表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
始まりの村と小さな竜  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/32

小さな変化


翌朝。


冷たい空気の中で、ユノはゆっくりと目を開けた。


夜の名残は薄く、空はすでに白み始めている。


火は消えていたが、まだほんのりと温もりが残っていた。


「……朝か」


体を起こす。


隣ではレナがまだ眠っている。


その少し先で、ティナが静かに座っていた。


「起きてたのか」


声をかける。


ティナは小さくうなずいた。


「……うん」


そのまま、少しだけ沈黙。


昨日の夜のあとだからか、気まずさはもうほとんどなかった。


「……あっち」


ティナが小さく指を向ける。


「何かいる」


ユノはすぐに立ち上がる。


視線の先、草むらがわずかに揺れている。


「……来るな」


構える。


ゆっくりと近づく。


そして――


低く唸るような声とともに、小型の獣が飛び出してきた。


犬ほどの大きさ。


だが、目は鋭い。


「っ!」


横に避ける。


そのまま剣を振る。


スッ、と刃が通る。


以前よりも、明らかに軽い。


「……いける」


自分でも分かる。


無駄な動きが減っている。


もう一体、草むらから飛び出す。


「レナ!」


「うん!」


レナが手を前に出す。


風が巻く。


小さな渦が、獣の足元を揺らす。


動きが一瞬だけぶれる。


「今!」


ユノが踏み込む。


振る。


ガンッ、と鈍い音。


確実に当たる。


倒れる。


静寂が戻る。


「……終わった」


ユノが息を吐く。


「……早いね」


ティナが小さく言う。


「……前よりはな」


正直な感想だった。


レナも、自分の手を見つめている。


「……当たった」


小さく呟く。


まだ弱い。


でも、ちゃんと狙えている。


それが分かるだけで違う。


モチがぴょんと跳ねて戻ってくる。


その動きが、少しだけ違った。


「……あれ」


レナが抱き上げようとして、少しだけ手が止まる。


「……ちょっと重い」


ユノも覗き込む。


ほんのわずかだが、確かに変わっている。


「……大きくなってるな」


モチは得意げに小さく鳴いた。


その横で、ラグナルが肩の上で動く。


ユノはふと、その背中に目を向けた。


「……ん?」


違和感。


昨日とは、何かが違う。


よく見ると、肩甲骨のあたり。


小さな突起ができている。


「……これ」


レナも気づく。


「……羽?」


まだ翼ではない。


だが、その“始まり”だった。


ラグナルが小さく鳴く。


少しだけ誇らしげに。


「……成長してる」


ティナが呟く。


その視線は、ラグナルからウールへ移る。


ウールは、静かに浮いていた。


昨日よりも、ほんの少しだけ高く。


ほんの少しだけ安定して。


「……一緒にいると、変わる」


ティナが言う。


「何が?」


レナが聞く。


ティナは少しだけ迷う。


「……分からない」


それでも続ける。


「……でも、この子」


ウールを見る。


「……関係ある気がする」


ユノは何も言わなかった。


ただ、ウールを見る。


ふわりと浮かぶ、小さな存在。


何もしていないように見える。


だが。


確かに、何かが変わっている。


「……行くか」


ユノが言う。


「うん」


レナが答える。


ティナも、小さくうなずく。


三人は再び歩き出す。


少しずつ。


確実に。


強くなりながら。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ