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始まりの村と小さな竜  作者:


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追う者


 クルクル村の空気は、明らかに変わっていた。


 さっきまでの穏やかさは消え、どこか張り詰めている。


「……本当に来るのかな」


 レナが小さく言う。


「来る」


 ユノは短く答えた。


 あの子供の様子。


 言葉。


 そして、あの冒険者たちの反応。


 全部が頭の中で繋がっている。


 村の外れ。


 見通しのいい場所に立つ。


「ここなら、来たらすぐ分かる」


「うん」


 エルフの子は、少し離れた場所にいる。


 村人たちが守るように囲んでいた。


 モチが、そわそわと動く。


 ラグナルは静かに前を見ている。


 ウールは、いつも通り何もしていない。


 風が、少し強くなった。


 そのとき。


「……来た」


 遠くに、影が見えた。


 ゆっくりと近づいてくる。


 馬車。その後ろに、数人の人影。


「……あれか」


 止まる。


 少し離れた位置で。


 男が一人、前に出てきた。


 黒い外套。細い目。笑っているのに、目が笑っていない。


「……いたな」


 低い声。


 視線は、まっすぐエルフの子へ向いている。


「……逃げ足だけは一人前だ」


 空気が冷える。


「返してもらうぞ」


 その言葉に、村人たちがざわめく。


「……断る」


 ユノが前に出る。


 男の視線が、ゆっくりと動く。


「……誰だお前は」


「通りすがりだ」


「関係ないなら、どけ」


「関係ある」


 短く答える。


 沈黙。


 それから、男が小さく笑った。


「……ああ、そうか」


「お前か」


 ユノの目がわずかに細くなる。


「何の話だ」


「邪魔したやつがいるって聞いてたんだ」


「若い男だったってな」


 その言葉で、確信する。


「……あいつか」


 幼馴染。


 無茶して、突っ込むやつ。


「……生きてるぞ」


 男が言う。


「逃げたがな」


 その一言で、少しだけ力が抜けた。


「……そうか」


 だが、次の瞬間。


「代わりに、お前が相手してくれ」


 空気が張り詰める。


「……来るぞ」


 ユノが低く言う。


 男が手を上げる。


「やれ」


 後ろにいた男たちが、一斉に動いた。


 武器を構える。


 距離を詰める。


「レナ!」


「うん!」


 モチが飛び出す。


 ラグナルが低く鳴く。


 最初の一撃が来る。ユノは前に出た。


 剣を抜く。


 ――金属音が響く。


 刃がぶつかる。


「……!」


 重い。今までの戦いとは違う。


 人間。しかも、慣れている。


「気をつけろ!」


 レナが風を放つ。


 相手の動きが一瞬鈍る。


「今!」


 ユノが踏み込む。


 だが――


「甘い」


 後ろから、声。


「っ!」


 男がすでに間合いに入っていた。


 闇商人。


 ナイフが、横から迫る。


 ギリギリで受ける。


 ――ガンッ。


 衝撃が腕に響く。


「……いい剣だな」 男が呟く。


「誰が打った」


 その余裕。その視線。


 明らかに、格が違う。


「……黙れ」


 ユノが低く言う。


 だが、分かっていた。


 こいつは――


「……強い」


 ロックワームとは違う。


 知性があって動きが読めない。


「……どうする」


 レナの声。ユノは、短く答えた。


「……時間を稼ぐ」


「村の中に入れるな」


 それが、今の最優先だった。


 闇商人が笑う。


「いい判断だ」


 そして、一歩踏み出す。


「じゃあ、潰すか」


 その一歩で、空気が変わった。

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