの姿があった。


「ちっ、やっちまった……」


ライコスはその植物を見つめたまま顔を歪めていた。

第24話をお読みいただき、ありがとうございました!


ライコスさんとのコミカルな掛け合いや、遺跡の本がなぜ放置されているのかという世知辛い裏話など、まったりした探索回かと思いきや……ラストで一気に空気が凍りつきました。


ライコスさんがやられてしまった!?

そして、カイが直前に手に入れた古書の内容は『生体オブジェクトの例外制御』『動的パッチ適用による局所再生』……

これはどう見ても……


果たして二人は、目の前で崩れ落ちたライコスさんを救うことができるのか──!?


「続きが気になりすぎる!」「ライコスさん無事でいてくれ!」と思った方は、ぜひブックマークや評価、いいねで二人を応援してください!

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