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[5000PV突破!] 始まりの村と小さな竜  作者:


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報告


大広間は、想像していたよりも広かった。


高い天井、吊り下げられた無数のシャンデリア。


石の床には、繊細な紋様が刻まれている。


すでに、多くの人々が席についていた。


三派閥ごとに、区分けされた席順。


赤――イフリル。


青――モイスト。


黒――ベタ。


「俺たちは、あっちだ」


ガインが、モイスト側の席の後方を示す。


「客分は、後ろで大人しくしてる決まりだ」


四人は、静かに席についた。


正面には、一段高くなった演壇。


そこに立つのは、進行役らしき初老の男性だった。


商業ギルドの紋章が刺繍された、格式高い衣装を纏っている。


「……あの人が、進行役?」


レナが小声で聞く。


「ああ。中立の立場で、調停を仕切る」


「昔からいる、ギルドの古参だ」


やがて、鐘の音が鳴り響いた。


大広間の喧騒が、一気に静まる。


「これより、調停の日を、開催する」


進行役の声が、広間全体に響いた。


「まずは、各派閥からの報告を、順に伺う」


「イフリルから」


赤の席の中央に座っていた男が、立ち上がった。


昨日、揉め事を起こしていた男とは、また別の人物だった。


「今期、我々イフリルは、南方交易路の取引量を、三割増やした」


「特に、香辛料と染料の扱いにおいて、他派閥を大きく上回っている」


淡々とした口調だが、その言葉には、確かな自負が滲んでいた。


「一方で、先日の倉庫街での一件」


「あれは、モイストの荷が、不正な経路で運ばれていたことに端を発する」


「我々は、正当な確認を行おうとしただけだ」


その言葉に、モイスト側の席がざわついた。


「続いて、モイスト」


ガインの上役らしき、年配の女性が立ち上がる。


「イフリル殿の主張には、事実誤認がある」


「あの荷は、正規の契約書を伴った、正当な取引だった」


「不正があったとすれば、むしろ確認を装って、荷を止めようとした側にある」


「これは、三件目だ」


「この一ヶ月で、モイストの荷が、理由なく足止めされたのは」


女性の声に、抑えた怒りが滲んでいた。


「イフリルこそ、何を狙っている」


赤の席から、小さなどよめきが起きる。


一見、穏やかなやり取り。


だが、その裏には、確かな緊張が張り詰めていた。


「……こういうの、初めて見た」


レナが、小声で呟く。


「言葉だけで、こんなに緊張感があるなんて」


「これが、商業の戦い方なんだろうな」


ユノも、静かに見入っていた。


数字と主張の応酬。


だが、その奥にあるのは、明らかに――誰かに、意図的に煽られている構図だった。


そして、最後に。


「ベタ」


進行役が、静かに名を呼ぶ。


セファル・オルグレンが、ゆっくりと立ち上がった。


広間の空気が、一瞬にして変わる。


彼が口を開くまで、誰もが息を潜めていた。


「今期、我々ベタは、中立の立場を保ち」


「両派閥の取引の、公正な仲介を、二十七件行った」


「だが」


一拍、間を置く。


「その二十七件のうち、十九件が、この一ヶ月に集中している」


広間が、わずかにざわついた。


「衝突の頻度は、明らかに異常だ」


「これ以上の混乱が続けば」


「調停の意味そのものが、問われることになる」


短い言葉だったが、広間全体に、重く響いた。


赤も、青も、何も言い返さなかった。


ティナが、その姿を、じっと見つめていた。


「……あの人」


小さく呟く。


「何か、隠してる」


その言葉に、ユノも、視線をセファルに向けた。


冷静な表情の奥に、確かに、何かが潜んでいる気がした。


進行役が、次の議題に移ろうとした、その時。


「――発言を、よろしいでしょうか」


ガインが、静かに立ち上がった。


広間の視線が、一斉に集まる。


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