縮んでない?
拓くんは真剣そうに言った。
「久保さんにどうしてもお知らせしたいことがある……」
「え、なに?引っ越すの?」
ふざけて言う。
「いいや。そんなのよりよっぽど重要なこと……」
「そんなの?」
引越しより重要?まさか、重い病気があるんじゃ。
「なんかさ、僕から見たら目線がちょっとだけ上なんだよね。久保さん」
「は?」
いや、私より拓くんの方が背低いけど。
「僕は……まぁ、月日の経過を含めて163としよう。久保さんは大体、164くらい?」
「ちょっと。なんで私が大きくなってる前提なの」
「え、身長が止まるのは20歳くらいだよ。つまり、僕も久保さんもまだ伸びるってこと」
「これ以上伸びたくないんだけど」
「いいや。久保さんは伸びてる。そうじゃないと、僕の目線問題は解決しない」
私はムッとした。私の背が伸びてるなんて……まぁ、お姉ちゃんが170だから伸びるのかもしれないけど。
とにかく、男の子に背が伸びるなんて言われたのが少しシャク。
「そこまで言うなら、保健室に行って測ってみようじゃない」
「いいね。そうしようか。あ、和泉ちゃんも来て」
お互い、快諾して教室を出て行った。
保健室には、私、拓くん、和泉ちゃんが揃った。和泉ちゃんには記録をやってもらう。
「じゃあ、クーちゃん」
私は靴を脱いで、身長計に上がる。優しく、なんかあの、アレがストンと落とされる。
「……162.9センチ」
「ほらー、僕の予想通りー……ハッハハハー!」
拓くんは高笑いをしている。すんごいテンション上がってない?
「じゃあ次。森川くん」
「やっぱり、久保さんは背が僕より高くなってる。だから、目線が」
「160センチ」
和泉ちゃんのその声に、拓くんは固まった。
「え……いや、人間は時間の経過で身長が縮むんだよ。大体、1センチくらいの差があって……」
その差があっても161センチ。拓くん、自分で墓穴掘ってる。
「拓くん。そう来ると、私は165近くなるけど?」
「……えー、なんで僕は縮むの?」
拓くんは身長測定の隣の丸い椅子に座る。
「拓くん……ま、まだ17歳でしょ?ね、和泉ちゃん」
「え、うん……」
当たり前の言葉を持ち出されて、和泉ちゃんも困ってる。
和泉ちゃんは思いついたように拓くんを慰める。
「そ、それに森川くん。今、背が低くてもまだ成長できるでしょ?」
「今、背が、低い……ね」
拓くんは笑いながらため息をつく。
「先に戻ってる……よ」
そう言って拓くんは保健室を出て行った。
「…………和泉ちゃん」
「え?」
「身長、測ってみる?」
「測ってみる」
和泉ちゃんは靴を脱いで身長計に乗る。
「158センチ」
「伸びた!」
「身体測定から?」
「うん」
後で判明した誤差を抜いた身長
拓くん161センチ
私163センチ
和泉ちゃん158センチ




