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ひきこもりの天才プログラマーは異世界で魔術言語をハックする  作者: 光命
Class.002 { lostWord = adventure.Explore(kai,cyril); }

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15/20

function.015(“メタキリタス”);

しばらく乗合馬車に揺られると、大きな外壁に囲まれた街が見えてきた。

カイたちの最初の目的地、メタキリタスである。

入場門を潜り抜けるといろいろな露店が建ち並ぶ道を横切っていく。

その露店の中には古い石板や怪しい道具を売り出す店もあった。

遺跡から発掘されたであろう品々が、いかにも遺跡の街という雰囲気を漂わせる。


「いーっぱいお店あるね」


馬車の中からキョロキョロと周りを見渡すシリル。


「……そうだね」


カイはシリルをちらっと見た後に、また顔を覆い隠すように本を読み始める。

活気づく市場に華やかさはあるが、カイにとっては居心地があまり良くない。


『さっさとやることやって、静かなところでゆっくりしたい』


賑やかな人々の声も雑音にしか聞こえない。

大きくため息をついたカイは雑音を振り払うように本に集中しはじめた。


街の中心地にある馬車の停留所へ着いたカイとシリルは、御者にお礼を言うと、冒険者ギルドに向かった。

メタキリタスの遺跡に入るための許可と、同行者の依頼を出すためである。

さきほど通った市場を抜けて、しばらく歩くと、立派な建物が見えてきた。


冒険者ギルド・メタキリタス支部――


「なんか私たちの街のギルドよりすごく大きいね。

 なんだか緊張しちゃう」


「そんなこと言わないでよ……

 シリルが緊張するなら僕はもっと緊張しちゃうよ」


扉の間で二人して大きく息をはき、意を決して扉を開ける。


ギギギギ――


扉の開いた先は、多種多様な冒険者が溢れかえり、活気に満ちていた。

その人の多さに圧倒されたカイは、フードを目深にかぶり直す。


二人は受付の列に並び、順番を待つことにした。

待っている間もシリルはあちこちを見回している。


「あっ、あの人、凄い剣持っているね」


「クエストもいっぱい貼りだされているね」


「あそこはご飯食べるところかな。

 後で行ってみようよ」


いろいろなものに興味が尽きないシリルは、待っている間ずっと興奮していた。

一方カイは、相変わらず静かに黙って、人々の視線から逃れるようにしていた。

ただ視線は俯き加減でも、人々の仕草や魔力の流れをずっと観察していた。


「はーい、次の方、どうぞ」


受付の女性が並んでいた二人を呼び出す。

ようやく番が回ってきたようだ。


「あの、遺跡の探索の許可をいただけませんか?」


シリルが受付の女性に話しかけた。

女性は二人をジロジロ見ている。

まだ子供に見える二人を怪しんでいる様子だった。


「えっと……

 お嬢ちゃんたちにはまだ早いと思うのだけど……」


「これでもギルドには登録してあります」


少し顔を膨らませたシリルはギルドカードを女性の前に出した。

受付の女性はシリルのギルドカードを確認し始める。

その様子をカイはフードの奥から受付の女性の仕草を見つめていた。


『彼女は僕たちの事をどう思っているのかな』


集中して魔力の揺らぎを確認する。

何もしないカイに対して、シリルは肘で腕をつつく。

それにカイはなんの反応も示さなかった。

集中していて気づいていないのだ。

シリルは何度も腕をつつくと、ようやく気づいたのか慌ててギルドカードを差し出した。


「えーっと……二人ともEランク?」


年齢の割には高いランクの二人にビックリした受付の女性は大声を出してしまう。

その声に周りの冒険者たちが一斉に二人に視線を集めた。


「あんな子供がE?」


「Gの間違いじゃないのか?」


冒険者たちの妬みが小声で聞こえてくる。

実際13歳という年齢からすると二人のランクは高い方だった。

多くは学校に行く15歳になる前後でようやくギルドに登録するぐらいであるから、当然である。


「故郷で親と一緒に魔物討伐していたの。

 親が高ランクで、駆け出しとしては強い魔物を倒していたので……」


シリルがEランクになった事情を説明する。

親の具体的なランクは言わなかったが、間違ったことも言っていない。

シリルが説明している間も受付の女性の様子を伺うカイ。


『この人には大きな悪意は感じない』


そう感じつつも、警戒心は怠らず、ずっと観察を続けていた。

やがてシリルの説明が終わり、受付の女性は理解をしてくれたようだった。


「遺跡の探索の許可はEであれば問題ないのだけど……

 お姉さん、ちょっと心配だわ」


どうやら、遺跡への立ち入りは問題ないようだ。

しかし、若い二人ということもあって探索中に何かあってはと心配をしているようだ。


「ありがとうございます。

 そういう風に言われるだろうと母からも言われています。

 なので、案内というか同行者の依頼が出来ないかと思っています。

 依頼料はあまり多く出せませんが……」


シリルはテキパキと話を進めていく。

受付の女性も、それならばと依頼の紙に条件などを記入する。


「私が責任持って選んであげるわ。

 変な冒険者もいるからね」


「ありがとうございます。

 何から何まで……」


シリルはペコッと頭を下げた。

その姿を見てカイもお辞儀をした。


「私は、ゼニアよ。

 ちょっと報酬としては厳しいかもしれないけど、依頼を出しておくわ」


そう言うと、笑顔で二人を見送ってくれた。


それから数日が経った――


カイとシリルは冒険者ギルドへ向かった。

ゼニアさんから泊っている宿屋に連絡があったからだ。

どうやらこの条件で引き受けてくれるという冒険者が出てきたとのことで、顔合わせをすることになった。


「どんな人なのかな?

 ゼニアさんもこんな人が引き受けてくれることは滅多にないって言っていたし」


「……そうだね。

 信頼できる人ならいいんだけど……」


カイは初めて会う冒険者に気が気でない。

遺跡へ入るのも1日やそこらで終わる訳ではない。

長く一緒に過ごすことになる。

知らない人と長い時間過ごすことに大きな不安を感じていた。


それに、ロストワードのことも見せることになる。

母たちに、遺跡に入る場合は同伴者をつけろと言われてはいるものの、その人にロストワードを見せていいかは悩んでいた。

もし信用できない人だったら……

そう考えるとその人物の人となりを見定めないといけないと感じていた。


そんなことを考えながら、冒険者ギルドへ向かっていた。


「こんにちは!」


シリルは元気よくギルドの扉を開けた。

今日も多くの冒険者がいたギルドの中の視線を一気に集める。

カイはその視線をブロックするようにフードで顔を覆い隠した。


「あっ、シリルちゃん!

 こっちこっち」


ゼニアが二人を手招きして呼んでいる。

その横には小柄な男が一人立っていた。

銀髪の頭に、耳がピョコっと立っている。

グレーと白が重なり合った尻尾を振っていた。


『銀狼族か……』


カイは目線はあわせられないものの、その男の観察をし始めた。


「シリルちゃん、この方が伝えていた人。

 元Sランクパーティーの冒険者のライコスさん。

 今は一人で活動されているの。

 個人としてもSランクで、このギルドのエースよ」


「えーっ、そんな凄い人なんですか?

 そんな凄い人にこんな報酬で頼めないですよ!」


シリルは頭をブルブル震わせて拒否していた。


「大丈夫大丈夫、それも了承済みだから」


ゼニアはシリルの慌てっぷりに笑っていた。

カイはその間も紹介されたライコスをずっと観察してた。


『Sランク……母さんたちの元々のランクと一緒だ。

 立った姿勢も無駄がない。

 魔力の流れも乱れがない。

 母さんたちと同じかそれ以上の実力はありそう』


「よぉ、俺がライコスだ。

 この街で食うに困らない程度に仕事をしている」


自己紹介をサラっとしたライコスはそのままカイのところへ向かう。


「あんちゃんも、さっきからそんなにジロジロ俺を見て。

 そんなに珍しいか?」


「……」


カイはライコスを観察していたことを見透かされて動揺した。


『気取られないように見ていたつもりだったけど、それも分かってしまうなんて……』


ただ動揺したことを見せたくないカイは、勇気を振り絞り顔をあげて会釈をした。

その姿を見たシリルは逆にビックリしていた。


「カイ……」


とはいえ、カイをそのままにしておくと何かとボロが出そうと思ったシリルは慌ててカイとライコスの間に入った。


「あっ、そうそう。

 ライコスさんは、なんでこの依頼受けてくださるんですか?」


話題を逸らそうと依頼を受ける経緯を聞き始めた。


「まぁ……それは……ちょっと面白そうだしな。

 たまには若い奴と行動するのも新鮮だし」


「へぇ……そうなんですね」


シリルとライコスが会話している最中も言動や仕草を観察していた。


『今の動揺……ライコスという男の言動には、いくつか"未定義の挙動"がある。

 Sランクがわざわざ低報酬の依頼を受ける理由が「面白そうだから」というのは、

 あまりにも論理的じゃない』


少し疑念を持ったカイ。

しかし、ゼニアさん曰く


「ライコスさんは、人柄も良くて実力もあるし、これ以上の冒険者はいないかな」


とのことで、他の冒険者の紹介は厳しそうだった。

そういったこともあり、遺跡探索にはライコスに同行してもらうことになった。



「……じゃ、明日の朝、北門で待ってるぜ。寝坊すんなよ、お二人さん」


ライコスはひらひらと手を振りながら背を向けた。

その際、一瞬だけ、慈しむような、あるいは懐かしむような視線をシリルに投げかけたのを、カイは見逃さなかった。


『あの人、大丈夫かな……

 実力は問題ないけど、何か隠していそう……』


ライコスを見つめるカイの顔は少し表情が強張っていた。


「カイ、どうしたの?

 怖い顔しちゃって」


その表情を見たシリルはカイを覗き込んだ。


「……いや、なんでもない。

 ただ、あの人を信じていいのか、まだ判断がつかない」


「大丈夫だよ。

 ゼニアさんも保証してくれたし、何よりあの人……悪い人には見えなかったもん」


楽観的なシリルの言葉に、カイは小さく頷いた。


『信じるのは、行動を見てからだ。

 もしもの時は……』


夕暮れに染まるメタキリタスの街を歩く二人。

シリルはウキウキした表情で宿への道を歩いていた。

カイは明日から始まる探索に、期待よりも強い緊張を感じているのだった。

今回の第15話では、新しい舞台「遺跡の街メタキリタス」に到着しました!

そして、物語の鍵を握る(?)新キャラクター、Sランク冒険者のライコスが登場です。


【今回のエンジニア的みどころ】

カイの観察眼が冴え渡っています。

初対面のライコスに対し、「魔力のパケット」を解析するかのようにじっくりと観察するカイ。しかし、Sランクの実力者は、その視線すらも「検知」してしまうようです。

カイが感じたライコスの「未定義の挙動(論理的ではない理由での依頼受託)」。これが単なる気まぐれなのか、それとも背後に別の「仕様」が隠されているのか……。


人見知りで慎重なカイと、元気いっぱいのシリル、そして食えないSランク冒険者のライコス。

このデコボコな「パーティ構成」で、いよいよメタキリタスの遺跡攻略が始まります!


次回の第16話からは、ついに遺跡へ。

そこで待ち受けるのはお宝か、それともバグ(魔物)か。

引き続き、二人の旅路を見守っていただけると嬉しいです!

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