久保さんが休むと
久保さんが休むと、なぜか男子が僕に群がってくる。
「なぁ、森川」
「ん?」
「今日、久保休んでるじゃん」
「そうだね。まぁ、ある程度は予想がつくけど」
僕たち男の子には分からないもの。ちょっと前にポロッと重めな方だって言ってた。
「なぁ、森川はなんで久保と仲良いんだ?」
「そうだね。昔というか、小6からの友達だから」
「えー、いいなぁ。あんなかわいい子と一緒にいるなんて」
「かわいいかぁ……」
確かに、顔は可愛いけど。でも、だらしがないのは皆知らないのかな?授業中によく寝てるしテストは赤点なのに。
「久保って、どんな男がタイプなん?」
「さぁ……言えばゲームが好きな人?」
「えー。俺じゃん」
そうだとしても、久保さんは振り向かないかな。
「昨日身長測るとか言ってたけど、どうだったの?」
僕の中で何かがグサリと刺さった。
「……僕の方が、低かった」
「えー森川。久保と腕相撲でも負けるのに身長まで負けるのかよ」
「受けじゃねえか」
「森川。久保に怒ったりしないの?」
その質問に少し考える。
「怒ったりはするよ。テストの点が悪かったり、勉強をしなかったり」
「親かよ」
「親じゃない。あくまで僕は久保さんの留年を防ぐ」
ヒソヒソと話し始める男子たち。
「森川って怒ったら怖そうだよな」
「あー。久保さんからは逆に怒鳴らないのが怖いって言われた」
「あー、そうだよなー」
男子の1人が、僕の隣。久保さんの席に座ろうとする。
無意識と言ってもいいほど、僕は彼の服を掴んでいた……シワができるくらい。
「……あ、ごめん」
大慌てで手を離す。
「あーあ。森川キレさせたぞ」
1人がはやす。
「ごめん。森川」
「いや、大丈夫……」
明らかに目つき悪かった。
久保さんの席……まぁ、常識的に許可を取ってから座るのが普通でしょとは思ったけど。
服を掴むのは違うでしょ。
「森川。その握力で久保との腕相撲。勝てたんじゃね?手加減してたん?」
「……いや、手加減はしてないけど……僕だって限定のグラタン食べたかったし」
*
翌日――
「おはよ。拓くん」
「あぁ、おはよう久保さん。今日はギリギリだけど?」
「メガネかコンタクトで行くか迷っちゃって」
「いつもはコンタクトなのに?」
まず、嘘なのはもう気づいた。
多分、出ていくギリギリまでお腹が痛かったんだな。
「で、久保さん」
「え、何?」
「売店の次の限定品の腕相撲は負けないから」
「拓くんまだ言ってるの?私も負けたのに……」
おまけ――腕相撲――
「久保さん。僕、降参するから……もう、腕つっちゃうんだけど……」
バシバシと、久保さんの肩をはたく。
「久保さん……わ、勝負人の目だ。じゃなくて、降参だってば。グラタンが食べたいのは分かったからこの手を退けて欲しいな。もう久保さん。勝ちでいいから……もう、肉離れとか腱が切れるってレベルじゃないくらい痛い……」
結局、その後久保さんも負けてお互いグラタンが食べれなかった。




