救出
月が、雲に、隠れた、その瞬間。
「……今だ」
ユノが、小さく、合図を、送る。
事前に、決めていた、配置に、五人は、素早く、散った。
セファルとダレンが、小屋の、正面。
ガインとレナが、裏手。
ユノとティナが、側面から。
「――行くぞ」
ユノの、合図と共に、一斉に、動き出す。
正面の、護衛二人に、セファルが、音もなく、近づく。
気配を、察して、振り向いた、護衛の、一人が、口を、開く前に。
セファルの、剣の、峰打ちが、首筋に、叩き込まれた。
崩れ落ちる、体を、ダレンが、素早く、支え、音を、立てないよう、地面に、横たえる。
「……もう、一人」
もう一人の、護衛が、異変に、気づき、剣を、抜こうとした、瞬間。
ダレンの、拳が、鋭く、顔面に、叩き込まれた。
短い、呻き声と共に、その場に、崩れ落ちる。
「――何事だ!」
小屋の中から、声が、上がる。
「気づかれたか」
ガインが、舌打ちする。
「構わない、突入だ!」
レナが、素早く、杖を、構える。
「風よ、道を、切り開け――!」
裏口の、扉に向けて、風の、刃が、放たれる。
木製の、扉が、大きな、音を立てて、弾け飛んだ。
「今だ!」
ガインが、真っ先に、飛び込む。
中では、残りの、護衛三人が、既に、剣を、抜き、身構えていた。
「――侵入者だ! 守れ!」
一人が、叫ぶと同時に、正面からも、セファルとダレンが、突入する。
小屋の中は、一気に、混戦と、化した。
「くっ……!」
ガインが、一人の、護衛と、剣を、打ち合わせる。
その、隙を、突くように、別の、護衛が、レイナルドの、拘束された、椅子に、駆け寄ろうとした。
「させない――!」
ユノが、素早く、割り込み、剣で、その、進路を、塞ぐ。
「お前は……!」
護衛が、驚いたように、目を、見開く。
「レイナルドさんは、渡さない」
鋭く、踏み込み、剣を、打ち合わせる。
金属音が、小屋の中に、響き渡った。
「マルコス様は……!」
ティナが、鋭く、周囲を、見渡す。
だが、その、姿は、既に、見当たらなかった。
「――逃げたか」
セファルが、低く、舌打ちする。
「奥だ、裏口が、あるはずだ」
ダレンが、素早く、周囲を、確認する。
小屋の、奥、隠し扉のような、小さな、出口が、僅かに、開いていた。
「……追うより、まず、レイナルドさんを」
ユノが、剣を、振るいながら、判断する。
護衛との、攻防が、続く中。
ティナが、素早く、レイナルドの、拘束を、解こうと、駆け寄った。
「レイナルドさん、大丈夫ですか」
「……お前たちは」
レイナルドが、驚いたように、目を、見開く。
「来て、くれたのか」
「今、外します」
縄を、慎重に、解いていく。
その間も、周囲では、まだ、剣戟の音が、響いていた。
「ぐああっ……!」
ガインが、相対していた、護衛の、剣を、弾き飛ばし、そのまま、峰打ちで、地に、伏せさせる。
セファルとダレンも、それぞれ、相手を、次々と、無力化していった。
残るは、一人。
ユノと、剣を、交えていた、護衛だった。
「……もう、勝ち目は、ない」
ユノが、鋭く、言う。
「剣を、収めろ」
護衛は、しばらく、抵抗を、見せたが。
周囲を、見渡し、既に、仲間が、全員、倒れていることに、気づいた。
「……くそ」
剣を、地面に、投げ捨てる。
「降参だ」
その、言葉と共に、小屋の中の、戦いは、終わりを、迎えた。
「……レイナルドさん、無事、ですか」
ティナが、最後の、縄を、解き終える。
「ああ」
レイナルドが、痛む、体を、擦りながら、立ち上がろうとする。
「助かった」
「本当に」
その、声には、深い、安堵が、滲んでいた。
「マルコスは」
セファルが、鋭く、周囲を、見渡す。
「奥の、隠し扉から、逃げたようだ」
「追うか?」
ダレンが、聞く。
ユノは、しばらく、考えてから、首を、振った。
「……いや」
「今は、レイナルドさんを、安全な、場所に」
「連れて行くのが、先だ」
「マルコスは、また、必ず」
「動く」
「その時に、備えよう」
セファルが、頷く。
「……賢明な、判断だ」
小屋の外に、出ると、月が、再び、雲間から、姿を、現していた。
その、光が、静かに、五人と、救出された、レイナルドを、照らしていた。
「……ありがとう」
レイナルドが、改めて、深く、頭を、下げる。
「私一人では、とても」
「抵抗、しきれなかった」
「無事で、よかったです」
ユノが、静かに、答える。
「これで」
ガインが、少し、安堵した、表情で、言う。
「三つ目の、鍵は」
「守られた」
「だが」
セファルが、静かに、続ける。
「マルコスは、まだ、諦めていない」
「満月の夜まで」
「あと、一日」
「気を、抜けない」
その、言葉に、全員が、静かに、頷いた。
夜の、山道を、レイナルドを、支えながら。
一行は、ヘルメリアへと、戻る、道を、歩き始めた。
満月の夜が、確実に、近づいていた。




