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ひきこもりの天才プログラマーは異世界で魔術言語をハックする  作者: 光命
Class.002 { lostWord = adventure.Explore(kai,cyril); }

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19/20

function.019(“ライコスの正体”);

カイは座っているライコスに向かって歩を進めると、目の前に手を差し出した。

我に戻ったライコスは照れくさそうにその手をとり起き上がる。


「一瞬だったな、おい」


ライコスが起き上がりきっても、カイはその手を掴んだまま、ずっと睨んでいた。


「…………」


「ん?、なんか言ったか?」


掴んでいる手を引きはがそうとするがなかなか外せない。


「……あなたは……何者……なんですか?」


カイは聞き耳を立てないと聞こえないぐらいの声で言葉を発した。


カイはおかしいとは感じているものの、目的までは見抜けずにいた。

それでもライコスの挙動、視線、言葉からは悪意は感じられなかった。

ロストワードの魔術を見られた以上、隠し通せるものでもない。

思い切って、ライコスに訊ねてみた。


「俺に初めて話した言葉がそれか?

 フンッ、少しでも喋れるなら挨拶ぐらいキチンと言葉でしろってんだ」


カイの言葉に憤ったかのような言葉を投げかけるライコス。

しかし、ライコスの指は鼻のあたりをひっきりなしに触っていた。


「あなたの……その仕草……

 嘘ついてますよね……

 昨日から……観察していますが、慌てたり焦ったりしているとその仕草しています」


カイは握りしめていた手と反対の手首をガシッと掴むと、さらに問い詰めていく。


「……さぁ……なんのことやら‥‥

 俺は何も知らないって……」


カイの迫力に思わず目を逸らすライコス。

しばらくカイはライコスのことを睨み続けた。

その様子を見ていたシリルは二人の間に割って入っていった。


「カイ、その辺りで止めようよ」


ライコスは掴まれた手首に痛みを感じていたのか、さすりながら少し安堵した表情をする。


「ったく、なんなんだよ、華奢な割にはすげー力だな」


「ライコスさんも。

 その辺りで茶化すのは止めてもらえますか?」


「へいへい」


それでも茶化すのを止めないライコスにシリルは厳しい視線を送る。


「まずはカイの質問に答えてください」


二人から同じような視線を向けられるライコス。

しかしその視線を無視して、また茶化しはじめる。


「それは昨日、自己紹介しただろ?

 元Sランクパーティーに居たライコ……」


昨日の自己紹介を繰り返そうとしていたが、間髪入れずにシリルが怒り始めた。


「それは聞きました!

 そうじゃなくて、私たちに近づいた目的は?」


「さぁ、なんのことだかね?

 それにさ、そんなこと直接聞いて話す奴、いるのか?」


それでも白を切るライコス。

腕を組んで凄んでいる様子に、シリルも少し身構えてしまう。

そこにカイが割り込み、ボソボソっと話し始めた。


「あなたの行動、言葉、仕草、視線から大きな悪意は感じられませんでした。

 悪意どころか好意を持って接している感覚もありました」


カイの言葉にビクンっとなったライコスは視線を下へと移す。


「……」


「いろいろと見た故での結論ですが……

 僕たちのことは以前から知っている、

 もしくは知っている誰かから頼まれたとかで護衛を引き受けたのではないですか?」


カイはこれまでのライコスの観察で導いた推論を伝えた。


「えーっ、ライコスさん、私たちのこと知っているの?」


シリルはそのカイの話を聞いてビックリしていた。


「……クククッ。参ったな」


ライコスは笑いながらも、ふと遠くを見て、少し切ない表情を浮かべた。

そこから少しの間、黙ってしまう。

その様子をカイとシリルはずっと見つめていたが、しばらくすると


「はっはっはっはっは」


と大声で笑い始めた。


「まいったよ、カイ。

 そこまで見抜かれてたとはな」


その言葉にカイは少しだけ口角を上げていた。


『少し憶測も含めていたけど、僕の予想は合っていたみたい』


観察から事実を積み上げて導き出した答えだったこともあり、カイは少し嬉しくなった。


「……ふぅ、それじゃ、改めて。

 俺はライコス。

 お前らの母さんたちの元冒険者仲間だった男だ」


「えーっ!!

 お母さんたちの!」


ライコスの言葉にシリルは驚きを隠せなかった。

カイも少し驚いたものの、いくつか想定した内容の一つだったこともあり、落ち着いて聞いていた。

そして、思いだしたのは昨日のエスメラルダの行動だった。

なぜあそこで噴き出したのかが不思議に思っていたが、このことだったのかと腑に落ちた。

あれはライコスの護衛を手伝う言い分が面白かったのだと。


それからライコスは自分のことを語りだした。

クレアやエスメラルダがいた冒険者パーティーのこと、自身の武勇伝などなど……

聞いてもいなことをベラベラと喋っていた。


「まぁ、そういうことだ。

 今後も、よろしくな」


「……はい、よろしくお願いします」


ライコスの話をカイもシリルも顔を合わせて苦笑いして聞くしかなかった。


「これで、俺の事は全部話したぞ。

 次はお前たちの番だ。

 あの魔術、いったいなんだ?

 ……いったいなんだはないか、エスメからはかいつまんで話は聞いていたが……」


ライコスはシリルがメタルフントを一撃で倒した魔術の事を興味津々の様子。

前のめりでカイの前に自分の顔を近づける。

カイは少しギョッとしたが、フッと息を吐いて落ち着いてから小声で話し始めた。


「……えっと、あれはライトニングという魔術です」


「そうか、ライトニングか……

 属性は?

 光か?」


さらに顔を近づけて質問をするライコス。


「……いいえ、あれは火と風です」


ジリジリと迫りくるライコスに、カイは少しずつ後ずさりをする。


「えっ?

 二つ?

 確か魔術は複合出来ないって聞いてたけど……」


カイはいろいろと質問をしてくるライコスの気持ちに応えるように丁寧に返答をしていった。


「今の魔術は……出来ません。

 これは……ロストワードで創った魔術ですので……」


「そうか、これがロストワードの力か。

 なんか凄い光や音だったな。

 ズババーン! ドーン! みたいな」


大きな手振りで音の表現をするライコス。

その浮かれようはまるで子供のように感じる。

今まで聞きたいことも我慢していたのであろう。


「あれは……シリルの魔力に合うように調整してあります……

 シリルは魔力が多いので……」


「へぇー、そういやエスメも魔術使う時、加減が難しいって言っていたな。

 シリルもそうなのか?」


「はい。

 同じような……感じでしたので……

 創った魔術はエスメラルダさん……にも試していただいています」


質問攻めにするライコスに、当初は警戒していたカイ。

しかし彼の純粋な好奇心に、次第に言葉が熱を帯びていく。


丁寧に分かるように話していた言葉も、徐々に技術的な内容が多くなっていく。

初めて聞く言葉にさらに興味をもつライコスも質問が止まらない。


しばらくその様子を見ていたシリルだったが


「ねぇ、二人で盛り上がらないでくれる?」


シリルは頬を膨らませつつも、カイの額にうっすらと浮かぶ汗と、疲弊した顔を見ていた。


「もう、カイが疲れてるの分かんないの?」


シリルはそう言ってライコスを突き放し、カイを休ませるための盾となってくれた。


シリルが割って入ってきてくれたことで、ホッとしたカイは床に座り込んでいた。

懸命に考えて慎重に答えていたこともあり、疲れがどっと押し寄せて立っていられなくなったのだった。


それでも話を続けるライコスと困りながらも答えているシリルを見上げて眺めていた。


『この人は知らないことを知ろうとする、いろんなことに興味がある人なんだな』


その貪欲さは素晴らしいと思いつつ、いい加減終わってくれないかと思うカイだった。

第19話をお読みいただき、ありがとうございました!


ついにライコスの正体が判明しました。敵の回し者かと思いきや、まさかの「母親たちの元仲間」という特大の身内枠。エスメラルダさんが前日に噴き出していた伏線も、ここで無事に回収となりました(笑)。


当初は警戒していたカイですが、ライコスの純粋な好奇心に触れるうちに、前世の「開発者オタクの血」が騒いでしまったようです。最初はボソボソ喋っていたのに、技術の話になると急に熱が入って早口になってしまうカイ、実にプログラマーらしいというか、親近感が湧いてしまいます。


そして、そんな熱中しすぎて限界を迎えたカイを察して、すかさず盾になってくれるシリル。頬を膨らませつつも、しっかりカイを気遣う彼女は、今回も最高の相棒ヒロインでしたね!


頼もしい味方(?)が加わった次回第20話では、いよいよあの気になる「転移魔法陣の解析」へと着手していきます。果たしてどんな仕様コードが隠されているのか……お楽しみに!


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