森川拓の逆襲(?)
「久保さーん?」
おかしいな。久保さんが着替えに行ったきり、部屋から出てこない。
「んー」
どうかしたのかな?もしかして、倒れてたり?でも、それだと彼女の部屋の下には若葉さんがいるから、音で気づくはずなのに。
「どうしたー?拓」
若葉さんが出てきた。
「あ、若葉さん。久保さんが部屋から出てこないんです」
「ほーう」
若葉さんの目は、いたずら心が宿っていた。
「あの、若葉さん。何か知ってるんですか?」
ニヤニヤと若葉さんは笑っている。
「あぁ……でも、言わないでおこう。それより」
「はい?」
「1週間前だったかな。私と歩果にドッキリさせられただろ」
「はい……心配して損しました。なんだかんだで、若葉さんの謝罪を聞いてないんですけど……」
「さぁな」
とぼけたように、若葉さんは言った。
「まぁ、意趣返しで拓もドッキリをしないか?」
「……え、僕って嘘つくの苦手ですよ」
「大丈夫だ。拓はいつも通りに話してくれればいいんだよ。ドッキリの内容は」
「あの、僕。まだ……」
「私が拓に迫るというものだ。私のセリフに、拓はいつも通り話してくれればいい……ひひ」
「はぁ」
まぁ、これでおあいこかな。
なんだかんだ、僕は人に弱いんだよなー……
*
久保さんが下に降りてくる音を合図に、若葉さんは僕の隣に座る。
「なぁ、拓」
「は、はいー?どうしました?」
「拓って彼女いたことあるか?」
「いや、1人もいないですけど……」
「そうか。なら、どんな女の子がタイプだ?」
「どんな子って……」
そりゃ、あるけど。僕だって男の子なんだから。
「んー……そうですねー……あ、美味しく食事をする人ですかね」
めちゃくちゃ遠慮して言った。
「そうか。じゃあ、胸の大きい子は好きか?」
「そりゃ、僕も男ですし好きですよ……」
「ほーう」
横目で一瞬見ると、久保さんが立ち尽くしている。
「そう言えば、拓ってよく見ると可愛いよな」
若葉さんはそっと僕の頬を撫でる。背中がゾワっとした。
「いや、若葉さん。何を言ってるんですか……」
「私は至って真面目だぞ?」
若葉さんはドッキリと言ってもやりすぎで、僕の腕を掴んで押し倒してきた。
「若葉さん……ちょっと待って」
足音でわかる。久保さんが若葉さんの元に駆け寄ってきた。
「お姉ちゃん」
「歩果……」
「拓くんに何してんの」
「別にー」
若葉さんは体を起こして大袈裟にアピールをする。
「ドッキリでもやりすぎだよ……」
久保さんが僕と思ったことと同じことを言った。
「え、久保さん。分かってたの?」
「うん。お姉ちゃん。拓くんみたいなの好きじゃないと言うか……」
「そうだな。私はもう少し年下って感じの男が好きだ」
「だから私……最初は驚いたけど、でも流石にお姉ちゃんが妥協したとしても、ここまではなしないから」
「チ。姉妹の年季でドッキリができなかったか」
若葉さんはつまんなそうな顔で、ソファから離れた。
「ま、拓。私に迫られて興奮しただろ」
「いや……むしろ、僕がドッキリみたいなんですけど」
「まぁ、いいか。歩果は騙せなかったか」
そう言って若葉さんは自分の部屋に戻って行った。
「拓くん」
若葉さんに変わって、久保さんが僕の隣に座る。
「お姉ちゃんに迫られて、どうだった?」
「え……ちょっとドキッとした」
「……スケべ」
「え、なんでよ。ドキドキしただけだよ。確かに僕も男子だけどさ、そこまでじゃないよ。久保さん?聞いてる?ねぇ、久保さーん」
その様子を、テレビ前の机に置いた雑誌に取り付けた小型カメラで、若葉は繋いでいるスマホで見ている。
「はははは!やっぱこいつらは面白いなー」




