表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/72

【正史】直接対決

 拓くんが休んで、3日が経った。

「森川来ねぇーな。ま、来ないほうがいいんだけどな」

 水乃くんが拓くんの代わりみたいに言ってくる。

「で、久保。あれからどう?」

「うん。陰口はあるけど、直接的なのはないよ」

「じゃ、山西は本当に森川だけを狙ってたのか。じゃ、久保は誤算だったのかもな」

 拓くんは山西が空き教室に隠れていると確信していた。

 なら……

「和泉ちゃん。協力してくれない?」

「……え?」

 びっくりした声で和泉ちゃんは目を見開く。


           *


 いつ森川が戻ってくるか分からない。

 俺はいそいそと、早朝の教室に入る。ここでとどめに森川の机に紙を入れたり、水着写真も……

 森川の席は、窓際の一個右の列の1番前。

 俺には見えた。

「誰だ」

 教卓から、上靴が見える。

「出てこい。こないなら、俺が無理やり出すぞ」

 足からして女子。

 出てきたのは、メガネをかけた女子。

「…………国木田か」

 確か、たまに久保と話しているヤツ。都合がいい、あぁ言う奴ほど従順だし、2人のことをよく知っているはずだ。

「取引しようか。日給は5000円。2人の情報を教えてくれないか?」

 国木田の目はしどろもどろ。

「…………」

「早く決めてくれないか?そろそろ、他の奴らが来そうなんだけど」

「…………」


 昨日の昼休み――

 クーちゃんは私と水乃くんを混じえて計画を話している。

「山西は、空き教室に隠れてるってことはどうやって入ったかなんだよね。さすがに、山西が私たちと同じ時間で登校したら噂になるだろうし、なら、早い時間に来てるんじゃないかな。拓くんの机に落書きしたように。だから、2人とも、早く起きて。空き教室を見張るよ」


             *


「早く決めてくれよ」

 山西くんが急かす。

 でも、私がクーちゃんを呼んだら彼は逃げ出す。

 私は捨て身の覚悟で、山西くんに抱きつく。

「は?」

 こうすれば、クーちゃんは私が来ないと様子を見に行く。

 忘れ物をして良かった。絶好のチャンス。

 すると、ガラガラと教室の扉が開く。

「和泉ちゃん。忘れ物に…………山西!」

「クソ……離せ」

 私の反発虚しく、山西くんは私を引き剥がす。

「バカが」

 そして、クーちゃんを殴るふりをして避けさせると、煙のように逃げていく。


            *


 なんかいた水乃の脇をくぐり、俺は逃げ出す。

 後ろを見ると、久保が追ってきてる。国木田を振り解くのに体力使っちまった。

 ここを降りれば、生徒昇降口。

 階段を駆け降りて、下駄箱までの道を走っている。

「おっと」

 滑りかけたが、下駄箱を出ることに成功した。

 後ろで、立ち止まっている久保が見えた。



 久保を撒いた。少し足をゆっくりにして、息を整える。

 久保は身体能力はあるが、スタミナが無い。森川とは逆だ。



 息を切らして教室に戻る。

「みんな、ごめん……和泉ちゃんもチャンスを作ってくれたのに……」

「いいよ」

「だな。動けなかった俺も悪いし」

 水乃くんはともかく、和泉ちゃんがせっかくのチャンスだったのに。私が内ばきで外に出る勇気があれば。

 足がズキズキと痛む。

「はいはい。反省はそこまで」

 水乃くんが手を叩く。

「え……」

「いや、カンペ出てたから」

 思わず、後ろを振り向く。

「久保さん。久しぶり」

 そこにいたのは、拓くん。見間違えるはずがない。

「拓くん。もう大丈夫なの?」

「うん。1日半泣いて、そこから休んだら、なんか良くなってきた」

「そうなの……拓くんでも、泣くんだ」

「みんな赤ちゃんだったから泣くよ」

 拓くんは笑った後、言う。

「で、疑心暗鬼になって泣いて捻くれて。でも、そのお陰で僕は一つの作戦を思いついた。山西の卑怯には、卑怯で返さないと」

 拓くんはニヤリと笑った。

「これなら上手くいく。人間、自分が有利になると警戒が落ちちゃうから」

 そして、彼は宮野の席に近づく。

「協力してほしいんだけど、いいかな?」

「……え、俺?」

 どうして拓くんが、山西の仲間だった宮野の力を借りるのか、少し理解できなかった



            *



 俺のスマホが何回か震える。

「あ?」

 宮野だ。今は機嫌いいから電話にちゃうもんねー。

「よう。宮野。久しぶりだな」

『あぁ、そうだな……』

「あんときゃ、ごめんよ。つい感情的に」

『いいよ。そんなこと』

 宮野は意外とあっさりしていた。元々だけど。もう、切ろっかな。

「なんか用?俺を止めても無駄」

『いや。むしろ、嬉しい報告だ』

 少し腰を浮かす。

「なに?」

『森川が俺に言ってきた。腹を割って話がしたいってな』

 少し、耳を疑った。また今朝みたいに、久保や国木田が潜んでいる可能性がある。

 ま、森川だからな。

「じゃ、久保とかを帰らせとけって言っとけ」


            *


 俺は下駄箱で森川を見つける。

 あらかじめ、俺が待ち合わせに指定した。

「本当に久保も国木田も水乃もいないんだよな」

 それぞれ、靴箱を開ける。全員、内ばきがしまわれている。つまり、誰もいない。

「先生にも言ってないな?録音してないな?」

 森川はポケットからスマホを取り出して、録音アプリを開く。

「ほら、録ってないでしょ?」

「だな」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ