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[4000PV突破!] 始まりの村と小さな竜  作者:


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前日


調停の日、前日。


朝から、詰所の空気はいつもより張り詰めていた。


「今日中に、全部確認しておく」


ガインが、机に地図と進行表を並べる。


「大広間の配置、退路、それと」


「万が一の時の合図」


「万が一?」


レナが、少し不安げに聞く。


「調停の場で、荒事は滅多に起きない」


「だが、絶対とは言えない」


ガインの声は、淡々としていた。


だからこそ、余計に緊張感が伝わってくる。


「合図は、これだ」


懐から、小さな笛を取り出す。


「二回短く吹いたら、退避しろ」


「音、大きすぎないか」


「その場では、目立つ。だが」


「命より優先すべきものはない」


短く、きっぱりとした言葉だった。


ユノは、その笛を見つめながら、小さく頷いた。


「……分かった」


四人はそれぞれ、笛の音を一度確認した。


甲高く、はっきりとした音。


聞き逃すことはなさそうだった。


午後は、実際に衣装を着て、動きを確認することにした。


「……歩きにくい」


レナが、慣れない服の裾を気にする。


「普段の動きやすさとは、全然違うね」


「本番までに、少し慣れておいた方がいい」


ティナは、意外にも落ち着いた様子で、衣装を身につけていた。


「……里にいた頃、似たような格好、してた」


「そうなのか?」


「儀式の時、とか」


ティナの声は、静かだった。


だが、その中に、複雑な感情が滲んでいるのが分かった。


エルフの里を出て、今、こうして別の場所で、似たような衣装に袖を通している。


その巡り合わせに、彼女自身も、何かを感じているようだった。


夕方、最後の確認として、大広間の外観だけでも見ておくことになった。


商業ギルド本部。


昼間見ると、その威容がよく分かる。


石造りの荘厳な建物。


出入りする人々も、明らかに身なりが良かった。


「……明日、ここに」


レナが、建物を見上げて呟く。


「緊張するのも、無理ないな」


ユノも、同じ気持ちだった。


だが、不思議と、恐れはなかった。


昨日までの積み重ねが、少しずつ、覚悟に変わっていた。


宿に戻ると、それぞれ静かに、明日への準備を整えた。


装備の最終確認。


衣装を、丁寧に畳んで置く。


ラグナルは、いつもより大人しく、部屋の隅で丸くなっていた。


「……お前も、緊張してるのか?」


小さく撫でると、目を細めて甘えるように鳴いた。


ウールも、ラグナルの隣に、そっと寄り添っていた。


夜。


窓の外、ヘルメリアの明かりが、静かに揺れている。


明日、この街の均衡に関わる場に、自分たちは足を踏み入れる。


ユノは、しばらく夜空を見つめてから、静かに目を閉じた。


「……明日だな」


小さく呟いた言葉が、静かな部屋に溶けていった。


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