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ひきこもりの天才プログラマーは異世界で魔術言語をハックする  作者: 光命
Class.002 { lostWord = adventure.Explore(kai,cyril); }

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21/26

function.021(“ライコス受難の日”);

「……あの……まだ見ていない本もあります……

 出来れば……もう少し探したいのですが……」


興味が止まらないライコスに恐る恐る確認するカイ。


「おっと、そうだな。

 俺も手伝うよ」


「お……お願い……します」


丁寧にお辞儀をするカイに、ライコスは


「気にすんな。

 お前らの親からも頼まれていることだ」


と言うと、肩にポンポンと手を置いた。

それから三人は小部屋から元の部屋に戻るとあちこちに散らばった本を捲り始めた。

しばらく懸命に探す三人だったが、


「そういや、探すにしても、どんな本なんだ?」


本を捲りながら頭を掻きはじめたライコス。

探し始めたのはいいが、何を探せばいいかわかっていなかったようだ。


「えーっと、読めない本かな」


シリルはそれで探せるのかというような漠然とした答えを返す。


「読めない本?

 俺にとっちゃ、どれも小難しそうで読めないんだが」


ますます難しそうな顔をしてライコスは本を眺めている。


「うーん、そうじゃなくて。

 文字っぽくなくて、模様のような感じで、でも文字っぽい感じもどこかあって……」


シリルは懸命に説明しようとしているが、上手く言葉に出来ていない。


『シリルはもう少しうまく説明できないのかな。

 かと言って僕には読めるから、僕からも上手く伝えられないけど』


二人のやりとりを聞きながらも、自身の手は止めずにひたすら本を捲るカイ。


「なんじゃそりゃ。

 それでどうやって読むんだ?」


「なんか、カイには読めるんだって。

 私には全く分からないけど」


「じゃ、さっきどうやってそれがわかったんだよ」


この部屋に入って目的の本を探し出したのはシリルである。


「うーん……

 勘?

 かな」


それが人差し指を口元に当てて、少し考えたシリルの返答だった。


「勘で分かったら苦労しねぇよ」


ライコスは苦笑いしながらも


「わかったよ。

 俺も『勘』で探すわ」


そう言うと、再び本とにらめっこを始めた。


「ライコスさんてば、いじわる!」


ぷいっとライコスに向けて小さく舌を出したシリルは、不満げに腰を落として次の本を拾っていた。


その後も三人で部屋の中の本を隈なく探したが、最初に見つけた本以外はロストワードの本は見つからなかった。


「あーあ、他にはなかったね。残念」


シリルは仰向けに寝転ぶと、深くため息をついた。


「1冊でも見つかったんだから、良しとしておこう」


両手でシリルが見つけた本を抱えていたカイは片方の手をシリルに差し伸べた。

シリルはその手を掴むと、ヒョイと立ち上がった。

そしてそのまま、握った手を名残惜しそうに離しながら、


「そうだね。

 初めての探索で1冊見つけられたんだから、良しとしましょう。

 でも、それ見つけたのは私だからね!」


先ほどの落胆の表情が消え、満面の笑顔になったシリル。

その笑顔に釣られてカイもはにかんだ笑顔になっていた。


「そろそろ、暗くなってくるころだ。

 今日はこの辺りで探索は切り上げて、街に戻るぞ」


ライコスはそう言うと、二人の背中を押して元来た道に戻り始めた。


「ライコスさん、この遺跡にここ以外にも本がありそうなところある?」


シリルはまだ探索したりない様子で、次にどうするかを考えているようだ。


「ここの遺跡は広いからな。

 まだまだあったと思うぞ。

 ただ本があったかまでははっきり覚えていないから、隈なく探すことになるがな」


「どんとこいです!

 早くまたここに来たいです!」


胸を張ってポンと叩いて、ドヤ顔するシリル。


『僕も頑張らないと……

 今度は僕がシリルを助けないと……』


先ほどの戦闘での彼女の必死な姿を思い出す。

カイは手元に抱えた古書をキュッと握りしめ、静かに想いを新たにした。


街に帰ってきた三人は、カイとシリルが泊まる宿の部屋に来ていた。


「ライトリンク!」


シリルが魔法陣を起動し始めると白と緑の光が魔法陣をなぞり始める。

光が入り乱れ、魔法陣全体が光に満たされると、目の前に映像が浮かび始めた。

その様子を見ていたライコスはまた目を輝かせている。


「なぁなぁ、これはどうなっているんだ」


後ろで古書を読んでいるカイの横に座ると、またいろいろと聞き始めた。


『相変わらずですね、ライコス。

 その興味を持ったら突っ走る性格をなんとかしなさい。

 それで何度も痛い目に合されているのですから』


目の前の映像に浮かび上がってきたのは、ライコスのかつての冒険仲間で、シリルの母であるエスメラルダだった。

その横にはカイの母のクレアもいた。


「また辛辣だな、お前は。

 言葉遣いだけはくそ丁寧なくせによ」


エスメラルダの苦言に、ライコスは映像に突っかかるように近づき、口を真横に広げて応戦する。


『事実を言っているまでです。

 ごめんなさいね、シリル。

 これでも腕はそれなりだから』


エスメラルダの言葉に苦笑いしか出てこないシリル。


「ふん、『それなり』は余計だ。

 きちんとお前らの子供を護衛してやったんだ、礼の一つもいいやがれ」


ライコスはエスメラルダの言葉にまた悪態をついていた。


『そうだったね。

 ありがとうね、ライコス』


エスメラルダを少し横に押しのけたクレアが優しくライコスを労った。


「わかりゃ、いいんだ、わかりゃ」


ライコスは顔を横に向けると少し照れくさそうにしていた。


『でも、ここにいるということは、あなた、正体がバレましたね。

 秘密裏に護衛してとお願いしたはずです』


エスメラルダが再びクレアを押しのけて、厳しい顔で投げかける。


「いやー、だってさー、こいつさー、鋭いんだぜ。

 ずっと俺のこと警戒しているし、観察しているし」


ライコスはカイの横に再び座り直すとガッと肩を組んだ。


(僕が見ていたこと、ずっと気づいていたんだ)


カイは、ライコスが自分の視線に気づいていたことから、改めて一流の冒険者なのだと実感した。


『ライコス、それは言い訳です。

 あなたならもっと上手くできたはずでしたのに。

 同行する時の言い訳も聞けたものではありませんでした……』


エスメラルダは言い終わる前に思い出し笑いをする。


「いいじゃんかよ!

 そんなしっくりくる理由なんて簡単に言えるか!

 そもそも、ここの遺跡のレベルに俺が合ってないんだからさ。

 何言っても、嘘っぽくなるだろ!

 ったく……

 よくこんなのと結婚したな、ラルフは!」


ライコスの言葉がシリルの様子が気になり覗き込んでいたラルフに被弾する。


『……あのなぁ、お前さ……

 コイツの前で何か言える訳ないだろ……』


逃げるつもりで言った言葉にエスメラルダが反応する。


『あなた……ラルフ……

 私の前で言えないことでもあるのですか?

 後でじっくり話し合いましょうか……』


こちらに顔を向けていないので表情はうかがうことができない。

ただ映像越しにも怒りが伝わってくる。


『いや……なんだ……

 言葉の綾だって……

 なんの文句もないって。

 ずっと愛してるって』


慌てて取り繕うラルフは画面からすっと消えていった。

その様子を見ていたシリルは二人のやりとりを笑いながら見ていた。


その後も、シリルは遺跡探索であったことをエスメラルダとクレアに手振りを加えながら伝えていた。

それにライコスも加わりながら、話は夜遅くまで続いていった。

第21話をお読みいただき、ありがとうございました!


今回は遺跡探索の終わりと、実家への定期連絡ライトリンクのお話でした。

ライコスさん、元Sランクパーティー所属の凄腕冒険者なのは間違いないのですが、カイたちの母親世代には完全に頭が上がらないようです(笑)

そして完全に巻き添えを食らってしまったラルフお父さんの明日はどっちだ……!


カイもライコスの「プロとしての凄さ」を肌で感じ、シリルを支えるために改めて決意を固めました。


次回から、物語はさらに大きく動き始めます。

面白いと思っていただけましたら、ブックマークや評価、いいね等で応援していただけると励みになります!

次回もお楽しみに!

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