【番外】新しい誕生
「久保さん。お昼一緒に食べるんでしょ?寝るのは授業だけにしてよー」
また2人が話している。
「んー、拓くん。あと5分……」
「それ起きないやつだよね?あ、最近僕が起こしに行ってないじゃん。それだけでも偉いよ」
「んー、やったー」
褒められて彼女は気丈になる。
「…………」
なんで僕は1人なんだろう。
そう思うと同時に、腹正しくなった。どうして、僕と同族みたいな森川くんが彼女と仲良くできているのか。
久保さんは美人な人で、表情もよく動く活発な女の子。
でも、森川くんは表情が動きにくくて、これと言って特徴のない男子。
翌日――
委員会が一緒だから、その時に聞いてみることにした。
「も、森川くん……」
「ん?どうしたの?」
いつもの真顔なのかよく分からない表情で彼は言う。
「……嫌な意味じゃないけど、どうして久保さんと仲がいいの?」
「…………そうだね」
少し考えながら彼は言う。
「偶然が重なっただけかな。中学生の頃は距離が遠かったから……久保さんが僕を引き止めなかったら多分、いや、考えるのも野暮だね」
中盤くらいは独り言だった。
「…………」
すると、森川くんのスマホが鳴る。彼は迷わずに電話を取る。
「どうしたの?久保さん」
わずかに声が聞こえる。
『拓くん?委員会終わった?ねぇねぇ』
「終わったら電話に出ないでしょ?」
『だよねー。下駄箱で待ってるからダッシュで来て』
「また待ってるの?」
“また”って……もしかして、何回もこんなのがあるの?
「分かった。じゃ、急げる時に急ぐね。え、いや、急ぐって。うん。じゃ、あと数分後ね」
そう言って森川くんは電話を切った。
「ごめん。反射的に電話に出ちゃった。他に聞きたいことはある?」
今、山ほど出てきた。
でも、こらえておいた。
「いや……ない」
「分かった。じゃあ、委員会の報告は僕がやるから」
そう言って彼は、大股で出て行った。
「…………」
どうして森川なんかが、久保さんと一緒にいるんだろう。“偶然が重なった結果”か。
なら……重ならなきゃいいのに。
どうして、僕に似たような森川が久保さんと……あんな可愛い子と仲良くできるのか。




