足跡
足跡は、屋敷の裏庭から、塀の外へと、続いていた。
「……ここから、外に」
ダレンが、慎重に、地面を、確認しながら、言う。
「複数人分の、足跡だ」
「抵抗した、跡もある」
セファルが、低く、言う。
土が、乱れ、引きずられたような、跡が、残っていた。
「無理やり、連れて、行かれたのか」
レナが、痛ましげに、呟く。
「この方向は」
ユノが、足跡の、向かう先を、見据える。
「……街の、外、東の方角」
ガインが、地図を、思い浮かべながら、言う。
「昨夜、マルコスが、向かった、遺跡と、同じ方向だ」
「もう一度、あそこに、戻ったのか」
「あるいは」
セファルが、慎重に、言葉を、選ぶ。
「別の、拠点が、あるのかもしれない」
「遺跡の、周辺に」
「私たちが、まだ、知らない、場所が」
その、可能性に、全員が、緊張を、強めた。
「急ごう」
ユノが、すぐに、判断する。
「馬を」
再び、五人は、馬に、飛び乗り、東の、山道へと、駆け出した。
昨夜、通ったばかりの、道。
だが、今度は、違う、緊張感が、漂っていた。
「……足跡、ここで、途切れてる」
遺跡の、少し手前で、ダレンが、馬を、止める。
「脇道に、逸れたのか」
周囲を、注意深く、見渡すと、確かに、獣道のような、細い、道が、森の中へと、続いていた。
「……ここを、進むしか、ないな」
ユノが、静かに、言う。
馬を、降り、慎重に、徒歩で、道を、進んでいく。
しばらく、歩くと、木々の合間に、小さな、崩れかけた、建物が、見えてきた。
「……見張り小屋、か」
セファルが、低く、呟く。
「昔、この一帯を、管理していた、ものかもしれない」
近づくと、複数の、人の気配が、感じられた。
「……いる」
ティナが、小さく、囁く。
木陰から、慎重に、様子を、窺う。
小屋の前に、護衛が、二人。
そして、中から、微かに、声が、聞こえてきた。
「……署名を、しろと言っている」
レイナルドの、声だった。
疲れ切った、だが、まだ、確かな、意志を、持った声。
「それが、何を、意味するか」
「知らないとは、言わせない」
マルコスの、声も、聞こえてきた。
「お前が、署名すれば」
「三つ目の、鍵として」
「儀式に、名を、連ねることになる」
「本人の、意志に、関係なく」
「その、力は、発動する」
「私は、署名しない」
レイナルドの、声は、揺るがなかった。
「たとえ、脅されても」
「どうやら、優しい、説得は、無駄なようだ」
マルコスの、声に、冷たさが、増す。
「時間を、かければ、いい」
「満月の夜まで」
「まだ、二日ある」
「その間に、お前の、決意など」
「いくらでも、崩せる」
その、不穏な、言葉に、木陰で、聞いていた、五人の、表情が、険しくなった。
「……今、助けに、入るべきか」
レナが、小声で、聞く。
「護衛の、数が、分からない」
ダレンが、慎重に、言う。
「小屋の中に、何人、いるか」
「無理に、突入すれば」
「レイナルドが、危険に、晒される」
ユノは、しばらく、考え込んだ。
「……様子を、もう少し、探ろう」
「小屋の、周りを、慎重に、回る」
五人は、身を、屈めながら、小屋の、周囲を、慎重に、確認していく。
窓から、そっと、中を、覗くと、レイナルドが、椅子に、縛り付けられている、姿が、見えた。
マルコスは、その、前に、静かに、立っている。
護衛は、小屋の中に、三人。
外に、二人。
合わせて、五人。
「……数は、把握した」
セファルが、小声で、報告する。
「五対五、か」
ガインが、静かに、言う。
「悪くない、条件だ」
「だが」
ユノが、慎重に、言葉を、続ける。
「マルコスが、レイナルドを、人質に、取れば」
「厄介なことになる」
「一気に、片をつける、必要がある」
セファルが、低く、言う。
「合図と、同時に」
「レイナルドの、確保を、最優先に」
作戦を、慎重に、詰めていく。
月明かりが、雲間から、覗いた、その時。
小屋の中から、マルコスの、声が、再び、響いた。
「……明日には」
「もう一つ、手段を、試す」
「お前が、話さずとも」
「引き出す、方法は、他にもある」
その、不穏な、言葉に、レイナルドの、表情が、微かに、強張るのが、窓越しに、見えた。
「……もう、待てない」
ユノが、低く、呟いた。
剣の柄に、手を、かける。
月が、再び、雲に、隠れる、瞬間を、待って。
五人は、静かに、行動を、開始した。




