階段事故
「それで、お姉ちゃんがね」
私たちは話しながら階段を降りている。
拓くんは私の同じような話を、嫌な顔せずに聞く。
「おっと……」
拓くんばかり見ていたせいで、私は思わずバランスを崩す。
「久保さん……」
拓くんは私の両肩を掴んでバランスを取らせる。でも、それは捨て身のようだった。
拓くんは私のバランスを犠牲にして、階段から落ちてしまった。
幸い、5段くらいだけど。
拓くんは頭を抑えながら、私を見ると安心したような顔をする。私の心配してる場合?
「拓くん。大丈夫?ごめんね。本当にごめん」
血相を変えて大慌てて私は駆け寄る。
「うん……でも、痛いかな」
「保健室行かないと」
「……そうだね」
私の必死な顔が効いたのか、拓くんは私に着いていく。
*
「ありゃりゃ。ちょっと血が出てるね。打撲……この程度なら問題ないけど、痛みが続くなら病院にね」
「ありがとうございます」
拓くんは礼儀正しく頭を下げて保健室を出ていった。
「拓くん。ごめんね……」
「いいよ。なんか、カッコ悪いね」
苦笑いする彼に、私はすぐに言う。
「カッコ悪くないよ……形はどうでも、私を守ってくれたんだから」
「…………そう言われると、照れるね」
*
このことを、お姉ちゃんに話した。
「なるほど。森川拓にも、かっこいいところがあったか」
頷きながら言う。
「ま、歩果にも出来ることはあるな」
「それって、なに?」
「その分尽くすことだな。ま、その胸じゃ無理だがな」
「は……」
「まぁ、そう言う意味の尽くしはやめとけよ。本題に入るが、その分のお礼をすること。断られてもやれ。アイツ、そう言う押しに弱いから」
お姉ちゃんはソファに転がる。
「歩果は拓の友達でしょ?ついでに、助けられて当然だと思わない」
「うん……」
「お前はヒモじゃないからな」
お姉ちゃんは、いつものおふざけモードに戻った。
「ま、拓は有料物件だな。私も狙おうかな」
「え、“私も”ってなに?」
「冗談だ」
そう言ってお姉ちゃんは笑った。昔の真面目さが残ってる、そんなお姉ちゃんだ。
どうやって。拓くんに恩返ししよっかな。




