表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
始まりの村と小さな竜  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/32

逃がさない


「――来る!」


ユノの声と同時に、闇商人が動いた。


速い。


ロックワームとは比べものにならない。地面を滑るように距離を詰めてくる。


「っ!」


剣を構える。だが、もう目の前にいた。


ナイフが横から滑り込む。


ガンッ!!


なんとか受けるが、腕に強い衝撃が走る。


「……軽いな」


男が呟く。


「その剣、いい出来だ」


ユノは歯を食いしばった。


「……黙れ」


押し返して距離を取る。


「レナ!」


「うん!」


風が巻き起こる。足元の土が舞い、視界が揺れる。


だが、闇商人はほとんど動じない。


「その程度か」


踏み込みを止めない。


「……!」


背後から別の男が迫る。


ユノは体をひねり、剣を振る。


キンッ!


弾く。しかし完全には崩せない。


「囲め!」


複数で来る。数も、技も違う。


「……くそ」


一瞬で判断する。勝つ必要はない。


「レナ!」


「分かってる!」


風がさらに強くなる。砂が舞い、相手の視界を乱す。


ほんの一瞬の隙。


「今だ!」


ユノが踏み込む。


「モチ!」


レナの声と同時に、モチが飛び出す。


横から腕に噛みつく。


「チッ……!」


一瞬、動きが止まる。


「――っ!」


ユノが全力で振り下ろす。


ガンッ!!


闇商人の体がわずかに揺れる。


だが倒れない。


「……いいな」


男が笑う。


「連携は悪くねえ」


その余裕が、逆に重い。


そのとき、ラグナルが動いた。


「キュ!」


小さな炎が吐き出される。


弱い炎。だが、風に乗った。


ボッ。


炎が広がる。


「……!」


男の動きがほんの一瞬だけ止まる。


「今だ!」


ユノが踏み込む。


狙うのは、その一瞬の隙。


全力で叩き込む。


ゴンッ!!


今度は確かに効いた。


闇商人が後ろに下がる。


だがすぐに立て直す。


「……チッ」


初めて見せる苛立ち。


「面倒なガキどもだ」


しかし目は冷静だった。


仲間を見る。数人がすでに傷を負っている。


「……引くぞ」


「は?」


「無駄に削られる理由がねえ」


あっさりとした判断だった。


「覚えとけ」


ユノを見る。


「その剣も、その連携も」


「まだ未完成だ」


その言葉に、わずかに熱がこもる。


そして、視線がティナに向く。


「……逃げられると思うなよ」


低く、はっきりと。


「次は、確実に連れていく」


背を向ける。


止める間もなく、闇商人たちは去っていった。


完全に姿が見えなくなるまで、誰も動かなかった。


「……はぁ……」


ユノが息を吐く。


膝がわずかに震えている。


「……強かった」


レナが言う。


「ああ」


勝ってはいない。ただ――


「……守れたな」


それだけだ。


振り返る。


ティナは無事だった。


村人たちにも大きな怪我はない。


「……ありがとう」


ティナが小さく言う。


まだ少し震えている声。


「気にすんな」


ユノは短く返した。


だが視線は遠くに向いていた。


あいつはまた来る。


そして、その前に――


「……あいつ、やっぱりやったな」


小さく呟く。


幼馴染。


あいつがここまでやった。


逃がして、生き延びた。


「……無事でいろよ」


その言葉は、静かに夜へ溶けていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ