久保若葉❸
私は久保若葉。至って普通の19歳。
今日はとあるモールの非公式キャラとして活動をする着ぐるみの中の人。
ピンクと水色で脚は黄緑のパステルカラーのクマの着ぐるみ。
時折現れてはカゴのお菓子を配ったり、美味しいレストランの道を書いたプラカードを持って誘導している。
ふふふ。中におっさんがいるのはもはや常識。
でも、中にはナイスバディのお姉さんがいるのだよ。
そんな感じで、今日も元気に係員の人に誘導されて行く。
歩く途中で内蔵スピーカーでマイケル・ジャクソンを流しながらムーンウォークしたり、KFCを食べたそうに眺めたりと。
そして、案内されたとこに行くと、子供達が集まってきた。
「わー、くまさんだー」
「おかしちょーだい」
そう言われて、カゴからお菓子を出して子供達に差し出す。
「ありがとー」
「ありがとう」
嬉しそうに私も頷く。喜んでもらえて心から嬉しい。
「あ、久保さん。なんか、クマさんがいるよ」
ん?
「ほんとだ。お菓子もらいに行こ!」
「子供に混ざって何やってんの……」
なんであの2人が?いや、ショッピングモールは来るためにあるものだ。
いても不思議じゃない。
「クマさーん。お菓子くださーい」
純粋に歩果が手を差し出す。
私は首を振る。着ぐるみだって忖度はする。
「えー……」
「じゃあ、僕もダメだね」
拓にはあげよう。妹のダチだから。
「え、くれるの?ありがとう」
「えー、なんで私にくれないの?」
「久保さん。大人気ない」
私は慌てる仕草をして、自分の名札を指差す。
「あ、女の子なんだ」
あぶねー。一応、名札を刺繍しといてよかったー。
「そらちゃんか。可愛い名前だねー。でも、なんか女の世界を見た気分」
妹は呆れつつも、私から離れてくれた。
ふぅ。なんとか誤魔化せたぜ。本心を言えば、妹を甘やかさないほうがいいんだけどな。
さてと、そろそろ別の場所に移動するか。
今度は本屋の前で図鑑を持って立っている。ちなみに、図鑑は全部私が読んで飽きた本。
子供じゃなくて大人に差し出す。
「原素の図鑑?」
「昆虫図鑑?」
「生物解剖の姿?グロそうだからいいや」
「六法全書?貰います」
「―ドーナツの穴―哲学の道?」
半分くらい残ってた。おかしいな。
まぁ、この着ぐるみが終わるのは午後5時だからその間に好き放題するか。




