真意
監査は、その日のうちに、一区切りとなった。
「本日の監査は、以上とする」
進行役が、静かに告げる。
「判明した事実については、三派閥、それぞれで、精査を進めていただきたい」
「次回の会合で、改めて、報告を求める」
会計室に、重い空気を残したまま、その場は解散となった。
「……とんでもないことになったな」
会計室を出ると、レナが、大きく息を吐いた。
「三人とも、今も、それぞれの派閥にいる」
「偶然、とは思えない」
ユノも、同じ気持ちだった。
ゾルド・ハーレン。
レイナルド・ウィッシュ。
ダレン・ヴォルグレン。
三つの名前が、頭の中で、繰り返し響いていた。
詰所に戻ると、ガインは、すぐに机に向かい、レイナルドについての記録を、洗い直し始めた。
「……レイナルドは、今、どこに?」
ユノが聞く。
「モイストの、財務部門にいる」
「普段は、本部の、奥の執務室だ」
「会うことは、できるのか」
「簡単には、無理だ」
ガインが、首を振る。
「上役クラスだ。理由もなく、会いに行けば」
「不審に思われる」
「でも」
ティナが、口を挟む。
「監査の後だから」
「今なら、動揺してるかもしれない」
その指摘に、ガインが、少し考え込んだ。
「……確かに、な」
「タイミングとしては、悪くない」
「でも、俺が直接、探りを入れれば」
「モイストの中で、俺の立場が、危うくなる」
「じゃあ、私たちが」
ユノが、静かに言う。
「客分としてなら、多少、動いても、不自然じゃない」
「監査に立ち会った、冒険者として」
「話を聞きたい、と申し出るのは、どうだ」
ガインは、しばらく黙っていた。
「……分かった」
「口実は、俺が用意する」
「今日、監査の内容について」
「詳しい説明を求めたい、という体で」
翌日、四人は、ガインの手引きで、モイスト本部の奥、レイナルドの執務室を訪れた。
「……失礼します」
扉をノックすると、静かな声が返ってきた。
「入りなさい」
中に入ると、初老の男が、机の向こうで、書類に目を通していた。
レイナルド・ウィッシュ。
穏やかそうな顔立ちだが、その目には、鋭さが潜んでいた。
「モイストの、客分だと聞いている」
「監査について、何か?」
「はい」
ユノが、慎重に、言葉を選びながら切り出す。
「昨日の監査で、判明した、資金の件について」
「もう少し、詳しく、伺えればと」
レイナルドの表情が、わずかに変わった。
「……何を、知りたい」
「あなたが、五年前」
「その資金を、受け取っていた、経緯について」
一瞬、部屋の空気が、張り詰めた。
レイナルドは、しばらく、無言だった。
やがて、小さく息を吐く。
「……単刀直入だな」
「いいだろう。答えよう」
「だが、その前に」
彼の目が、鋭く、ユノたちを見据えた。
「お前たちが、何を、探っているのか」
「先に、聞かせてもらおう」




