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[4000PV突破!] 始まりの村と小さな竜  作者:


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街道


街道は、乾いた土埃を巻き上げながら、緩やかに続いていた。


荷馬車の車輪が、規則正しい音を立てる。


ユノは、馬車の側面を歩きながら、周囲に目を配っていた。


「……静かだな」


レナが、隣を歩きながら言う。


「ああ」


護衛の依頼といっても、今のところ、特に危険な様子はなかった。


商人――名をロベルという男が、時折、馬車の中から声をかけてくる。


「そっちの嬢ちゃん、疲れてないか」


「大丈夫です」


レナが、笑顔で答える。


ロベルは、思ったより、気さくな性格だった。


「イフリル商会は、結構、羽振りがいいんですね」


ユノが、それとなく話を振る。


「まあな」


ロベルが、少し得意げに言う。


「うちは、南方交易で、かなり稼いでる」


「特に、香辛料だ」


「あそこの家は、代々、商売がうまい」


「あそこの家、というのは?」


「うちのオーナー一族だよ」


「イフリル派閥そのものが」


「元々は、一つの商家から、始まってる」


「へえ」


「ヴォルグレン家」


その名前に、ユノは、内心、注意を向けた。


「今の代表は、確か」


「マルコス様だ」


「厳しい人だが、商売のことは、よく分かってる」


「面倒見もいい方だ」


会話は、それ以上、深くは進まなかった。


だが、その一言一言を、ユノは、記憶に留めていった。


夜になり、街道沿いの小さな宿場町で、一泊することになった。


食堂で、簡単な食事を取りながら、レナが、小声で言う。


「……ヴォルグレン家、か」


「イフリルの、中心にいる一族みたいだな」


ユノが、静かに頷く。


「明日、もう少し、聞けたらいいけど」


ティナは、少し離れた場所で、静かに食事をしていた。


宿場町の空気には、里とはまた違う、素朴な温かさがあった。


「……大丈夫か?」


ユノが、声をかける。


「うん」


「里からの、返事のこと、考えてたのか」


「……少し」


ティナは、小さく頷いた。


「早く、戻りたい」


「監査までには、必ず戻る」


「うん」


翌朝、再び出発した一行は、昼過ぎに、隣町へと到着した。


ヘルメリアほどではないが、それなりに栄えた交易の町だった。


荷を降ろす作業を手伝いながら、ユノは、周囲の様子を、注意深く観察していた。


「……ここにも、イフリルの拠点があるんですね」


「ああ、この町は、うちの重要な中継地だ」


ロベルが、案内するように、拠点となる建物を示す。


そこに、一人の男が、姿を現した。


商人にしては、鋭い目つき。


腕には、赤の腕章。


「……あれが」


「マルコス様の、右腕だ」


ロベルが、小声で言う。


「名は、確か……ダレン」


その男――ダレンは、荷物を確認しながら、時折、鋭い視線を、こちらに向けてきた。


「……見られてる」


レナが、小さく囁く。


「ああ」


ユノも、それを感じていた。


だが、あからさまに、探るような真似はできない。


護衛としての役目を、淡々とこなすことに、徹した。


荷下ろしが終わると、ロベルが、労いの言葉をかけてきた。


「よくやってくれた。明日には、また戻る」


「今日は、ゆっくり休んでくれ」


宿を取り、一息ついたところで、ティナが、ふと呟いた。


「……あのダレンって人」


「何か、感じたか?」


「……分からない。でも」


「何か、探るような目、だった」


ユノも、同じ印象を持っていた。


「俺たちのこと、少し、気にしてるみたいだったな」


「モイストの客分だって、バレてるのかも」


レナが、不安げに言う。


「かもな」


だが、それ以上、詮索する術はなかった。


夜、宿の部屋で、四人は、今日知り得た情報を、簡単に整理した。


「ヴォルグレン家」


「マルコス、当主」


「ダレン、右腕」


「これといって、決定的な手がかりは、まだない」


ユノが、静かに言う。


「でも、少しずつ、イフリルの内部が、見えてきた」


「ああ」


明日には、ヘルメリアへ戻る道のりが、また始まる。


監査の日まで、あと二日。


窓の外、隣町の夜が、静かに更けていった。


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