ホクロ
「なぁ、ホクロっていいよな〜」
唐突に零くんは、僕に向かって言った。
「ん?どうしたの?」
久保さんが用事で席を外している隙に、彼は少し思春期ならではの話をする。
「ホクロ?それがどうしたの?」
「いやー。ホクロって、ある箇所でエ……いや、面白いよな」
「う、うん……」
それは一理ある。
「でも、なんで僕に話をしたの?」
「いやー、森川って久保に気遣ってばかりで下ネタ話せないと思って……」
「まぁ、そうだけど」
僕だってそう言う話はしたい年頃。女の子同士だと話してるらしいけど。中々、異性との話はできないものだ。
「だから、久保がいないうちに語り合おうって」
「う……うん」
少し頷くと、零くんはニヤニヤし始める。
「で、森川はどこにホクロがあるといいと思う?」
「…………おへその辺りかな」
久しぶりに話すと、なんだか恥ずかしいな。
「おー。森川でも普通の男子だな」
「なんで僕が浮世絵離れした人間みたいになってるの?」
「俺らからしたら、お前らはちょっと変なんだよ」
「えー、そんなー」
まさか、零くんみたいな人間だと普通だと思ってたのに。
「そういや、森川は見たことあるの?久保の……色々」
どうやら、僕の逆鱗に触れないように色々言葉に気を遣ってるらしい、
「手足は何回か見たことあるよ。夏にゲームしに行くと、半袖半ズボンなんてよくあるよ。あと、ホクロの続きだけど、久保さんって親指の付け根にあるんだよね」
手を広げて、親指の付け根を指差す。
「それって」
「うん。目のやり場に困るから、ちょっとやめてほしい」
「ん?ちょっと?」
「あと、久保さん。たまに部屋に入れてくれるんだけど。なんて言うか、昨日やってないと我慢できなくなりそう。」
「へえ、森川でもそんなことあるんだな。てっきり、欲の薄い男だと思ってた」
確かに、僕は久保さんより活発なほうじゃないけど。
「零くんに言われるの、なんかやだ」
「なんかやだって。俺、森川に嫌われること一回もしてないんだけど」
ふと思う。
これが、もう一つの青春の形なのかも知れない。
男同士でくだらないことでふざけて。笑い合って。
男の子同士も、悪くない……
「ねぇ、なんの話なのかな?」
笑ってた空気が一変。そこに音もなく現れたのは、久保さん。
「あ……久保さん」
「水乃くん。拓くんに用事?勉強を教えてもらってるの?」
「いや……」
「用がないなら帰ろうね」
「はい!今すぐ帰ります歩果様‼︎さようなら!」
そう言って、走って教室を出ていく零くん。というか、この感じ……お、怒ってる?
「拓くん帰ろうね。私を待ってたんでしょ?」
あれ、全部聞かれてた?
「く、久保さん。どこまで聞いてたの?」
「ん?『欲の薄い男』かな」
肝心なところは聞かれなくて良かった。
「欲の薄いか……まぁ、私小さいもんね」
「こ、これからだよ……」
励ましたつもりだけど、なんか違う気がした。
「ま、いいや。拓くん、お姉ちゃんが拓くんを見たいから来いって。さっきメール来た」




