拓くんの失敗
今日は少し寝坊して、拓くんと一緒に学校に行けなかった。昨日は休んだのに。
教室に入って、自分の隣の席は拓くん。
「拓くん……」
「久保さん。おはよう」
「うん。おはよう」
久しぶりの感覚。1日しか会ってないのに、なんか変な感覚。
「……あれ?拓くん。どうしたの?その絆創膏」
拓くんの人差し指に、絆創膏が一枚。もちろん、そう言うのがかっこいい時期とかじゃない。
「ああこれね。ご飯を作ってる時に指を切っちゃって。そろそろ、レトルトとかじゃなくて、本格的に手作りしようとしたんだけど、失敗だったね」
「…………何作ろうとしたの?」
「そこ?久しぶりだから簡単に。野菜炒めに味噌汁に、まだ熱いから、冷ます代わりに卵焼きを作った」
「卵焼き……巻くやつ?」
「うん。巻くやつ。あと、僕の怪我は心配してくれないの?」
「……大丈夫?」
「切れ味が悪いのか、浅くても痛かったよ。でも、大丈夫。作ったのは美味しかったから」
拓くんって料理できるの?
「そうだ。上手になったら、久保さんにもなんか作ろっかな。何が食べたい?」
「レバー」
「それは好きだから?鉄分が必要だから?」
「両方」
拓くんは少しすごむ。
「久保さんはスタミナ系が好きなの?」
「お肉全部が好き」
「痛風待ったなしだよ」
「あと、揚げ物」
「ソースは?」
「たくさん」
「高血圧も追加」
「あと、コロッケも好き」
「それはそう」
拓くんは一つため息をつく。
「まぁ、でもさ、一回の失敗で悔やむことはないんだよね。でも、指を切ったのが少し引っかかってるんだよね」
「拓くんってプライド高いよね」
ところどころ、そんな感じするんだよね。
「高くない」
「いや、自覚してないだけ」
「高くないってば」
「いいや。高い」
「久保さんはなんで自信ありげなの?」
「拓くんを一番近くで見てきた美人だから」
「あ、ホームルームが始まっちゃう〜」




