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[4000PV突破!] 始まりの村と小さな竜  作者:


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緊張


調停の場が終わると、広間は一気にざわめきに包まれた。


各派閥の関係者が、それぞれ小声で言葉を交わしながら、出口へと向かっていく。


「……終わった」


レナが、詰めていた息を、大きく吐き出した。


「ガイン、すごかったね」


「ああ」


ユノも、同じ気持ちだった。


淡々とした口調の裏に、確かな覚悟があった。


ガインは、まだ少し緊張の抜けない顔で、広間の隅に立っていた。


「……大丈夫か?」


声をかけると、小さく頷いた。


「柄にもなく、緊張した」


「でも、言うべきことは言えた」


その言葉に、疲れの滲む笑みが混じっていた。


そこへ、モイストの上役の女性が近づいてきた。


「よくやったわ、ガイン」


「……ありがとうございます」


「後のことは、こちらで対応する」


「あなたたちは、少し休みなさい」


労いの言葉をかけ、彼女は他の関係者と共に、次の話し合いへと向かっていった。


広間を出ようとした、その時。


「――少し、いいか」


低い声。


振り返ると、そこに、セファルが立っていた。


護衛たちは、少し離れた場所で待機している。


一対一に近い距離。


空気が、一気に張り詰めた。


「……何の用だ」


ユノが、前に出る。


セファルは、ユノを一瞥し、それから、ガインに視線を移した。


「お前の発言、悪くなかった」


「……皮肉か?」


「いや」


セファルは、静かに首を振った。


「事実を、正確に述べていた」


「それだけだ」


その言葉に、ガインは少し戸惑ったような表情を見せた。


セファルの視線が、今度は、ティナに向いた。


その瞬間、ティナの体が、わずかに強張った。


「……お前」


低く、確かめるように言う。


「エルフの、里の出か」


ティナは、答えなかった。


だが、その沈黙が、答えだった。


「……古い文字を、読めるそうだな」


その言葉に、全員が息を呑んだ。


なぜ、それを知っている。


「どうして、それを」


ユノが、鋭く問う。


セファルは、答えなかった。


代わりに、静かに目を細める。


「調べは、しておく」


「資金の流れについて」


「監査を受け入れる方向で、話を進める」


「……本当か?」


ガインが、驚いたように聞き返す。


「ベタとしても、この状況は、望ましくない」


「これ以上、利用され続けるのは」


セファルの声に、初めて、微かな感情が滲んだ気がした。


怒りとも、苛立ちとも取れる、抑えた響き。


「だが」


言葉を切り、再び、ティナを見る。


「お前には、いずれ、聞きたいことがある」


「ダリオス・ヴェインについて」


その名前が出た瞬間、ティナの表情が、明らかに変わった。


「……知ってるの、その人を」


「知っている」


短く、重い答えだった。


「悪い意味で、な」


それ以上、多くは語らなかった。


セファルは、静かに背を向ける。


「今日は、これで」


護衛たちと共に、静かに広間を後にしていった。


残された四人と、ガイン。


しばらく、誰も口を開かなかった。


「……なんだったんだ、今の」


レナが、ようやく声を絞り出す。


「セファルが、あんなふうに話すの、初めて見た」


ガインが、まだ少し驚いた様子で言う。


「普段は、もっと感情を見せない男だ」


ユノは、ティナに視線を向けた。


彼女は、まだ、複雑な表情を浮かべていた。


「……大丈夫か?」


「……うん」


小さく頷く。


だが、その声には、明らかに、動揺が滲んでいた。


ダリオス・ヴェイン。


「悪い意味で」知っている、という言葉。


それが、何を意味するのか。


まだ、誰にも分からなかった。


広間を出ると、外はすでに、夕暮れが近づいていた。


橙色の光が、ヘルメリアの街並みを、静かに染めていく。


「……今日は、色々ありすぎた」


レナが、疲れたように呟く。


「ああ」


ユノも、同じ気持ちだった。


だが、この日を境に、確かに何かが動き始めていた。


三派閥の均衡。


ダリオスの影。


そして、ティナの過去。


それぞれの糸が、少しずつ、絡み合っていく。


「……宿に戻ろう」


ユノが、静かに言う。


「今日は、ゆっくり休んで」


「また明日、考えよう」

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