分かってること
「また森川が久保と話してたんだけど」
「な。なんで仲良くしてるんだよって感じ。さっさと森川が消えればいいのにな」
僕の前を歩いている2人組。
久保さんがいなくて良かった。今頃、飛びかかってそうだから。
陰口か。
聞いたのは久しぶりだな。中学生の時はよく耳にしてたけど、高校になってからはめっきり聞かなくなったな。
皆、専用のコミュニティを持ってるからだと思うけど。
まぁでも。僕はその陰口になんとも思わない。もう慣れたし。
それにあの時、山西くんで僕たちをよく思わない人のことがよく分かったから。
「なんで久保。森川となんかつるんでるんだよ」
「さぁ。ああ言うのがタイプなんじゃね?」
「は?趣味悪!」
少し歩くスピードを落とす。
一刻でも距離をとりたかったから。
「それとも、森川のテクが?」
「いやいや。ヤってる訳ないだろ。森川、気弱そうじゃん」
また歩く速さは、落とさなかった。完全に壁に背中をつけて、止まった。
2人が階段を降りた瞬間だった。
「あれ、拓くん?」
そこには、久保さんと加藤さんがいた。
「どうしたの?黄昏てたの?」
「……いや。ちょっとね」
僕は壁から背中を離す。
「あ、拓くん。背中になんか白い粉っぽいのが付いてる」
「え、ホント?」
「ホントホント。取るから」
「いいよ。背中くらい自分でできるから」
僕は背中をはたく。
「ちょっと拓くん。こっちに飛ぶから」
閑話休題。
「あ、拓くん。紹介するね。この子は加藤翠ちゃん」
「知ってるよ。久保さん、中学校の時から仲良かったよね」
加藤さんは知ってる。中学校の時は、僕以外に話す人といえば彼女だったから。
「改めてよろしくね加藤さん。あ、僕は名前で呼んでくれていいからね」
「なんでよ。拓くんは私だけの呼び名なのに」
久保さんは口を尖らせていた。
「なんで久保さんは僕の呼び方を特別扱いしてるの。別に、あだ名じゃないんだから」
「お姉ちゃんだって呼び捨てだから、この呼び方は私だけにしたいの」
「なんで若葉さんに対抗意識燃やしてるの」
何かを考えてたんだけど、忘れちゃった。




