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始まりの村と小さな竜  作者:


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外の言葉

 クルクル村の昼は、穏やかだった。


 窯の火が揺れ、土の匂いが風に乗る。


 簡素だが温かい食事。村人たちの笑い声。


「……なんか、落ち着くね」


 レナが言う。


「ああ」


 ユノも同じことを感じていた。


 だが。


 その空気は、突然崩れた。


「おいおい、なんだここは」


 乱暴な声が、通りに響く。


 数人の男が、村の中へ入ってきた。


 装備からして、冒険者だ。


「ずいぶん静かな村だな」


「……焼き物か?」


 笑いながら歩く。


 どこか軽い。


 だが、その目は――


 品定めをするようだった。


「……」


 村人たちは、少しだけ視線を逸らす。


 関わらないように。


 そのとき。




「……あ」


 レナが小さく声を出す。



 あの子供がいた。


 通りの端。


 さっきと同じように、静かに立っている。


 その耳。


 一人の男が、気づいた。


「……おい」


 足が止まる。


「今の、見たか?」


「……ああ」


 男たちの視線が、一斉に向く。


「……エルフじゃねえか」


 空気が、変わった。


 さっきまでの軽さが消える。


「なんでこんなとこにいる」


「こんなとこに、かくまってんのか?」


 子供の体が、わずかに震える。


 一歩、下がる。


「……」


 ユノは、無言で様子を見る。


「おい、こっち来いよ」


 一人が手を伸ばす。


 その瞬間。


 子供が、はっきりと後ろに下がった。


「……嫌だ」


 小さな声。だが、はっきりしていた。



「は?」


 男が眉をひそめる。


「なんだその態度」


「お前みたいなのがいるから――」


「やめろ」


 ユノが、間に入った。


 短い一言。


 男たちの視線が、ユノに向く。


「……なんだ?」


「この村のやつじゃねえな」


「旅人か」


 軽く笑う。


「関係ねえだろ」


 ユノが言う。


「ここで問題起こすな」


 一瞬の沈黙。


 それから、男の一人が鼻で笑った。


「……問題?」


「問題はそっちだろ」


「エルフなんて、ろくなもんじゃねえ」


 その言葉にレナの表情が、わずかに変わる。


「……何も知らないくせに」


 小さく呟く。


「は?」


 男が一歩近づく。


「なんか言ったか?」


 そのとき。


「……もう、いい」


 エルフの子供が言った。


 震えている。


 だが、逃げない。


「……ここにいたら、迷惑になる」


 その言葉に、村の空気が止まる。


「違う」


 レナがすぐに言う。


「そんなこと――」


 だが、子供は首を振った。


「……また来る」


 その一言でユノは気づいた。


「……何があった」


 子供は、少しだけ迷ってから口を開く。


「……追われてる」


 静かな声。


「売られるところだった」


 その言葉に、空気が凍る。


「……逃げたの」


「一人でか?」


 子供は首を振る。


「……助けてもらった」


 一瞬、間が空く。


「……でも」


「その人、ケガしてた。


「……戦ってた」


 ユノの中で、何かが引っかかる。


「……そいつは?」


「……分からない」


「でも……」


 少しだけ顔を上げる。


「強くなりたいって、言ってた」


 その言葉で。


 ユノは、はっきりと分かった。


「……あいつか」


 小さく呟く。


 あの幼馴染。


 無茶してでも、突っ込むやつ。


「……無事だといいな」


 レナが小さく言う。


 ユノも、何も言わずにうなずいた。


 だが、それで終わりじゃない。


「……来るぞ」


 ユノが呟く。


 さっきの冒険者たち。


 そして――


 追っている“何か”。


 それは、まだ終わっていない。

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