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ひきこもりの天才プログラマーは異世界で魔術言語をハックする  作者: 光命
Class.002 { lostWord = adventure.Explore(kai,cyril); }

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18/20

function.018(“切羽詰まって”);

崩れた壁の先にはわずかに空間がある程度あった。

その空間の床には魔法陣のようなものが描かれていた。


『あの魔法陣は転移か召喚の可能性が高いかも

 どんな仕組みなのかな。

 近くで見てみたい』


カイは目の前に出てきた魔物をそっちのけに魔法陣の方へ目を向けていた。


「おい、カイ!

 そんなもの気にしなくていいから、まずは目の前の魔物だろう!」


その言葉を聞いてカイは名残惜しそうな顔をしつつも、現れた魔物に対峙しはじめた。


「こいつは確か、メタルフントだったはず。

 こんな低級の遺跡に居る奴じゃねぇーな」


「えーっ!

 私たちじゃ相手にならないじゃないですか」


シリルはメタルフントを警戒してはいるものの、及び腰になっている。


「強いと言うか、ちょっと違う厄介さなんだ、こいつは。

 固い上に()()の魔術がほぼ効かないんだ」


ライコスは頭を掻いて困った顔をしている。


『普通なら「魔術が効かない」と言うはずだ。

 なのにあの人はわざわざ「通常の」と限定した。

 まるで、僕たちがそれ以外の魔術を持っていると知っているかのように―― 』


危険が迫っている状況でもカイはライコスの挙動をつぶさに観察していた。


『やっぱり何か隠している』


カイはメタルフントに用心しながらシリルの近くに行くと、小さい声で伝える。


「まだロストワードの魔術はダメだ」


「えっ……

 でも普通の魔術が効かないんじゃ……」


この場面では使わざるを得ない状況ではないかと考えていたシリルは、カイの指示に戸惑っていた。


「あの人の前で使うのはまだ危険だよ。

 絶対に僕たちに何かを隠している」


カイはライコスへの警戒心が解けていないようだった。

シリルはカイの気持ちを尊重しつつも


「私はそんなことないと思うけどな……

 でも、カイが言うなら、まずは普通の方を使うよ」


こそこそと二人が話をしているのを見ていたライコスは


「何度も言わせるなって!

 コイツは()()の魔術がほぼ効かない。

 まずは俺が削りに行くから、お前らは俺の支援をしろ!

 とりあえず隙を見てなんでもいいから魔術を撃て!」


そう言うと、短刀を構えてメタルフントへと詰め寄った。


ガッチーーン――


金属と金属がぶつかり合う音が部屋に響き渡る。

その音がするや否や、シリルが手を前に出し、魔術を詠唱する。


「ファイアボール!」


突き出した手のひらに素早く構築される魔法陣から、炎の弾丸が弾き出される。

カイはシリルの放った魔術を見て、保管する魔術を構築する。


「ウインドカッター!」


シリルの放ったファイアボールを追いかけるように、カイはウインドカッターを放った。

二つの術式を重ね合わさり、ファイアボールが橙色から青白い炎に変わる。

その青炎はメタルフントたちを包み込む。

ただ燃え盛る炎に悠然と構えているメタルフントは全身を震わせると炎をかき消してしまった。


「えっ!

 なんで効かないの?」


今までも、今回もこの組み合わせが効かなかった魔物は見たことがなかった。

シリルはメタルフントの様子に恐怖がよぎっていた。


「だから、言ったろ!

 あまり効かないって。

 ただ多少は効いているだろうが、撃ち続けるしかないんだよ」


ライコスはそう言いながら、ひたすら2頭を攻撃し続けている。

シリルもその様子を見て、気を取り直して魔術を撃ちはじめた。

あまり効かなくても、少しでもライコスの助けになればと。


その様子を見てカイは悩んでいた。

懸命に戦う二人に、このままロストワード魔術を封印していて良かったのだろうかと。


通常の魔術は効きにくいという話だが、基本の火・水・風・土、それに光と闇、この6属性のことをさすのだろう。

ロストワードでこの基本属性を組み合わせて作った魔術なら効くかもしれない。

メタルというぐらいだし、固いところを見ると金属系なのだろう。

それであれば……


考えて動きを止めていたカイにライコスの一喝が飛ぶ。


「何をちんたらしているんだ、カイ!

 お前もさっさと手を動かせ!」


ビクンとしたカイは慌てて水の魔術を放ち始める。


しばらく三人で攻撃してはいるものの、魔物はなかなか倒れない。

ただ魔物からの攻撃は単発で、きちんと対処しておけば問題ないレベルだった。

しかし、当たると致命傷になる力はあった。


効いているのか効いていないのか分からない感覚。

そして攻撃をし続けなければならない状況。

さらに相手の攻撃への警戒。


三人の疲労は段々と色濃くなっていった。

その中でもシリルの疲労は濃かった。

魔力はふんだんにあるが、通常の魔術には繊細なコントロールが必要だった。

一発一発に神経をすり減らしながら魔術を撃っている。

ただ撃つたびに徐々に精度も下がっていき、限界も近づいている様子を見せている。


『ライコスさんを警戒しないといけないけど、それは生きて帰ってのこと。

 そろそろロストワードを解禁しても……』


カイはいろいろと考えを巡らせたことで、手が止まっていた。

その隙をメタルフントは見逃さなかった。


グォーー――


前足を大きく振り上げ、その爪がカイへと向かっていく。


「カイ!

 くっ、間に合わねぇ」


ライコスが気づいて向かおうとしたが、とても間に合う距離ではなかった。


『しまった……』


カイも気づくのが遅れ、魔術の起動が出来そうにない。

もうダメかと思ったその時


バリバリバリバリーーン――


轟音と共に稲光が部屋中を走った。

その光は青白く光り拡散したかと思うと再び集まり、メタルフントに向かっていく。

大きな稲妻となった光は目を開けられないほどの光を放っている。


キャイーン――


メタルフントは断末魔と共にカイの目の前に倒れ込んでいた。

もう1頭もその場で息絶えていた。


「カイ、大丈夫?」


シリルは駆け寄り、カイを心配してあちこちを確かめている。


「シリル……」


自分の判断の甘さと情けなさにカイの顔は険しくなっていた。

それを見たシリルは


「ごめん、使っちゃった」


申し訳なさそうな顔をして謝ってきた。


「いや、ごめん、そうじゃなくて……

 僕こそごめん。

 判断が遅くなっちゃって」


「でも……」


今にも泣きそうな顔をするシリルに、カイは頭を引き寄せるとトントンと背中を叩くのだった。

シリルはカイの胸で涙を拭き、顔を上げた。

その顔は満面の笑みだった。


シリルの笑顔を見てホッとしたカイだった。


『シリルに心配かけちゃったかな。

 次からは、ちゃんと判断しないと……』


カイはシリルを抱きしめながらそう思っていた。

しばらくシリルが落ち着くまでこのままでいようと考えていたが、ライコスがいたことを思い出す。

パッとシリルの肩を持ち引き離すと、ライコスの方を向いた。


ライコスはペタンと座り込んで呆気にとられていた。

いつも何かを隠すように鼻を触っていたライコスの手が完全に止まっている。

その目には、隠し事すら忘れるほどの戦慄が浮かんでいた。


「なんだったんだ……あれは……」

第18話をお読みいただきありがとうございました!

今回はカイの危機に、シリルが約束を破ってロストワードを解禁する、最高に熱いバトル回でした!


【今回の見どころ】

◆ライコスの「意味深な一言」

通常の魔術が効かないメタルフントに対し、わざわざ「『通常の』魔術」と言い放ったライコス。

危険な戦闘中にもかかわらず、その言葉の違和感を瞬時に見抜き、警戒を強めるカイの鋭さが光ります。


◆ジリジリと削られていく二人

ライコスへの警戒からロストワードを封印し、通常の術式(ファイアボール×ウインドカッター)を組み合わせて応戦する二人。

しかし、手加減や調整に繊細なコントロールが必要な通常魔術は、シリルの精神と体力を着実に削っていき……。


◆ロストワード『ライトニング』の圧倒的威力!

カイのピンチに、シリルが迷わず放った青白い稲光。それはこの世界の魔術には存在しないはずの凄まじい雷でした。

あれだけ固かったメタルフント2頭を、文字通り一瞬で消し飛ばしてしまいます!


危機は去りましたが、いつも何かを隠すように鼻を触っていたライコスの手が、完全に止まっています。

隠し事すら忘れてペタンと座り込み、戦慄するベテラン冒険者。

この規格外の威力を前に、彼は一体何を語るのか――?


次回、第19話は「答え合わせ編」です!

ロストワードのこと、そしてライコスが隠していた真実がいよいよ明かされます。


「二人のやり取りにニヤニヤした!」「ライコスのリアクションが最高!」と思ってくださった方は、ぜひブックマークや評価で応援していただけると、執筆の大きな励みになります!

どうぞよろしくお願いいたします!

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