第二十七話 思い出
「…ミリア様と初めて会ったのは、この子がまだ2つになる前だった」
カロナはミリアとの思い出を語り始めた。
「その少し前に都主様の奥様が亡くなられたの。それで私は、王宮専属のベビーシッターとして雇われた」
「都主も、可哀想な人だったんだね」
「うん…この子、昔は人見知りが酷くてね。最初の方はずっと泣いてた。ママー、ママーって」
…まあ確かに1才で母親が死んだらそうなるよな…。
「あ、その頃はまだおむつも外れてなくてね…結局おねしょが治って完全に外れたのは4才くらいじゃなかったかな」
カロナは少し楽しそうに話した。
「ミリア様は少しずつ私の名前を呼んでくれるようになった。まるで私を母親のように頼ってくれた」
優しい笑顔を浮かべながら、カロナは話を続けた。
「そうして7才の誕生日にここで働きたいって言い出したの。カロナみたいに、
都主様と都民の役に立ちたいって」
そこまで言うと、なぜかカロナの顔が曇った。
「…カロナ?」
「…なのにどうして! どうしてカロナだけがこうやって不運を受け入れなきゃいけないのよ!」
苦しそうに叫んでる、辛そうに泣いている。そんな女の子が僕の目の前にいた。
「…本当に不運なのか?」
「…はぁっ…?」
「…辛すぎる現実から目を背ける為に、此奴はこうなったんじゃないのか? だったら、此奴は今案外幸せなんじゃないか?」
僕とカロナは何も言えなかった。辛すぎる現実、それは僕らが悪魔であるということにほかならない。
「…ごめん、ミリア…」
僕は誰にも聞こえないように呟いた。




