親子の時間
「拓……」
「ん?」
母とお昼のそうめんを食べている時だった。
「久保さんってどんな子?」
「え?」
急にそんなことを言われても……
「あ、写真あるけど見る?」
「お、珍しいじゃん。拓が写真撮るの」
スマホを見せる。
「あれ……メガネ。前見た時とは違うけど」
「あー……メイクが上手くいかなくて、帽子とメガネで誤魔化したんだって」
「へー。まぁ、仲がいいことは良いわね。でも、健全なお付き合いをしなさいね」
「付き合ってないし、そう言うこともしてないよ」
「でも、よくすっぴんで拓に会おうなんて思ったわね。今頃の女の子ってビジョが良くないとだめらしいじゃない」
「ビジュね」
母は若者言葉に詳しくない。
「でも、久保さん。初めて見た時はびっくりして上手くお顔見れなかったー。拓、私がいるうちに連れてきてくれない?」
「それ以前に、パートのシフト考えよっか」
そうめんを啜る。
「でも、久保さんと僕って意外と普通だよ」
「3日も学校休んで普通って……」
「掘り起こさないでよ。ちょっと思い出したくない」
あの時のちょっと忌まわしい記憶が蘇る。山西くん元気かな。
「確かに。久保さんの家族全員は僕のこと知ってるし、これじゃフェアじゃ無いかもね。次の休みっていつ?」
「えーっと……今週は火曜日だったけど」
「じゃ、その日に久保さん呼ぶから」
*
「ってなことがあって」
「確かに、私の家族は拓くんのこと知ってるけど、拓くんのお母さんはあまり知らない……」
久保さんは少し考えている。
「無理しなくて良いんだよ久保さん」
「いや、行く」
「うち、ゲームとか無いんだけどなー」
「大丈夫。持ってけばいいから」
「許可は取ってね」
久保さんは暇つぶしを自分で持ってくるから、こう言う時は助かっている。
*
そんなこんなで放課後。
「わぁ……なんか胸がドキドキする」
「別に。何回かきたことあるでしょ……」
変なこと言うなこの子。
「でも、数えるくらいだよ。私の家は何十回も行ってるのに、拓くんの家はあまり言ったことがないから」
「あ。前みたいに暑いからってYシャツ脱がないでね」
「はいはい」
そう言って鍵を開けて、家に入る。
「ただいまー。久保さん連れてきたよー」
見ると、母は薄く化粧をしていた。久保さんも薄く化粧してるから何も言えないけど。
「こんにちは。久保歩果です……」
「歩果ちゃん……何回聞いても良い名前」
「ありがとうございます……」
そう言えば、久保さんが敬語使ってるのあまり見たことがないかも。
「さ、上がって上がって。何もないけどくつろいで」
一応、久保さんの家によってゲーム機持ってきたけど。この感じじゃ、使わなそう。
「お邪魔します」
久保さんは電池切れのような動きで玄関を上がってリビングに入る。いやいや。卒業式じゃないんだから。
*
「歩果ちゃん。学校で拓はどう?」
「三者面談みたいな話題にしないで」
僕がさりげなくツッコミ、久保さんの緊張を和らげる。
「拓くんですか……頭が良くて頼りになります。あの、席が隣なので授業中でもわからないところを教えてくれたり。去年は誕生日プレゼントもらいました」
「あらら。今年は何かあげたの?拓」
「今年はケーキをご馳走したよ」
母の顔はニコニコからさらにニコニコになる。なんか、また変なこと考えてそう。
「拓。ちょっと部屋に行ってくれない?頃合い見て呼ぶから」
「え?」
「女の子同士で話したいことがあるの」
「わかったよ」
そう言ってリビングのドアを閉める。別に、盗み聞きはしない。約束は守る。
*
「歩果ちゃん、拓の写真とかない?」
「え……」
急に2人きりにされたけど、なんだか怖くはないかも。そもそも、人の親に警戒するのはおかしいけど。お姉ちゃんじゃあるまいし。
「ありますけど……」
そう言って、美涼ちゃんに手紙を送るついでに撮った写真を見せる。
「上手に撮れてる……拓もなんだか満更でもなさそう」
わざと明るく振る舞ってる気がする。
私がいるからなのかな。
でも、悪い人じゃないのか。




