表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
始まりの村と小さな竜  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/32

旅の準備

タブリスの通りは、昼を迎えてさらに賑わっていた。


 朝とは違い、人の流れが濃い。呼び込みの声も、さっきよりずっと大きい。


「安いよ安いよ!」

「新鮮な肉だ、見ていけ!」

「保存食ならこっちだ!」


 声が飛び交う中を、ユノとレナは並んで歩く。


「……すごい人だな」


「朝より増えてるね」


 自然と距離を近くする。


 少し離れると、すぐに人の波に飲まれそうだった。



「まずは何買う?」


「食料だな」


 ユノが周囲を見回す。


「日持ちするやつ」


「じゃあ、あそこ」


 レナが指差す先には、干し肉やパンを並べている店があった。


「いらっしゃい!」


 店主が元気よく声をかけてくる。


「どれくらい必要だ?」


「二、三日分くらい」


「ならこれだな」


 差し出されたのは、少し硬そうな干し肉と、平たいパン。


「保存は効くが、水はちゃんと持てよ」


「分かりました」


 袋に詰めてもらい、代金を払う。


 手の中の硬貨が減る。


「……意外とかかるな」


「うん。でも必要だし」


 レナが袋を受け取る。


 次に向かうのは、薬屋だった。


 少し奥まった場所にある、小さな店。


「回復薬、あるか?」


「あるよ」


 店の奥から、瓶をいくつか持ってくる。


「軽傷ならこれで十分だ」


 透明な液体が入った小瓶。


「……高いな」


「命と比べりゃ安いもんだ」


 店主があっさりと言う。


 ユノは少し考えてから、うなずいた。


「二つください」


 店を出る。


 袋の中が少し重くなる。


「……本当に行くんだなって感じする」


 レナがぽつりと呟く。


「ああ」


 ユノも同じことを思っていた。


 通りを歩く。


 ふと、足を止める。前方に、少しだけ変わった光景があった。


 大きな愛獣が、荷物を運んでいる。


 その背には布がかけられ、その上に箱が積まれていた。


 主人らしき男が、横で指示を出している。


「右だ、右!」


 愛獣は静かに従い、方向を変える。


「……すごいね」


「ちゃんと役割があるんだな」


 自分たちの愛獣を見る。


 ラグナルは肩の上で静かにしている。


 ウールは足元で、いつも通りふわふわと揺れている。


モチはバッグの中で寝ている。


「……あいつらも、ああなるのかな」


「どうだろう」


 レナが少し笑う。


「でも、ちょっと楽しみ」


「……だな」


 歩きながら、水を売っている店を見つける。


 革袋に水を詰めてもらう。


「これで最後か」


「たぶんね」


 ひと通り揃えると、少しだけ安心感が出てくる。


 同時に、緊張も。


「……大丈夫かな」


 レナが小さく言う。


「何が?」


「ちゃんと、やれるかなって」


 少しだけ不安そうな顔。


 ユノは少しだけ考える。そして、肩をすくめた。


「分からない」


「え?」


「でも、やるしかないだろ」


 それだけだった。レナは一瞬きょとんとして、それから笑った。


「……そうだね」


 歩き出す。


 街の喧騒が、少し遠くなる。


 準備は整った。食料、回復薬、水。


 完璧じゃないとも思う。でも、今できることはやった。


「明日、出るか」


「うん」


 タブリスの空の下で。


 二人の最初の遠出が、静かに近づいていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ