↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
[5000PV突破!] 始まりの村と小さな竜  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
69/74

正義

木々の陰から、五人は、息を潜めて、様子を、窺った。

「……ゾルドが、なぜ、ここに」

ガインが、小声で、呟く。

「セファルが、押さえていたはずじゃ」

「何かが、あったのかもしれない」

ユノの声も、緊張で、硬くなっていた。

遺跡の入り口、灯りに、照らされる中。

マルコスと、ゾルドが、静かに、言葉を、交わしていた。

距離が、遠く、内容までは、聞き取れない。

「……もう少し、近づこう」

ダレンが、慎重に、言う。

「音を、立てるなよ」

五人は、木々の間を、身を屈めながら、少しずつ、遺跡へと、近づいていった。

やがて、途切れ途切れに、声が、聞こえ始める。

「……本当に、これで、いいのか」

ゾルドの声だった。

どこか、迷いを、含んでいるように、聞こえた。

「今更、何を、言っている」

マルコスの声は、冷静だった。

「お前も、同意したはずだ」

「この、世界の均衡を」

「本当の意味で、正すために」

「だが、レイナルドは」

「協力しないと、言っている」

「あの男は、臆病なだけだ」

マルコスの声に、微かな、苛立ちが、滲む。

「三つ目の鍵が、なくても」

「方法は、ある」

「……方法?」

「フェリオンの、巻物さえ、手に入れば」

「二つの鍵でも」

「不完全ながら、封印の、一部は、緩められる」

「それだけで、十分だ」

その言葉に、木陰で、聞いていた、ユノたちの、顔色が、変わった。

「……巻物を、狙ってる」

ティナが、小さく、震える声で、言う。

「二つの鍵だけでも、実行するつもりなのか」

ガインが、低く、唸るように、言う。

「危険すぎる」

「不完全な、封印解除が」

「何を、引き起こすか」

「分からない」

その時。

マルコスが、ふと、周囲に、視線を、向けた。

「……誰か、いるな」

低く、鋭い声。

護衛たちが、一斉に、警戒を、強める。

「……気づかれた」

ダレンが、小さく、舌打ちする。

「隠れていても、仕方ない」

ユノが、静かに、立ち上がった。

「……出よう」

木陰から、姿を、現す。

灯りの下に、五人が、揃って、姿を見せた。

「……ダレン」

マルコスの目が、鋭く、細まる。

「お前が、なぜ、ここに」

「マルコス様」

ダレンが、前に、進み出る。

「今すぐ、お引き取りください」

「これは、危険すぎる」

「危険は、承知の上だ」

マルコスの声は、揺るがなかった。

「お前には、分からないだろうな」

「この街が、この五年」

「どれほど、腐敗してきたか」

「派閥同士の、争い」

「裏で、蠢く、闇商人」

「表向きの、平和の裏で」

「多くのものが、失われてきた」

「だからと言って」

ユノが、前に、進み出る。

「封印を、解くことが」

「解決に、なるとは、思えません」

「お前に、何が、分かる」

マルコスの目が、鋭く、ユノを、射抜く。

「竜の、力があれば」

「この街を、根本から、変えられる」

「腐敗した、商業ギルドの、仕組みごと」

「作り直せる」

「それは、あまりに、危険な、考えです」

ガインが、鋭く、割って入る。

「竜の力は、暴走すれば」

「街どころか、この一帯、全てを」

「飲み込みかねない」

「制御できると、思っているんですか」

「ダリオスは、できると、考えていた」

マルコスが、静かに、答える。

「彼が、遺した、研究の、続きを」

「私が、引き継いでいる」

「ダリオス自身は」

「もう、この件から、退いています」

ユノが、指摘する。

「五年前に」

「己の、良心に、従って」

「なら、私が、代わりに、成し遂げる」

「彼の、意志を、正しい形で」

マルコスの言葉に、迷いは、なかった。

その、確固たる、信念が、逆に、恐ろしかった。

「……ゾルド」

ティナが、静かに、声を、かけた。

「あなたは、本当に、これで、いいの」

「私の、叔父さんを、騙してまで」

その言葉に、ゾルドの表情が、初めて、大きく、揺らいだ。

「……騙した、つもりは」

「なかった」

「ただ」

言葉が、詰まる。

「マルコス様の、考えに」

「共感する、部分があった」

「この街を、変えたいという、想いに」

「でも」

ティナの声が、震えながらも、まっすぐに、届く。

「間違った、方法で」

「多くの人を、危険に、晒すことは」

「本当に、正しいこと、なの」

ゾルドは、しばらく、答えられずにいた。

その、揺れる瞳が、内なる葛藤を、物語っていた。

マルコスが、苛立たしげに、声を、上げる。

「感傷に、浸っている、時間はない」

「巻物は、どこにある」

「フェリオンの元に、既に、ないことは」

「分かっている」

「セファルが、押さえたんだろう」

「なら、セファルから、奪う」

その、非情な言葉に、場の空気が、一気に、張り詰めた。

「そうは、させません」

ダレンが、剣に、手をかける。

「マルコス様、目を、覚ましてください」

「これは、もう」

「あなたの、望む、正義とは、違う」

護衛たちが、緊張した面持ちで、剣の柄に、手を、伸ばす。

一触即発の、空気が、遺跡の前に、満ちていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。