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[5000PV突破!] 始まりの村と小さな竜  作者:


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託す

フェリオンは、椅子から、ゆっくりと立ち上がった。

古い書棚の奥、一見、何の変哲もない、木製の飾り板に、手をかける。

小さく、力を込めると、カチリ、と音がして、板が、外れた。

その奥に、小さな空洞。

中には、革張りの、古びた巻物が、一つ、収められていた。

「……これが」

フェリオンが、慎重に、巻物を取り出す。

「私が、里から、持ち出したものだ」

机の上に、丁寧に、広げる。

古代エルフの文字が、びっしりと、記されていた。

ティナが、息を呑みながら、覗き込む。

「……読めるか?」

「一部だけ」

ティナが、慎重に、文字を追っていく。

「……『竜の血を、鎮める、三つの調べ』」

「『血、月、そして、意志』」

「調べ、というのは」

ユノが、聞く。

「儀式に使う、術式のこと、だと思う」

ティナが、慎重に、答える。

「単なる、封印の呪文じゃない」

「もっと、複雑な、条件が、揃う必要がある」

フェリオンが、頷いた。

「その通りだ」

「封印を、完全に、解くには」

「三つの、鍵となる、人物」

「そして、特定の、時期――満月の夜」

「さらに、封印の中枢にある、術式の、起動」

「その、全てが、必要になる」

「起動には、この、巻物が、必要ってことですか」

セファルが、鋭く、聞く。

「……そうだ」

フェリオンの声が、重くなる。

「巻物がなければ」

「たとえ、三つの鍵が、揃ったとしても」

「封印は、解けない」

その言葉に、部屋の空気が、少しだけ、緩んだ。

「……つまり」

ガインが、慎重に、言葉を選ぶ。

「この巻物さえ、守り切れば」

「最悪の事態は、防げる」

「理論上は、な」

フェリオンが、頷く。

「だが、油断は、できない」

「ゾルドが、既に、私の元を、突き止めている」

「次に、狙われるのは、時間の問題だ」

「もっと、安全な場所に、移すべきでは」

ユノが、提案する。

「どこが、安全だと、言うんだ」

フェリオンが、静かに、聞き返す。

「里に、戻すのは?」

ティナが、聞く。

「今更、戻せば」

「私が、また、罰を受けるだけだ」

「それに」

フェリオンが、首を振る。

「里に戻す道中、狙われれば」

「もっと、危険が、増す」

セファルが、しばらく、考え込んでいた。

「……ベタの、本部に、保管するのは、どうだ」

「厳重な、警備がある」

「セファル」

ガインが、鋭く、言う。

「ベタも、疑いの目から、完全に、逃れているわけじゃない」

「もし、内部に、裏切り者がいたら」

「その可能性は、承知している」

セファルの声は、揺るがなかった。

「だが、私は、自分の、直属の部下を」

「信頼している」

「限られた、人数だけで、守る」

フェリオンは、しばらく、セファルを、じっと見つめていた。

「……お前は」

「信用できそうだな」

「光栄です」

セファルが、微かに、口元を緩めた。

初めて見せる、柔らかな表情だった。

「だが、それでも」

フェリオンが、続ける。

「巻物だけを、守っても、意味がない」

「三つの鍵――」

「レイナルド、ダレン、ゾルド」

「彼らの、動向も、見張り続ける必要がある」

「特に、ゾルドだ」

「ダリオスの名を、騙ってまで」

「巻物を、狙っている」

「その、背後にいるのが、誰なのか」

「それを、突き止めなければならない」

ユノは、静かに、頷いた。

「……ゾルド本人に、接触するしかない、ってことか」

「危険だが」

セファルが、低く、言う。

「それが、一番、確実な道だ」

「彼が、今、どこにいるのか」

「まずは、それを、突き止める」

フェリオンは、巻物を、丁寧に、巻き戻した。

「……これを、託す」

セファルに、手渡す。

「頼んだぞ」

「必ず、守ります」

その言葉に、フェリオンは、深く、頷いた。

そして、ティナに、視線を、向けた。

「……お前が、無事で、本当に、よかった」

「私は、まだ、里に、顔向けできない」

「だが、いつか」

「この件が、片付いたら」

「一緒に、帰ろう」

ティナの目に、涙が、滲んだ。

「……うん」

小さく、頷く。

屋敷を後にする頃には、日が、すっかり、傾いていた。

新たな使命と、託された巻物。

そして、ティナと、叔父との、再会。

多くのものを、抱えたまま、四人と、セファルは、ヘルメリアの街へと、戻っていった。

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