ダレン
翌日、四人は、再び、イフリル商会の護衛依頼を探すことにした。
「都合よく、依頼があるかな」
レナが、冒険者ギルドの掲示板を、覗き込む。
「なければ、こちらから、口実を作るしかない」
ユノが、慎重に言う。
幸い、掲示板には、隣町への、別の依頼が貼られていた。
『イフリル商会、追加輸送、護衛募集』
「ちょうどいい」
すぐに、受付で、依頼を受理する。
翌朝、同じ荷馬車、同じロベルと、隣町へ向かうことになった。
「また、お前らか」
ロベルが、驚いたように、だが、歓迎するように言う。
「腕がいいと、評判だったからな」
道中、ユノは、慎重に、話を進めた。
「前回、お会いした、ダレンさんは」
「今も、隣町に?」
「ああ、いるはずだ」
「なぜだ?」
「少し、お話を、伺いたくて」
「ほう」
ロベルは、少し訝しげな顔をしたが、それ以上、深くは聞かなかった。
隣町に到着し、荷を降ろす作業が、一段落した頃。
ユノは、拠点となる建物へ、足を向けた。
「……何の用だ」
出てきたのは、ダレンだった。
鋭い目で、ユノを、値踏みするように見る。
「少し、お話を、伺いたいんです」
「レイナルド・ウィッシュさんから」
その名前を出した瞬間、ダレンの表情が、明確に、変わった。
「……レイナルドが、お前を?」
「はい」
「五年前の、資金のことで」
ダレンは、しばらく、無言で、ユノを見つめていた。
やがて、周囲を、素早く確認する。
「……ここでは、話せない」
「裏の、倉庫に来い」
案内された、商会の裏手の倉庫。
薄暗い中、ダレンは、声を、抑えて話し始めた。
「レイナルドが、話したのか」
「五年前のこと」
「三つの鍵のことも」
その言葉に、ダレンは、深く、息を吐いた。
「……とうとう、動き出したか」
「その口ぶりだと」
ユノが、慎重に聞く。
「あなたも、何か、気づいていたんですね」
「気づいていた、というより」
ダレンの声が、低くなる。
「最近、マルコス様の、様子が、おかしい」
「マルコス……当主が?」
「以前は、なかった、頻繁な外出」
「誰かと、密会しているような、素振り」
「相手は?」
「分からない」
「だが」
ダレンの目が、鋭く、細まる。
「ダリオス・ヴェインという名前を」
「一度、聞いた」
その名前に、ユノの背筋に、緊張が走った。
「……マルコスが、ダリオスと」
「繋がっているかもしれない、ということですか」
「確証はない」
「だが、可能性は、否定できない」
ダレンは、重い口調で、続けた。
「もし、マルコス様が」
「三つの鍵を、揃えようとしているなら」
「私は、それを、止めなければならない」
「五年前、レイナルドと、ゾルドと、私は」
「同じ役目を、託された」
「その、意味を、忘れちゃいない」
倉庫に、重い沈黙が、落ちた。
「協力してもらえますか」
ユノが、静かに聞く。
ダレンは、しばらく、考え込んだ。
「……ああ」
「だが、慎重に動け」
「マルコス様は、鋭い人だ」
「少しでも、勘付かれれば」
「すべてが、水の泡になる」
窓の外、隣町の夕暮れが、静かに、倉庫の中に、差し込んでいた。
新たな協力者を得て、四人は、また一歩、真実に近づいていた。




