【番外】体育の不思議
「じゃあ、2人で柔軟やってー」
そんな声が体育館に響く。
「なぁ、あれ大丈夫か?」
1人がヒソヒソと言う。
「え?あぁ……」
そこには、森川と久保が足を開きあって手を繋いでいた。
「女子が足開いてる時点でダメじゃね?」
それでも、2人の掛け合いは続く。
「はい、久保さん。やって」
「やだー。体硬いもーん」
「もう」
久保の手を引いて、無理矢理曲げる森川。
「痛い痛い。たいたいたい」
「はいはい。まだいけますねー。よいしょ」
「ぎゃああああ‼︎和泉ちゃんはそう厳しくしてくれない!和泉ちゃんにしてもらいたい!」
「残念。和泉さんはお休みです。なんで僕と組んでると思ってるの?」
2人はそれで正常運転。
「やっぱ、おかしいよな」
「拓くんもやってよ」
「はいはい。じゃ、手引いて」
「よっと」
「ふーー」
森川の顔が、久保の股に近づく。
「際どすぎるだろ……」
周りがヒソヒソと囁き始める。
「なんで拓くん体柔らかいの?」
「運動できないけど、こういう運動できる体にはなってるの」
「ずるい。拓くんばっかり」
「嫌なら毎日柔軟しなさい」
なんか、兄妹を見てる気分になる。あの距離で照れず、緊張もしないなんて。もう、他人じゃなくて生き別れの兄妹なんじゃないかと思う。
「おーおー。やってるな」
水乃が柔軟をしながらのんびりと言う。
「水乃。あれが普通なのか?」
「おう。ゴールド会員の俺からすればな。意外と見てて楽しいぞタクアユ」
「変にカップル組むなよ。あと、普段から見ればアユタクじゃね?攻めが逆」
「え?まじ。カップリングにそんな法則性あんの?」
「あるある」
水乃は語感だけでカップリング付けてたのか。順序が違うと攻め受けが違うのは一種の常識。
「ま、森川が攻めってのもいいな。おとなしい奴が主導権握ってんだよな」
全員の脳内に、同じ妄想があったと思う。
「痛いってばー!」
また久保が大きな声を出していた。
見ると、森川が久保の指ではなく腕を掴んで、がっつりと背中を曲げさせている。
「拓くん……やばいから」
妙に語弊がある。
「これでへばってるとこれからの授業はやっていけるかねー。はーい、もっと曲げますねー」
「腰逝っちゃ……やばいやばい……拓くん……あぁ……あ、おっ」
アウトだろ。全員がそう思った。中にはニヤニヤしてるものもいる。
「あいつら、興奮させる才能あるな」




