どんなのがいいんだ?
工房の外に出ると、張りつめていた空気が一気にほどけた。
「……はぁ」
レオが大きく息を吐く。
「相変わらずだな、師匠」
「すごかったね……」
レナが少し苦笑する。
中の空気は、外とはまるで別物だった。
「でもさ」
レオが顔を上げる。
「完全にダメって感じじゃなかったよな」
「……ああ」
ユノもうなずく。最後の言葉。
“勝手にしろ”。
あれは、完全な拒絶ではない。
「材料さえあれば、どうにかなるかもしれない」
「だよな!」
レオの表情が少し明るくなる。
少し歩きながら、自然と話が始まる。
「で、どんな武器にするんだ?」
「……剣だな」
迷いはなかった。
「今も棒みたいなもんだし、それに近い形の方がいい」
「なるほどな」
レオが腕を組む。
「長さは?」
「片手で扱えるくらい」
「重さは?」
「重すぎるのは無理だな。まだ振り切れない」
「じゃあ軽めで、バランス重視か」
ぶつぶつと呟きながら考え込む。
さっきまでの抜けた雰囲気とは違う。明らかに、集中している。
「防御はどうする?」
「盾は別で持つ」
「……じゃあ剣はシンプルでいいな」
レオがうなずく。
「変に特殊なもんより、振りやすい方がいい」
「それでいい」
少しの沈黙。
そのあと、レオがぽつりと呟く。
「……ちゃんと作れたら、絶対強くなるぞ」
その声は、小さかったけど真剣だった。
レナが横から覗き込む。
「私のはどうしよう」
「レナは……」
ユノが少し考える。
「まだ前に出る感じじゃないよな」
「うん」
「なら、軽い武器か……杖か」
「杖?」
「魔法使うなら、その方がいい」
「……魔法?私まだうまく使えないよ?」
「俺の勘がそう言ってるんだ。」
レナが納得したようにうなずく。
レオは少しだけその様子を見ていた。
何か考えているような顔。でも、それは口には出さなかった。
「とりあえず」
レオが話を戻す。
「材料だな」
「どんなのがいる?」
「まずは金属」
指を折りながら説明する。
「質のいい鉱石。あと補助素材」
「補助?」
「強度上げたり、バランス整えたりするやつ」
「簡単に手に入るのか?」
「いや、無理」
即答だった。
「だからクエストだな」
三人で顔を見合わせる。自然と、同じ結論にたどり着く。
「……やるしかないか」
「うん」
「決まりだな」
再びギルドへ向かう。
街は昼に近づき、さらに賑やかになっていた。
人の声、足音、商人の呼び込み。その中を進む。
ギルドの扉を開ける。
中の空気は、昨日よりも少しだけ慣れていた。
掲示板の前に立つ。
「ブルー……この辺か」
「少し難しいやつだね」
紙を見ながら、内容を確認する。
「鉱石採取と討伐の二重クエストか……場所は街の外の小さな洞窟」
「距離もあるね」
ユノは一枚を手に取る。少しだけ、重みを感じる。
最初のクエストとは違う。
「これにする」
「……大丈夫?」
「分からない。でも」
少しだけ笑う。
「やらないと、始まらない」
レナもうなずく。
「うん。一緒にやろう」
レオがその様子を見て、小さく笑った。
「いいな、それ」
「何がだよ」
「いや、なんでもねえ」
軽くごまかす。
受付にクエストを持っていく。
「こちらでよろしいですか?」
「はい」
「お気をつけて。少し距離がありますので、準備はしっかりと」
「分かりました」
ギルドを出る。街の空気が、少しだけ違って感じる。
「……次は、外だな」
ユノが言う。
「うん」
レナが並ぶ。
レオは少しだけ後ろで立ち止まった。
その背中を見ながら、何かを考えている。
だが、その言葉は出さない。
「……じゃあな」
軽く手を振る。
「気をつけろよ」
「そっちもな」
ユノたちは歩き出す。街の出口へ。
少し難しいクエスト。遠くへの移動。
初めての本格的な冒険。
その先に何があるのかは、まだ分からない。




