同じ火を囲んで
その日の夜。
ユノたちは再び、野宿の準備をしていた。
空はすでに暗く、頭上にはいくつもの星が瞬いている。
「ここでいいか」
「うん、風も弱いし」
昨日よりも手際よく火を起こす。
乾いた枝が組まれ、火打ち石の音が響く。
やがて小さな炎が生まれ、ゆっくりと広がっていった。
パチパチと、火の音が夜に溶けていく。
三人は自然と、その周りに座った。
昨日と同じ並び。
だが、少しだけ違う。
ティナの位置が、ほんの少しだけ近かった。
誰もそれを口にはしない。
でも、確かに変わっていた。
しばらく、誰も話さない。
火の音と、風の音だけが続く。
その静けさが、不思議と落ち着いた。
「……これ」
ティナが、小さく声を出す。
手の中に、小さな石を持っていた。
淡く光っている。
「昼に見つけた」
レナが身を乗り出す。
「……魔石?」
「……たぶん」
ユノも受け取る。
手のひらに、ほんのりとした温かさ。
「……よく見つけたな」
「……なんとなく」
またその言葉。
だが、昨日とは違う。
その“なんとなく”には、確かな感覚がある。
レナがふっと笑う。
「すごいよ、それ」
ティナは少しだけ驚いた顔をした。
それから、視線を落とす。
「……初めて、言われた」
「え?」
「……役に立つって」
その言葉に、レナの表情がわずかに変わる。
「……今までは?」
ティナは少しだけ間を置く。
火を見つめる。
「……隠れることしかできなかった」
小さな声。
「……見つからないように」
ユノは何も言わない。
ただ静かに聞いている。
「……でも」
ティナがゆっくりと顔を上げる。
その視線の先には、ユノとレナ。
そして、モチとラグナルとウール。
「……今は違う」
少しだけ、言葉に力が入る。
「……一緒にいるから」
レナがすぐにうなずく。
「うん」
やわらかい声だった。
「一緒にいるから」
同じ言葉を返す。
ユノも、小さくうなずいた。
それだけで、十分だった。
そのとき。
ラグナルが小さく動く。
「……?」
ユノが視線を向ける。
背中を見る。
昨日より、はっきりしている。
肩甲骨のあたりに、小さな突起。
「……伸びてるな」
「ほんとだ」
レナが目を輝かせる。
「ラグナル、すごいね」
「キュ」
少し誇らしげな声。
モチもぴょんと跳ねる。
以前よりも高く、しっかりと。
「……モチも元気すぎ」
レナが笑う。
ウールは、静かに浮いている。
昨日よりも、ほんの少しだけ安定して。
ティナが、その様子を見ていた。
「……やっぱり」
小さく呟く。
「この子、何かある」
ウールを見る目は真剣だった。
ユノは少しだけ視線を落とす。
「……だろうな」
否定はしない。
分からないだけだ。
火が揺れる。
夜が深くなる。
その中で。
少しずつ。
本当に少しずつ。
三人の距離は変わっていく。
もう、ただ一緒にいるだけじゃない。
同じ場所で、同じ火を囲む仲間だった。




