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ひきこもりの天才プログラマーは異世界で魔術言語をハックする  作者: 光命
Class.001 { kai = new AnotherWorld(); }

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13/14

return.013("二人の旅立ち");

シリルはいつも通りの朝を迎えていた。

光が差し込む窓を開けると心地よい風が吹き抜ける。


いつもと違うとすれば、両親に条件付きではあるが、カイとの旅の許可をもらったこと。

昨日のことを思い出すと、自然とにやけてしまう。


「あっ、そうだ。

 持っていくものとかどうするんだろう。

 カイに聞かないと」


そう思い立つと、急いでカイの家に向かった。

カイの家までの道も、心なしかいつもと違う気がした。

ワクワクした高揚感が沸き上がって、自然とスキップになっていた。


カイの家に入ると、リビングにはクレアが居た。


「おはよう、クレアちゃん!

 朝からご機嫌だね」


いつもの笑顔でシリルを向かい入れてくれた。


「おはようございます、クレアさん。

 カイはどこに居ますか?」


リビングを見回してもカイの姿がなかったので、確認をする。

すると、クレアは少し不満そうな顔をして


「カイね……

 カイなら昨日から部屋にこもりっきりだよ。

 なんでも、旅立つ前にやらなきゃいけないことが出来たって」


「旅立つ前に?

 なんだろう……」


不思議に感じたシリルは、何をしているのかカイの部屋に行こうとした。

しかし、クレアが手を掴み、首を振った。


「集中したいから誰も近づけるなってさ」


何かに没頭している時に部屋へ行くと不機嫌になるカイ。

そのことを知っているシリルはリビングにとどまった。


「そっか……

 でも、どうしよう。

 旅の準備って何すればいいんだろう」


「あぁ、旅の準備なら任せて。

 うちの旦那もしょっちゅう出かけているし、慣れたものさ」


クレアはそう言うと、シリルに旅支度に必要なものをいろいろと教えてくれた。


「ありがとうございます。

 これで準備を進めます。

 カイの分は……」


没頭しているカイはそこまで気が回らない。

旅立つ当日まで準備してないってこともありえるかもしれない。

そう考えたシリルはカイの分も準備しようとしたのだが


「カイの分はいいよ。

 私がやっておくから。

 そこまでは迷惑かけられないよ」


クレアがうちの子のだしと、準備を進めるとのことだった。

シリルは、カイの手伝いが出来ず残念に思い、顔を曇らせた。

しかし、あまりしゃしゃり出るのもと思って


「では、お願いします」


と言い残して、カイの家を出ていった。


それから数日はシリルも準備に追われた。

その間、カイの家に行くことも出来ずにいた。

カイもずっと部屋に籠り、何かに没頭し続けていた。

クレアが扉越しに呼びかけても、返ってくるのは機械のようなカタカタした音だけだった。

食事の時も部屋からは出てくるものの、食べ終わるとまたすぐに戻ってしまう。

そんなカイの姿を見ていたクレアは苦笑いする以外なかった。


そして、旅立ちの日を迎えた――


「もう、カイは何しているの?」


シリルはふくれっ面をしていた。

集合場所は街はずれにあるいつもの実験場だった。

そこに家族と共に来たのだが、カイの姿がない。


「もうすぐ来るでしょう。

 少し待ちましょうよ」


エスメラルダはのんびりと構えるようにとシリルを諭す。


「だって、ここに集合って言ったのはカイだよ」


昨晩夜遅くにカイが訪ねてきて何事かと思っていたら、


「いつもの実験場に朝集まって、そこから旅立とう」


と一言だけ話して、すぐに帰ってしまった。

数日ぶりに会えたというのに、そそくさと帰ってしまったカイ。

シリルはその早さに呆気に取られてしまい、一言も話すことが出来なかった。

なおかつ、それで遅刻である。

その時のことも頭の中に浮かんできて、余計に腹が立っていた。


「カイくんはこれから苦労しそうだな」


ラルフがボソッとエスメラルダに耳打ちする。

その言葉にエスメラルダは穏やかな微笑を返していた。


そこにカイとクレアが走ってきた。


「ごめんなさい、遅くなってしまって」


カイはシリルに素直に謝った。


「もう、カイでしょ、時間も場所も決めたのは。

 それぐらい守ろうよ」


まるで保護者のように叱るシリルに、カイは平謝りだった。


「本当にごめん。

 気をつけるよ」


「はいはい、この話は終わり!

 こんなことで怒っていたら、先が大変だよ」


クレアはいつまでも怒っているシリルの肩をポンと叩いた。

その言葉に我に返ったシリルは、苦笑いして舌をペロッとした。


「それにしても、ここを旅のスタートにしたのは、何かあるのでしょ」


エスメラルダはロストワードのスタートの地であるこの実験場から旅立つことに意味があるのではないかと思っていた。


「はい。

 ここが僕たちの始まりの地でもありますし……」


カイもロストワードの研究の地から旅立つことが重要だと考えていたようだった。

ただ、それ以外にも何かあるようだった。


「何か言葉を濁しましたね。

 その他にもあるようですわね」


その細かい言い回しに気づいたエスメラルダがさらにカイに確認をした。


「あとは……

 そうですね、最後に実験をと思いました」


と言うと新しい魔法陣をシリルとエスメラルダに手渡した。


「何これ?」


不思議そうに見つめたシリルがカイに問いかけた。


「まぁ、少し待ってて。

 エスメラルダさん、少し離れたところに移動してもらえますか?」


首を縦に振ったエスメラルダは、少し離れたところにある建物に行った。


「じゃあ、お互いこの魔法陣に魔力を流してください」


カイの合図で二人が同時に魔力を流し始める。

緑と白の光が入り混じった魔法陣に次々と魔力が注がれる。

二つの光が重なったり離れたりしながら、魔法陣を覆いつくしていく。

魔法陣の光が揺らめき、風がざわめき、空気がふっと透き通った瞬間――

光の中にエスメラルダの姿が現れた。


「えっ?

 お母さん?」


ビックリしたシリルが思わず声が出る。

すると


『今、シリルが喋った?』


姿だけでなく声までこちらに届いていた。


「どうやら上手くいったかな。

 エスメラルダさん、そちらにもシリルの顔と声が届いていると思いますが……」


映し出されたエスメラルダにカイが問いかけると


『そうですね。

 しっかりと見えてますし、聞こえてますよ』


と返答があった。


「これって……」


シリルは呆気にとられたまま、エスメラルダの姿を見ていた。


「定期的な連絡は手紙だと時間かかるし……

 何かないかと考えていたら、ふと思いついて……

 これなら、姿も見えるし声も聞こえる。

 お二人にとっても安心かなと思って。

 シリルも少し寂しそうにしていたし、それがずっと頭から離れなかったんだ。

 これはライトリンクと名付けて……」


事情を説明しているカイにシリルは思わず抱きついた。

その目からは涙が溢れていた。


「ありがとう、カイ!

 正直お父さんやお母さんの姿が見られなくなるのは寂しいと思っていたの。

 これで見ることは出来るし、声も聞けるなんて……」


エスメラルダも画面越しに話しかける。


『何かやっているって聞いたけど、これを創っていたのね。

 そんなに気を遣わなくてもいいのに……』


その声も少し涙ぐんでいるようだった。

シリルの隣にいたラルフは嬉しさのあまり号泣していた。


「あらあら、出発前から見せつけちゃって」


クレアがカイを茶化すように言う。


「ち……違うって。

 シリルも離れてよー」


クレアの言葉にカイの顔と耳は真っ赤に染め上がっていた。

無理やりシリルの身体を離そうとするも、がっちり掴んだシリルを離すことが出来なかった。


シリルたちが落ち着いたところで、改めて二人が出立の挨拶をした。


「気をつけて行ってきます」


「お父さん、お母さん、また連絡するね」


ラルフはまだ未練たらたらのようで、押し黙っていた。

そんな父にシリルが歩み寄り、無言のまま笑顔で手を握った。

ラルフは何かを言おうとしたのだが、言葉を発すると涙が溢れてきそうだった。

そのためか、ただ手を握ることしかできなかった。

一方、クレアとエスメラルダは


「ロストワードばかりにのめり込まないようにね。

 無理しちゃだめよ」


「旅は危ないことが多いから、引くところは引くのよ。

 あと、ライトリンクで必ず連絡しなさいね」


二人に対して、元冒険者としてのアドバイスを送っていた。

それを聞き終わった二人は、手を振りながら歩き始めた。

家族はその姿が見えなくなるまで手を振り返して送っていたのだった。

第13話までお読みいただきありがとうございます。

そして、このGW集中更新にお付き合いいただいた皆様、本当にありがとうございました!


物語は一つの大きな節目を迎え、カイとシリルはついに住み慣れた街を後にしました。

旅立ちの直前、カイが完成させたのは「遠く離れた人の声と姿を届ける」新魔術『ライトリンク』。

物理的な距離は離れても、心は繋がっている――。

そんなエンジニア(魔術師)なりの「答え」を持って旅立つ二人の姿に、執筆しながら私自身も胸が熱くなりました。


さて、GWの特別更新はこれにて完結となります。

明日からは、いよいよ新しい土地での冒険の新章が始まります。

二人の探求の旅は、まだ始まったばかりです!


【読者の皆様へお願い】

もし「二人の門出を応援したい!」「ライトリンク、ナイスアイデア!」と思ってくださった方は、ぜひ作品への「評価」や「ブックマーク」をいただけますと幸いです。

皆様の応援が、次の物語を創るための最大の魔力エネルギーになります!


次回の更新からは週1更新のスケジュールに戻りますが、引き続き二人の冒険を見守っていただければ嬉しいです。

それでは、新章でお会いしましょう!

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