ゲーム大会〜和泉さんも一緒に〜
「あーん。拓くん強すぎ」
「和泉さん。結構強いね」
あの喧嘩から数日して、僕たちは和泉さんも交えて久保さんの家でゲームをしている。
和泉さんの使うキャラは軽量級なのに、すばしっこくて攻撃のタイミングが絶妙。
盤面残りが強い。
対して僕は中量級と軽量級を使ってバランスの取れたキャラ。
久保さんは重量級でひたすら突っ込んでる。
「久保さん。バリアとかしようよ。そうしないと。僕には勝てないよ」
「う、うるさい。攻撃してりゃいつか吹っ飛ばせるでしょ?」
「やれやれ」
すかさず、久保さんのキャラを攻撃して吹っ飛ばす。
「あ、切り札出た」
久保さんがはしゃぐ。
「和泉ちゃんが一番ストックあるから攻撃しちゃお」
「え、クーちゃん」
すかさず久保さんはボタンを押して切り札を発動する。
「わ、わわ……あー……」
切り札の攻撃が命中して、和泉さんのストックが一つ減った。それで和泉さんはため息をつく。
「でも、まだストックがあるから」
すぐに持ち直せるポジティブな心は彼女の長所なのかも。
「和泉さん。切り札ゲージもう少しでたまるよ」
「分かってる」
「オッケー」
和泉さんはお返しとばかりに久保さんをメテオで落として、ストックを0にした。
「すごい。和泉ちゃん」
メテオってリスキーだから、僕は使わないんだけど。
あと、和泉さん……この前“やりごたえは無い”って言ってなかったっけ?
だいぶ強いんだけど。
「和泉さん……なんでそんなに強いの?」
「弟と一緒にやってるから」
「弟がいるのか。一人っ子は僕だけだよ」
和泉さんを落として、お互いのストックが1になった。
「おー、一対一」
敗北者の言葉は無視して、僕たちは間合いをつめる。
でも、和泉さんはすかさずコンボを決める。
「ぐ……」
ガチガチャとコントローラーを動かすけど、抜け出せない。
「ちょ……ちょ」
すぐさまメテオで、叩き落とされてゲームセットになった。
「えー……」
コンボで落とすのは賛成。でも、一対一になってから6秒でやられたのが少し解せない。
「でも、森川くん。意外と強いね。クーちゃんが負けるのも分かる」
「和泉ちゃーん。私が勝てない理由は?」
久保さんがジュースを飲んで言う。
「まず、相手をよく見ようね」
和泉さんは立ち上がる。
「ちょっとお手洗い借りてもいい?」
「いいよー」
そう言って和泉さんはリビングを出ていく。
ソファには僕と久保さんがいる。
「久保さん。和泉さんも来たことあるの?お手洗いの場所、聞かなかったけど」
「あぁ、何回か来てるよ。その時にゲームをしたりお話ししたり」
「ふーん……」
「それよりさ、拓くん。コンボ練習したからさ、ストック1でやろうよ」
「お、いいね」
久保さん得意げに言う。
「勝った方は命令できるから」
「久保さん。それって自分が負ける前提で言ってる?」
久保さんは似合わない軽量級のキャラ。
僕はいつもの中量級のキャラで挑む。
「じゃ、拓くんやるよ」
「はいはい」
すかさず久保さんはスティックを倒して僕に近づく。
いつも通りの攻撃かと、僕は侮っていた。
久保さんは中距離の攻撃で僕を動けなくして、そこから至近距離で徹底的に攻撃をする。
「ちょっと……」
崖際に追い込まれると、復帰しようとするけど彼女はスティックの下入力攻撃。
それって、自分も落ちる危険のあるやつ。
空中回避をすると、僕は助からない。
久保さんのキャラはジャンプ回数が多いから復帰はできるし、復帰できなくても少しは空中にとどまることができる。
これは……
メテオの音が響いて、僕のキャラは落ちた。
たったの10秒足らずで、僕は久保さんに初めて負けた。
「勝ったー!やった!」
「…………」
「じゃ、拓くん」
「いやいや。まだ……練習だから」
「負け惜しみ?拓くん。私のこと侮ってたよね」
「う……」
「命令ねぇ。まず、私を舐めてたお仕置きしないと」
久保さんは僕の両腕を掴む。
あれ、なんか既視感。
「わ、久保さん。僕がくすぐられるの嫌いだからってくすぐろうとしてるー」
久保さんは僕の膝に乗る。
「逃がさないためだよ。拓くんって非力だよね……いひひ。さぁ、笑い声をあげてもらわないと」
すると、リビングのドアが開く。
「クーちゃん。紙切れてたから変えちゃったけど……」
だんだん和泉さんの声が小さくなる。
「い、和泉さん……違うから」
すぐに弁明するけど、和泉さんは完全に誤解してる。
「そうだよ。和泉ちゃん。私は拓くんにお仕置きを……」
「久保さん。地味に誤解を招かないで」
「く、クーちゃん。私、どうすればいいかな」
「ここにいて、ここに」
僕も慌てて続ける。
「そ、そう。説明するから」
「う、うん」
なんとか誤解は解けた……はず。




