膝に座る
週末のフードコートは混んでいた。
そう。不可抗力、不可抗力。
「久保さん。いくら席が混んでるからって、僕の膝に座るのは違くない?」
「拓くん。アイス食べてるじゃん。そのほうが都合いいでしょ?」
久保さんは丼を手で持って食べている。
数分前だった。
「わ、混んでるね。探そ」
「うん」
僕がアイスを買ったのは、これから久保さんがクレーンゲームか何かをして散財すると思ったから、僕も何回か手を貸すためにお金を残すため。
そして、久保さんが注文して席を探しても、席はなかった。そうこうしていると、ブルブルと手持ちの注文ブザーが鳴った。
それから、料理とアイスを持ちながらキョロキョロしていると、子供連れの親子さんが、「座りますか?」と尋ねてきてくれた。でも、幅的に1人しか座れなくて……
てなわけで、絶賛恥ずかしい。
小さな子供が僕らを見ている。
「おねえちゃんたち、なにしてるの?」なんて幼稚に聞いてくる。ちなみに、隣に座っている他の人たちも、ちらちらと僕らを見ている。事情を知らなければ、はた迷惑なカップルだ。
あと、少し膝が痺れてる。
「久保さん。食べ終わったら離れて欲しいんだ。膝が痺れて来て」
「えー。まだ半分くらいしか食べてないよ。あ、お漬物は拓くんが食べてね」
「アイスに合わないものを食べさせないで」
その様子を、子供のお母さんがニコニコと見る。
「なんだか、羨ましいです。2人を見てると」
「はい?」
思わず僕は首をかしげる。
「なんか、芸人さんみたいな」
「僕たち学生ですよ」
「でも、仲が良いですね。見てて楽しいくらい」
「そうなんですかね……」
アイスを食べようとしている久保さんの頬を押さえながら言う。
「ほら、それですよ。以心伝心ですね」
「まだ、心で通じ合う仲ではないと思うんですけどね。ほら、久保さん。お味噌汁飲んで。冷めちゃうから」
お母さんはまた上品に笑い出す。
「いや、むしろ親子と言うか……女の子……久保さんの方はだいぶ自由な方ですね」
「そうなんですよ。自分勝手」
今まで黙っていた久保さんがすぐさま反応する。
「え?本人の前で言うこと?どうする?座るところ変えよっか?」
「これ以上奥に行くのは勘弁して」
自分のがどう言う状態かは知らないけど。まぁ、普通ではないか。
アイスを食べ終わって一息つく。
「久保さん。あとどれくらい?」
「ん?お漬物」
よく聞くと、ポリポリとお漬物を食べる音が聞こえる。
「久保さん。アイスのカップを捨てに行きたいんだけど」
「ん……」
返事をして、久保さんは膝からどく。
「はい。ありがと」
そう言って立つと、久保さんがお漬物を噛みながらついて来た。
「え?」
「食べ終わったから片付けに行くの」
「そっか」
お母さんを見ると、手を振っていた。
「ありがとうございました」
よく見ると、子供も手を振っている。
「かわいい〜」
猫撫で声で、久保さんは手を振った。




