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[4000PV突破!] 始まりの村と小さな竜  作者:


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封印


ユノは、一瞬、言葉を選んだ。

嘘をついても、見抜かれる気がした。

「……ダリオス・ヴェインについて、調べています」

「五年前、彼が辞任した理由と」

「その裏にあるかもしれない、何かを」

レイナルドの表情は、変わらなかった。

だが、その沈黙が、長く感じられた。

「……なぜ、それを」

「モイストの、客分ごときが、探っている」

「単なる、興味本位じゃありません」

ティナが、静かに、前に出た。

「私は、エルフの里の出です」

「五年前、里とダリオスの間で」

「取引が、破棄されたことを、知っています」

その言葉に、レイナルドの目が、初めて、大きく見開かれた。

「……エルフの、里」

「まさか、あの時の」

「知っているんですね」

「……ああ」

レイナルドは、深く息を吐き、椅子に、深く座り直した。

「話そう」

「隠しても、もう、意味がないようだ」

彼は、しばらく、天井を見つめてから、口を開いた。

「五年前、私は、ダリオス様の、直属の部下だった」

「彼は、優秀な人でな」

「商業ギルドを、今の形にまで、押し上げた立役者だ」

「だが、同時に」

「表には出せない、仕事も、多く抱えていた」

「表には出せない、仕事……」

「街の、裏側にある、危険を」

「未然に、防ぐための仕事だ」

レイナルドの声が、低くなる。

「あの人は、ある時期から」

「一つのことに、執着するようになった」

「『封じられた、竜の血』」

その言葉に、ユノの肩が、微かに強張った。

「……竜の血」

「古い伝承だ」

「かつて、この地に、暴走した、竜の力があった」

「それを、封じるために」

「エルフ族の、祖先が、術式を編み出した」

「その力が、今も、ヘルメリアの地下に、眠っている」

「ダリオス様は、それを、知った」

「そして、恐れた」

「もし、悪用されれば」

「街どころか、この一帯、全てが、危険に晒される」

レイナルドは、当時を思い出すように、目を閉じた。

「彼は、封印を、より確実なものにするため」

「エルフの里に、協力を求めた」

「同時に」

「万が一、封印が破られた時のために」

「備えを、作ろうとした」

「それが……」

「三派閥への、資金だ」

その一言に、ユノたちは、息を呑んだ。

「派閥を、争わせるためじゃない」

「三つの派閥、それぞれに」

「信頼できる人間を、一人ずつ配置し」

「監視の目を、絶やさないようにするため」

「私、ゾルド、ダレン」

「三人が、それぞれの派閥で」

「その役目を、託された」

「じゃあ、資金は」

ユノが、慎重に聞く。

「協力への、対価……というより」

「役目を、続けるための、後ろ盾だ」

「万が一の時、動けるように」

「では、なぜ」

ティナが、震える声で聞く。

「取引は、白紙になったんですか」

「里との、正式な協定は」

「なぜ、結ばれなかったんですか」

レイナルドの表情が、深く、曇った。

「……それが、私にも、分からない」

「取引が、結ばれる、直前だった」

「ダリオス様は、突然、姿を消した」

「辞任の手続きだけを、残して」

「理由は?」

「病気とだけ、聞かされた」

「だが、私は、信じていない」

レイナルドの声に、初めて、感情が滲んだ。

「あの人は、何かに、気づいたんだと思う」

「取引を、進めることの、危険性に」

「あるいは」

「取引そのものが、罠だったことに」

「罠……?」

「分からない」

レイナルドは、首を振った。

「ただ、辞任する、その前日」

「私に、一言だけ、言い残した」

「『三つの鍵は、決して、揃えるな』」

「『もし、揃おうとする者が現れたら』」

「『全力で、止めろ』」

部屋に、重い沈黙が落ちた。

「その言葉を、五年間」

「私は、守り続けてきた」

「だが」

レイナルドの目が、鋭く、ユノたちを見た。

「お前たちは、今」

「その封印について、調べ回っている」

「それが、何を、意味するか」

「分かっているのか」

第63話

部屋の空気が、張り詰めたまま、しばらく、誰も口を開かなかった。

ユノは、レイナルドの視線を、真っ直ぐ受け止めた。

「……封印を、暴こうとしてるわけじゃありません」

静かに、だが、はっきりと言う。

「むしろ、逆です」

「誰かが、それを、悪用しようとしている」

「その可能性に、気づいたから、調べています」

レイナルドの目が、わずかに、揺れた。

「……悪用しようと?」

「三派閥の間で、衝突が、意図的に、引き起こされていました」

ガインが、静かに、話を引き継ぐ。

「情報が、両陣営に、同時に流されている」

「消耗させるための、動きです」

「そして、旧市街の井戸で」

ティナが、続ける。

「ベタの人間が、見張りをしていました」

「『封は、まだ保たれてる』と、話しているのを」

「聞きました」

レイナルドの表情が、みるみる、険しくなっていった。

「……見張り、だと」

「セファル・オルグレンは、知っているはずです」

「彼が、指示を出しているのか」

「それとも、他に、誰かが」

レイナルドは、しばらく、考え込んだ。

「……セファルは」

「ゾルドと、同じ立場のはずだ」

「監視者の、一人」

「だが、彼が、独断で動いているとは、思えない」

「もっと、上にいる、誰かが」

「三つの鍵を、揃えようとしている」

その可能性に、部屋の空気が、また一段と重くなった。

「ダリオスは」

ユノが、慎重に聞く。

「今、どこにいるんですか」

「分からない」

レイナルドが、首を振る。

「五年間、一度も、連絡はない」

「生きているのか、それすらも」

「だが」

「もし、まだ、生きているなら」

「彼こそが、この状況を、一番、恐れているはずだ」

「自分が、作った仕組みが」

「今、悪用されようとしていることに」

沈黙が、部屋を満たした。

ユノは、しばらく考えてから、静かに口を開いた。

「……協力してもらえませんか」

レイナルドが、顔を上げる。

「三つの鍵が、揃うのを、止めるために」

「あなたの、力を、貸してほしい」

レイナルドは、長い間、答えなかった。

やがて、深く、息を吐いた。

「……いいだろう」

「私も、五年間、一人で、この重荷を、抱え続けてきた」

「限界を、感じていたところだ」

「まず、何を?」

「ゾルドと、ダレンに」

「接触する必要がある」

「だが、私から、直接は動けない」

「監視されている、可能性がある」

「だから」

レイナルドの目が、ユノたちを見る。

「お前たちに、頼みたい」

「ダレンは、隣町にいる」

「一度、会っているんだろう」

「もう一度、接触できるか」

「ゾルドは」

「ベタの、内部にいる」

「そちらは……セファルを、通す方が、確実かもしれない」

計画が、少しずつ、形を作り始めていた。

「時間は、あまりない」

レイナルドが、真剣な表情で言う。

「三つの鍵が、揃う前に」

「動かなければならない」

窓の外、日は、すでに傾き始めていた。

新たな目的を胸に、四人は、詰所へと戻る道を、静かに歩き始めた。

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