第二十九話 侵略
ディアが都主となり、特にこれといった問題も無いままヴィントス街は普段通りの日々に戻っていった。今日もまた、鴉の群れが城の上を通り過ぎていく。
ところで、僕らは今どうしているかというと…。
「んやあああぁぁぁ!」
「あっ、ミリア様! 少々お待ち下さい!」
ミリアの世話に手を焼いていた。
「…えへへぇ♪ あう、あぅう?」
「これですか? これは "めっ" ですよ〜」
「んゆうぅ…」
慣れた手つきでミリアをあやすカロナ。…まるでミリアがなんて言ってるのか分かってるように見えるな…。
「入るぞ」
部屋に入ってきたディアは、『都主の仕事マニュアル』と書かれた本を持っていた。…意外と仕事熱心なのか?、ちなみに見た目はディアを怖がらせないためか、人の姿だ。
「アレク、カロナ、少し話がある」
「何?」
先に聞き返したのは僕ではなくカロナだ。少し前まで凄まじい敵対心を見せていたのに、もう慣れてしまったようだ。
「俺が都主になって数日、この街は当初の予定以上に安定し、上手くいっている。…だから、そろそろ始めようと思うんだ、侵略」
「「…は?」」
…侵略? 他の街や町も手に入れようって事か。…ディアの目的は、この街の都主になる事じゃないのか?
「なぁ、ディア、お前は…」
そのとき、部屋の窓が開き、強風が吹き込んだ。
「ふええぇぇぇ!」
「ミリア様!」
カロナはミリアを庇った。僕は窓の近くにいるため、飛ばされないようにするだけで精一杯だ。
ーελευθέρωσηー
「…はぁ」
「…風の魔法、か…」
「え、今の風って魔法だったの?」
この街は風が強いから、ただの強風だと思ってた…。
「ねぇ、何あれ…」
カロナが指さした先には、大きな黒い物があった。
「なんだろう…鴉の、羽?」
「…いるのか…」
「…え?」
その大きな黒い羽は、なぜか少し不吉な感じがした。
これにて第二章完結です!
次回は少し番外編的になります。




